村上春樹は最初のエッセイ集「村上朝日堂」の「文章の書き方」という節で、
「どんな風に書くかというのは、どんな風に生きるかというのとだいたい同じだ」と書いている。
女の子を口説くとか、喧嘩をするとか、寿司屋で何を食べるかとか、ひととおりそういうことをやってみて、
文章を書く必要もないと思えれば、それはそれでハッピーだ、と。自己療養の必要がないからハッピー、ということだろう。
文章を書くというのは「書く」だけのことだが、書くだけのことであるがゆえに想像力と方向性を必要とする。
我々がどのように生きるかというのも、想像力と方向性の問題である。だから文章を書くことは生きることとだいたい同じなのだろう。
つまり、頭で考えただけの文章を書いてもしょうがないということでもある。