>>185
僕は意を決して「おはよう」とドアを開けた。
眩しいのは光のせいだけではない。憧れていた新しい世界というのは、それだけ眩しいものなのだ。
だが、僕は新しい世界に理想だけを求めてはいない。だからこそ、母親の蔑む視線にも耐えることができた。
眉をしかめ、口元は歪み、母親の表情は僕の進化をまったく理解できないと言ったものだった。
僕が理想だけを求めていたら、おそらくきっと……いや――間違いなくこの視線には耐えられていなかっただろう。
僕は蜜を吸う蝶のようにごく自然な動きで椅子に座ると、「朝ごはんは?」と母親に聞いた。
母親は一瞬ためらった後「お弁当を作った残りよ。嫌ならパンを焼いて食べなさい」と言った
いつもの朝だった。いつも通り過ぎる朝だった。
何も変わっていない――よそよそしい母親の視線以外は。