タイトル   とある夢





「今日はなぜ来院なさったのですか?」
 私は必死で訴えた。
「5ちゃんねるで、私以外の全員が私に敵意を持って、私をどうにかして傷つけてやろうとし
て虎視眈々とその機会を待っている気がするのです。これって私の妄想ですよね。自分でもそ
のことはわかっているのですが、不安になって仕方がないんです。先生、どうにかこの不安を
消す薬を処方して下さい」
「『ゴチャンネル』とは、一体なんですか?」
 ああ、先生はご存じないのか。当たり前だな。しまった。私は自分の軽率さを恥じた。
「5ちゃんねるはネットの掲示板で、昔は『2ちゃんねる』でしたが、名前が変わりました。
『2ちゃんねる』という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか」
「ああ、2ちゃんねるね。知っていますよ。しかしあなた、最近あなたのような人は増えてい
ますが、ネットで白眼視されても、現実の世界で人と交流していれば、何の支障もないのでは
ありませんか?」
「わ、私もそう思うのですが……」
「結論を言います。あなたの症状に名前を付けるなら……」





「現実に起きていることを妄想だと思い込む状態です」

 え? 私はすぐに意味が飲み込めず、ぽかんとして口が半開きになった。
「ですから、あなたは皆から嫌われているのですよ。あなたは『皆で褒め合う』という、創作
文芸の暗黙のルールを破壊したでしょう。ルールの破壊者は忌み嫌われても仕方がない」
「な、なんで私が創作文芸に書き込んだことを……」
 私ははっとして先生の前の机にある新聞を見た。そこには信じられないことが書いてあった。

「四季夜猫之氏、創作文芸でまた批判される」

 おいおいおい! なんで俺の名前が新聞に?
 私は新聞と先生の顔を交互に見た。何度か見たら、先生が言った。
「あそこは酷評禁止ですよ」
「でも、私が書き込んでいたのは元々『あなたの文章真面目に酷評します』というスレッドだ
ったんですよ?」
「酷評といいつつ出鱈目なことを書いて、難癖しかつけられない完璧な作品だと暗に伝えない
とダメでしょう?」
「か、完璧な作品なんて、私と他少数名しか投稿していませんよ!」
「そんな人間は必要ないのです。あなたは少し、言っていることが的確に過ぎた。死んでもら
おう」
 医師は私が驚く間もなく、早業で腰からピストルを抜いた。そして私は眉間を撃たれた。





「……はっ!」
 私は目を醒ました。
 そうだ、これを小説にしよう。
 ワンピースやドラゴンボールのような真面目な話ならとにかく、こんな夢なら夢オチでもい
いのだからな。
 また酷評されるだろうが、構わない。
 ありのままに自然に書けば、小説を書くことは楽しいことなのだから。たとえつまらないも
のができても、知ったことか。