>>書籍化しているものはどれもオリジナリティあるもの
>>下読みとの相性次第で評価ががらっと変わる新人賞よりよほど公平なシステム
>>需要あるから供給されてる面もある

残念ながら、どれもある意味で間違いなんだよ
まず、なろう系のWeb小説投稿サイトにて上位を取る上で一番重要なのは「流行」に乗ること
ポイント数って明確な指標があるからわかりやすいが、今なら「追放」って単語検索で引っ掛かる作品とそれ以外だと大体4倍〜20倍ぐらいの開きがある
一万ポイント越え作品/総該当作品数でそれぞれ検索を絞って比較してみるとわかりやすいけど、「追放系」は10作品に1つは一万超えてる計算になる

なろうにおいて「流行」が最も強いファクターなのは界隈においては公然の事実で、
同じぐらい面白い作品なら流行に合わせて書けば10倍以上の評価の差が出る

しかも恐ろしいことに、それはなろう内の需要であって、なろう外部、要するに書籍化後の需要ではないんだ
出版スレでは最近ほぼ確定に近い結論が出てたけど、なろう内のポイント数と書籍化後の売り上げはほぼ比例せず、
なろうの読者は基本的に書籍版を買わず、webで満足する傾向が最近特に顕著になってきた
そしてなろう系書籍で最も売れているのは「異世界転生」なのに、今のなろうで「異世界転生」は評価されない
それはもう古い流行で、今のなろうで流行ってるのは「追放系」だからで、なのに「追放系」で上位を取って書籍化しても、売れないのが現状

バクマンの七峰システムもそうだけど、選別過程が複雑化&多人数化すればするほど想定外の要素が多分に混入する
そしてなろう系レベルで大規模になったシステムは、もう既に一つの独立した市場であって、市場戦略や分析がモノを言う世界になってくる
そりゃあ確かに、安定供給で売れるモノが生まれるって意味では商業的に見て最も優れたシステムだとは思う
オリジナリティ? 違うよ、同様の品質のモノをいくらでも生産できるという安定性においてなろうは極めて優れてる
言わば創作の工業化であって、均質な大量生産を可能にしたという点でなろうは物書きの世界に産業革命を起こしたのは事実

だけど同時に、均質すぎるっていうのが最大の問題になってくる
なろう読者自身でさえ、日間上位なんかの作品群のうちいくつかは酷いものだと言ってもいる
工業生産のレトルトカレーはそこそこに美味しくて利益率は高いけど、専門店のシェフが作ったカレーではない
そして……まぁこれはラノベというより一般寄りの話だけど、「専門店のシェフ」がいなくなって工業生産品だけになれば、
それこそ「コンテンツの一生」コピペのようにブームが去れば最後は誰もいなくなって終わるだけだ
製品ライフサイクルの導入期やコトラーの競争地位戦略でのチャレンジャーのように、
市場そのものの多様性、平均ではない最上位の理想品質を担保するためには何か他のルートも存在しなければならない

それは例えば、今ノベルデイズが挑戦している「リデビュー賞」のようにプロをwebサイトに集める方式が有効かもしれないし、
そうでなければ現時点で存在している新人賞が最もその「web投稿サイトとは違う観点」の評価軸を維持できている

正直、利益効率は悪いよ新人賞は……なろう系は最近は右肩とはいっても、それでも圧倒的な利益還元率がある
最低限元は取れる工業生産に企業が魅力を感じるのは当たり前で、でも「その次」を獲得できなければいずれ潰えるのも明白
新人賞も、あるいはweb投稿サイトの新しい形態としてでもいいけど、何か必ず『別の評価軸』自体は存在しなきゃならない
でなければ、「ただ売れるだけ」の製品を製造することが小説を書くってことになってしまう


……そんな風に書くとすさまじいなろう系アンチみたいに見えるかもしれないけど、むしろ本当に評価はしてるし自分でも載せてる
あれが一つの革命を成し遂げて出版不況への対抗策にすらなってるのは素晴らしいと思ってて、でもだからこそそれに頼り切りじゃいけないと思ってる
一つの成功パターンに縋り続けた企業は、フォード社の二の枚になるだけなのは歴史がいつだって証明してるわけだから