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ワイが文章をちょっと詳しく評価する【91】
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0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2018/05/31(木) 10:51:37.67ID:e9HLf/lY
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点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

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前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する【90】
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0838この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/07(木) 21:56:13.16ID:M1rHP6kB
「今日決勝だよ」
「そうなんや」
 美世は思っていた通りの答えが帰ってきたというように満足そうに笑った。美世は時計を見ると言った。
「そろそろ始まるかなぁ」
「ああ、12時からだ」
 美世は振り返るとにっこり笑った。
「見てみよか」
 鷹山はため息をついた。あの日何があったのかは聞いていない。しかしお互いが強く惹かれあってるのは間違いない以上波乱の原因はやはり外部からの干渉だろう。美世はあの日一日泣いて過ごしたが、その後は落ち着いている。
 しかしどこか諦めたような、静かなたたずまいに鷹山は気を抜く事ができなかった。

 鷹山はケツの収まりが悪かった。軽めのブランチを取った二人が間もなく始まろうとする夏の高校野球決勝開会を待つ間、美世がコーヒーを入れている。鷹山は考えた、美世は逃げずに山田と向き合う気だ。
 山田と美世は優勝を掛けてなんらかの約束をしていたようだ。鷹山の推理はこうだ。山田が甲子園で優勝した暁には美世が自分の物になる賭けを持ちかけた。美世は優勝できたらなんらかの形で考慮する事を約束した。
 予選や本大会で負ければ考える必要はない。優勝すれば約束通り是非を答えなければならない。美世がコーヒーを運んできて座ると、まもなく決戦のサイレンが鳴った。試合は相手龍門高校の攻撃で始まった。
 サイレンと同時に早いモーションで投げられた山田の第1球はバットをかすめて後ろ向きに大きくバウンドした。
 さすがは打撃で決勝まで勝ち進んだ高校の1番打者だ。山田の球を初球から当ててくる選手は多くない。しかしその後はバットにかする事もなく2球のストレートで決まった。美世がニヤリと笑って鷹山を見た。
「トモ兄これウチが見つけて育てたんやで?」
「そ、そうか、堺衆の目利きはハンパないな」
 試合は一進一退の接戦になったが結局4回裏に取った1点を稲村実業が死守して最終回を迎えた。ランナー1、3塁、2アウトで打席に立ったのは最悪の4番バッター。
 一球目は外郭高め。バッターはこれを捕らえかけたが芯には当たらず、ロケットのようなフライが放物線を描き、バックネット裏に落ちた。二球目のスライダーはライト側のポールを飛び越えるような特大ファール。
 動揺した山田は制球が乱れてスリーボールを喫してしまった。バッターは冷静に球を見ている。
 追い詰められたマウンド上の山田は珍しく駄々をこねて首を横に振っている。キャッチャーのキャプテン稲葉がチラリとベンチに視線を送ると、監督は腕を組んだまま微動だにしない。
 再び稲葉がサインを送る。山田は迷っているようだ。
 美世がボソリとつぶやいた。
「変態キャプテンの言う事聞いとけ」
 山田が首を縦に振った。大きく振りかぶってゆらりと傾く。右足を伸ばした瞬間、上半身が竜巻のように回転する。放たれた球はど真ん中ストレート。相手は振るしか無くなった。美世は片方の口角を上げた。風切り音がしそうなバットが振り抜かれた。甲子園が凍りつく。
 美世の目は冷静だったが口は半開きだった。しかしすぐにぷっと吹き出した。
「あっははははは」
 球場は一瞬で沸騰したような歓声が上がり、稲村実業ナインがマウンドを目指して全力疾走を始めた。山田は次々にタックルを受けて右に左によろけた。その顔は太陽のように笑っている。
 美世は膝の上で組んでいる手に目をやり、両手を開いた。汗でぐっしょりと濡れている。それをじっと見て、再び穏やかに笑いながら画面の中の山田を見た。

