担架に乗せられる瞬間に見えた女性の顔に、その特殊武器防護隊の男は驚愕した。

 彼女の表情は、無だった。焦点の無い目をし、感情を抜き去ったその様子は、以前配属されていた先で見たあるものを思い出した。

 感情どころから、生きようとする意思すらない完全なる無の表情………それは、心の壊れた人間だけが見せるものだった。

 恐らく、彼女は助かるまい。身体がではなく、心がなければ人は死んでいるも同然なのだから。