どれだけぼーっと歩いていたのだろうか。
俺は気付けば見渡すかぎりの草原にいた。

足首ほどの長さの、平凡なくらい瑞々しい草。空は爽やかに青く、雲ひとつない。
そんな何もない草原の真ん中にたった一つ、バカみたいに巨大な大木があった。

たまに神社とかにあるご神木っていうやつ。あれと比べても数段大きい。
そしてなぜかその木の方向から、風に乗って男たちの嬌声が聞こえてくる。

『……やらないかぁ、やらないかあ、やらないかあああ……!』

「え、なにここ怖い」

俺は来た道をダッシュで戻った。