 宣言通りこの夏最後の甲子園に稲村実業校歌が響いた。

 試合後しばらくして監督のインタビューに続いてヒーローインタビューが流れていた。噂の豪腕投手には聞きたい事が山ほどある記者群の熱気とフラッシュの嵐が山田に襲いかかった
「山田選手、相手の龍門高校はどうでしたか?」
「手強かったです、自信のある球でも当てて来るので度々ヒヤリとしました」
「しかし、いつもに増して鬼気迫る投球でしたね」
「はい、今の僕には守り神が居ませんので自分が鬼になるしかありませんでした」
 求めていたようなイメージとは違うコメントに記者がポカンとした。山田は真っ直ぐにカメラを見ている。記者が話題を強引に変えた。
「最終回のストレート勝負ですが
稲葉くんの指示をしきりに拒んでましたよね、最終的に無視して真っ向勝負に出たとの見解があるんですが」
 ここで山田が目を伏せて残念そうに言う。
「逆です、真っ直ぐ来いという稲葉の指示が来ましたが、恐ろしかったんです、僕は意地でも優勝しなければならないなのに、絶体絶命の状況で龍門高校の4番相手に真っ直ぐを投げろなんて気でも狂ったのかと思いました」
「なのに従ったのは?」
「声が聞こえました、稲葉に従えって」
0839この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/07(木) 22:04:52.20ID:M1rHP6kB
「はは、持ってる人は言う事が違いますね」
 山田はカメラに視線を戻してレンズの奥をじっと見た。
「この喜びを伝えたい人はいますか?」
 山田は記者の質問には答えずに言った。
「見ててくれましたか?」
「いるようです、それはご両親ですか? 学校の皆さんですか?」
「約束通りこの優勝を貴女に捧げます、そして応援してくださった皆さんに捧げます、本当に有難うございました」
「誰か特別な人がいるようです!」
 その後も山田には試合内容の質問が次々と浴びせられたが、どこか的外れな答えばかりだった。山田は必死で美世に呼び掛けているのだ。それを見ながら美世は鼻をすすり始めた。
 鷹山は横目で美世の横顔をじっと見た。美世は山田と会話しているようだった。手を伸ばして頭を抱き寄せる。
「つえーじゃねーかお前の馬」
「当たり前やがな、しかもこんなんで収まっとる人材やないで、どこに行くか知らんけどプロで大活躍していずれメジャーに行く存在や、いつかそうなったら欧米かって突っ込んだんねん
その頃にはウチの事もすっかり忘れてるやろし、プールサイドで金髪美女を両手に抱えてドンペリ飲んでるわ」
「微妙に古いなそのイメージ、ハマショーかよ」
 鷹山は冗談を言いながら思った。やはり美世は身を引く気なのだ。美世は外で頻繁に雛子に会っているようだったが、雛子は何も言わないし鷹山もまたその事については聞かなかった。やはり答えはそこに落ち着いたのだろうか。

 美世はその日、坂田水産の報告書を見ながら難しい顔をしていた。仕事のスイッチが入った美世は状況に関わらず集中する、これが堺衆の血統だろうか。弟達を北海道へ査察に出向かせていているようだった。監査役との会議だと言っていたが。内容は多岐に渡るようだ。
「ああ? お前が屁みたいな理屈をこいてもどないもならんやろ、その辺は泰蔵と荒木に任しとけ、お前は頭ええけど人の気持がわからんしいっこも知恵が働かん、引っ込んどけ、他には?
うん、ちっ、異議申し立てに丸して送り返せ、それと? ああまたか、佐藤さんの旦那に頼んで連れ戻せ、ああ確実や、んで次また芳江さん騙してギャンブルやったらカニの餌にするって言え、お前脅しは得意やろ、他には、それはウチの名代として泰蔵にいかせぇ
10万包め、それとな、ロシア政府の証明書がないカニの件やけどな、一人だけ吊るそうか、いや、あくまで一人や、ほたえて安けない仕事すな
あ? ゴチャゴチャやってしょうもない仕事すんなってゆーてんのや、だれか実行するやつ探せ、ほんで間当事者一人、適当に選んで入れろ
アホか、それでは修羅場とお前の距離が近すぎんねん、誰か使え、知らん、お前が探せ、ああ、相川てチンピラおったやろ、あれ使え
ほんで密告して二人共沈めてまえ、畑荒らして罠にかかる獣の役にはうってつけやろ、そこら辺は心配ない
言う通りに動けばお前の手前でツルが切れる仕組みになっとる、どんだけ金つこたとおもてんねん、うん、うん、ほなな」

 大きくため息をつきながら電話を切った美世に鷹山が話しかける。
「どうだ? 儲かってまっか? 隨分生臭い話もしてたようだが」
「ん〜思うたようにいかん、あっちを叩けばこっちが出る、もぐら叩きみたいや」
「北海道と沖縄の商売は独特だって言うからな、しかも漁業者相手だろ、更に独特の慣習があるんじゃ? めんどくさい商売始めたもんだな」
「トモ兄のほど面倒ないわ、あ、そういやトモ兄、カニの新製品発送したそうやからもうすぐ食べられるで」
「そうか、そりゃ楽しみだな」
「うん、一消費者として声を聞かせてくれ」
「その時オルゴール調のラビアンローズが聞こえてきた」
 見ると美世の携帯が点灯している
ここ最近では音を出すようにしている事は珍しい。美世はその音で誰から掛ってきたかわかったようだ
 報告書を置いてはぁっと息をして電話を取った美世を見て鷹山は新聞を広げた。

「はい、うん、うん
見てた
おめでとう、ついにやったな
はははっ、うん、うん
その境目がわからんな
そうか、土戻してきたか
うん、そうやな
どうしよ、クアトロディローゼわかるか?前に買い物した時に行った
うん、それのビオトープ沿いの席に
そやな、8時にしよか
ご飯食べてから行くから
うんどっか適当に
うん、わかった
ほなまた後で」

 鷹山はガサガサと新聞を持ち直した。

「待たせたな」
 美世が待ち合わせ場所に着くと既に山田は来ていた。何故かスーツを着ていて、既にコーヒーを飲み干している。
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