「イリス……?」

 俺は、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
 捜していた恋人は路地裏奥に見つかった。血溜まりの中に沈む、見るも無残な姿となって。

 両の頬は裂かれ、骨に穴を開けられて、そこから視神経を引き摺り出されていた。目があるべき部位は赤黒い眼孔がただ開く。
 頭も丁寧に割られ、ピンク色の脳が露出してる。腹部が引き裂かれ、火で焼き切って強引に止血されている。腹の前には、綺麗に切り出された腸と生殖器、眼球が添えられている。
 口から何かが出ていると思ったら、縦に五つに裂かれた舌だった。

 イリスの言葉が、脳にフラッシュバックする。
『私、いいの? 私みたいなのが、幸せになって』
 顔を赤らめ、恥ずかしげに、それでも二人の先に期待を孕ませ、そう口にする可愛らしい彼女の顔が、脳裏に浮かぶ。

 彼女の口が、動いた気がする。
 まさか、そんなことがあってはならない。彼女が、これ以上辱められていいわけがない。いや、あり得ない。だって、こんな姿になっても人間が生きられるわけがないんだから。

 ころして。

 確かに彼女はそう言った。俺は動けない。
 全身から力が抜けて、その場に崩れ落ちる。同時に吐き気が襲う。イリスを見て、俺が吐き気を感じる?
 そんなわけがない。違う、違うんだ。俺は口を押えながら、怒りのままに自身の顔を殴った。

 何が何だかわからない。どうしてイリスが、こんな目に遭う? なぜ?
 イリスの顔を、恐る恐ると見る。額に、一枚のカードが添えられていた。

[我が愛しの君へ、宴の清算に。またご一緒できる機会を楽しみにしております。罪神の使徒・色欲を冠する鮮血の淑女アーリアより、愛を込めて。]

 俺の、せい……? 俺があのとき、あいつを取り逃がしたから?


やりすぎやろいくらなんでも