おいおい。それじゃ理解不能だろう。てか、小説技法以前ではなく、むしろ逆に、小説の本質的問題ともいえる。要するに、凡人には理解できない、チョーハイレベルの話だ。

よし、いいか? これからとても大切な話をする。おまえの作家志望人生を変えるほどの、めちゃくちゃすごい話をするから、心して聞いておけ。

たとえば、そうだな、お笑い芸人が黒人の扮装をして笑いをとっていた番組があったな? あれを見て、外人やエセ人道主義者どもは、人種差別だといって大騒ぎをする。差別意識のない日本人にとってマジ迷惑な話だ。しかし時代の潮流に日本人も巻き込まれる。
つまり、意図していないが、ある種のメッセージを発してしまう。それが「表現」だ。わかるか? 前にも教えてやったが、メタファーだ。ま、大きな意味でな。

物語を描くとその物語が、何かの暗示であったり、何かを示唆するものなのではないか、と、賢い読者は深読みをする。文学性の高いものは特にそうだ。そして、それを意図的にコントロールしているのが、真の作家だ。

大丘氏は残念ながら自分の作品が発するメッセージについて無頓着だった。だから前回バッシングを受けた。あれはなにもレイプを扱っているからどうだというわけでもない。女性蔑視、女性の人格を軽く見ているステレオタイプの性根が見え透いていたからだ。

大丘氏にかぎらず、小説にオチ(起承転結)をつければいいと、頭で考えて書くタイプの奴がいる。こいつらははっきりいってアホだ。オチをつけることが目的になっている。オチは手段であって目的ではない。わかるか?
オチ(起承転結)をつければ、小説として成立。――という考えは捨てろ。その洗脳から脱しろ。いいな?
目的は、笑いであり、感動であり、啓蒙、啓発であり、カタルシス等々だ。そのために、オチ(起承転結)という手段を使うこともある。

よし、いいな? コントロールできない奴は、流行を意識しろ。感性で流行を感じ取れ。感性によって時代の要請に応えることができる。たとえば、異世界ものが流行っていたが、これは人々のライフスタイル、価値観が、それを求めていたからだ。

これまでの組織つまり会社、友人、家族という関係性の「幸せ」よりも、それらを捨て、個として生きる。すべてを捨て生まれ変わる。
まさにそれが異世界転生によって表現されて、「幸せ」より「楽しさ」に価値をおくという、新しい文化的価値観が創造されていたから、ウケた。
現実的に東京都では平均世帯数が二人を割ったこともあったな。個の時代の到来だ。そう、すべての事象が繋がっている。流行とはそういうことだ。わかるな?

作家になるということは、新しい価値観を創造する権利を獲得するということでもある。居心地のよい古い価値観の中でのうのうと暮らしていて作家様になりてえだと? 笑わせるなよカスが。まあ、いい、よし、今日はこれくらいにしておいてやる。ちゃんと復習しとけよ。