そうして2年がたった頃、つまり2ヶ月程前からわたしの身体はボロボロになっていた。

 無数の実験の結果、聴覚以外の感覚のほぼ全てが程度の差はあれども弱ってしまっていた。

 視覚は、右目自体が失われていた事に加え、残った左目も3m先の手のひら大の物すらボヤけて判別が難しい位に視力は弱り、効き目であるにも関わらず立体視がほとんど出来なくなっていた。

 触覚は、触られている感覚では無く、押されている気がするかどうかというレベルだ。

 嗅覚は、鼻先にカレーの様な香りの強い物を近づけられても殆ど何も匂いを感じられない。

 痛覚は1番酷く、例えば腹部にナイフを突き立てられたとしても、カッターの刃が指先に軽く食い込んだ程度しかない。けど、失われた右目や右腕や身体中に残った傷から起こる幻肢痛だけは耐え難い程に感じてしまうのだ。

 現在のわたしは、薬物や毒に対する耐性も痛みに対する耐性も高く、身体の自由が効かないこともあって、考えられる限りの人体実験と彼らのストレス発散の道具として扱われている。