なずな先生の日大問題風刺作品

 テレビの中にいる内川はまさに小悪党だが。
「ある意味感心するよ、俺には」
「えええええ!? 何がですか風間さん」
 信じられない、って顔で俺に詰め寄る志穂。
 そんな事をいう俺まで非難する勢い、よっぽど感情移入してるんだな。
「さっき会見を始める直前に入って来た内川の振る舞い」
 俺はテレビについてるタイムシフト機能を使って、直前のシーンに戻した。
 そのシーンで一時停止をかけ、俺が気になった場所を指す。
「ほらここ、こいつ、手を後ろに組んでるだろ?」
「あっ、本当です」
「尊大、偉そう」
「そう、普通の感性ならそう思う様な振る舞いで入場してきた。釈明のための記者会見、事の流れだから実質謝罪会見なのにも関わらずだ。普通はもっとヘコヘコして、手は前に組んどくか真横にビシッと揃えとくもんだろ」
「はい」
「これが出来るのはある意味感心するわ……ってね」
 志穂の表情が少し和らいだ。
 俺の指摘がほとんど皮肉だって事を理解したからだ。
「これでくるって事は、悪いって思ってないんですね」
「だろうさ」
 リモコンで操作して、リアルタイムの記者会見に戻る。
『選手に勘違いさせた言動があった事はお詫びします』
 テレビの中では、内川はちょこん、と頭を下げていた。
「謝るのはそこか。しかも『は』か」
「ひどい!」
「あくまで俺はやってない、俺は悪くない、ってスタンスを貫くらしいな」
「勇者様、どうする」
「そうだな、とりあえず燃料ぶっ込んどくか」
 テーブルの上に置いたスマホを取って、慣れた手つきで操作する。
 先日【仮想空間】を使ってハッキングして、盗聴で手に入れたファイルを俺のアカウント、「sinji」のアカウントにアップロード。
 アカウント名「sinji」、今ではすっかり「パンドラ」で有名になったアカウント。
 パンドラとして、暴露して燃料投下した。
 投下からしばらく待つと、記者会見がざわつきだした。
 リアルタイム、生中継の記者会見。
 その中で記者の一人が質問に手を上げた。
『内川さんは勘違いがあったとおっしゃってますが、今動画サイトにこういう音声が流出しているのですが』
『あれは私がやらせて、責任は私が負う。そう言ってくるだけだ。それくらい神妙にしておけばそのうち下火になっていくだろう』
『さすが内川さん』
『一般大衆はこういう浪花節に弱いですからな』
『うむ、直属の上司が責任を全て取る。そういえば大抵は騙されてくれますな』
『騙すとは人聞きの悪い。まあ、それなりに指示はしたがね』