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ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【154】

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0001この名無しがすごい!
垢版 |
2019/09/05(木) 17:55:25.08ID:t87CrkV0
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

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前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【153】
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0769小林さんのへりくつ
垢版 |
2019/09/11(水) 20:48:49.90ID:x0lbl3Ui
 小林さんの意に反して好成績を出したのは展望公園で採取したものだったようだ。しばらく実験室に閉じこもって帰ってこなかったが、雨宮さんをぎゃふんと言わせる事はできたようだ。下手な鉄砲数打ち当たる論と豪語する。
 ちなみに糞は別の分野で役立ったらしい。今日は助手のお礼を兼ねてすきやきパーティーに招待された。ビーカーや試験管に用意された調味料類を次々に投入する絵面はいかんともし難いが、味は完璧だ。肉は少ないが
郊外にある農学部でもらってきたという野菜をふんだんに使っていてヘルシーだ。農学部で研究助手のバイトをしているそうだ。すきやきパーティーが落ち着き
祝い酒がかなり進んで半升瓶2本目に突入していた。ここで気づいた事がある。気を使わずに二人とも手酌でイっていたのだが、俺が注いだあと小林さんが瓶をもつと半周回したり、少し回してから注いでいる。
「それなにしてんの」
「なにがですか?」
「ほら、瓶を回してるじゃん」
 一拍おいて気がついたようだ。
「ああこれですか、癖です、ラベルが上じゃないと嫌なんです」
「変わった癖だね」
 そう笑って言うと小林さんも笑った。
「薬液を注ぐとき、ラベルを下にすると液ダレで汚れて読めなくなります、濃硝酸なんかだと一発で字が消えて、ぼろぼろと剥がれます、種類がわからなくなるのは非常に危険なんです、職業病ですね」
「なるほど、理由があったんだ」
 瓶は3本目に突入した。酒豪の小林さんも語尾が少し怪しい。
「小林さんてさ、ゼミはどうしてんの」
「今年の10月から研究室に入ります」
「へえ、もう行き先は決まった?」
 小林さんは浮かない顔をして考え込んだ。
「物理の方に行くか、生命工学の方面に行くか迷ってます」
「そうなんだ、全然違うように聞こえるけど」
 小林さんはあいかわらず物憂げな表情で言う。
「最近思うんです」
「ん?」
「知ってますか? キリストやイスラム教圏では今でも生物は神が創造したと信じている人がいるんです、先進国であっても、愚かな人達だとバカにしていました」
「うん、確かに非科学的だね」
「でも、物理や生命を知れば知るほど、あながち嘘じゃないんじゃないかと思うようになりました」
「どういう事?」
「生命は太古の地球環境の中で自然発生的に生まれたと言われていますが、物理的に不可能だと思うようになったんです」
「でも現に生命はあるじゃん」
「そうなんです、現に生命があるから不思議なんです、昔はウジが湧いたりカビが生えたりするのは自然発生と考えられていました、しかし1864年にパスツールが無菌密閉空間でなにもない所から生命は発生しない事を証明したんです
では有機物が混沌と混ざり合っている状況ではどうか、様々な研究者が生命の発生に挑戦しましたが、全て失敗しました、それから研究が進んで、細胞の構造解明やゲノムの解析と
調べれば調べるほど、物理現象による偶然の生命の誕生は不可能だという証拠集めにしかならなかったんです、進化論さえ否定されて、種は最初からあったかのような研究結果ばかりです
もはや自然発生して進化したという理論の方が宗教になりつつあります」
 興味深い話だと耳を傾けていたが、小林さんの顔をちらっと見て二度見した。顔を真っ赤にして涙をこぼしている。声が多少濡れているのは酔っているからだと思っていた。
「え、え? なになに、どうしたの」
 小林さんは俯いた。俺は隣に移動して顔をのぞきこんだ。
「怖いんです、私のやっている事が全て嘘っぱちだったら、全ては創造主のいたずらに付き合わされてるのだとしたら」
 小林さんがしなだれかかってきた。相等酔っているようだ。ふらふらする頭を抱いてやる。
「コーリン・パターソン博士は言いました、進化論は科学的事実ではない、むしろ事実は正反対に思える」
 小林さんは証明するのが生き甲斐だ。その証明の根幹が揺らいだ時、生き甲斐を否定されたような気持ちになるのかもしれない。
「進化の途中の中間型さえ見つからないんです、生命はより低位の質に、無秩序に向かって、エントロピーの増大に身を任せているだけなんです」
 俺にコメントできる事は何も無い。ただ、頭を撫でた。
「創造主が創ったオモチャはいずれ壊れて動かなくなってしまうのでしょうか」
 俺だって歴史を研究しているから探求者の気持ちはわかる。常識のように思われていた歴史的事実がひっくり返されて慌てふためく研究者もいる。しかしそれは一部修正されて終わりだ。小林さんが懸念しているのは全否定だった。
 小林さんは、泣きながら俺の腕の中で眠った。俺は小林さんを奥の部屋のベッドに運んだが、アパートの鍵を閉める事ができずに台所の床で寝た。
0770小林さんのへりくつ
垢版 |
2019/09/11(水) 20:50:57.36ID:x0lbl3Ui
「おはようございます」
 声に気がついて目をあけると、小林さんが横で正座していた。壁掛け世界時計を見て多少混乱しつつも日本は8時だった。起きようとして腰がグキっとなった。
「いって」
「あっ、大丈夫ですか」
 あわあわと両手を空中で泳がす小林さんに笑って起き上がった。
「大丈夫大丈夫」
「何か昨晩はご迷惑をかけたようで」
「いや、いいんだよ、それより小林さんこそ気分はどう、大丈夫?」
 心配そうな俺の表情を見て、小林さんは黙ってしばらく考えると、クイっと眼鏡を上げた。
「ひょっとしてまた生命の起源を語りながら泣いたんですか」
 俺は苦笑いをした。『また』なんだ。
「仲間にはウザイと言われます、気にしないでください」
 軽いな。昨晩は深い深い慟哭のように感じたのに。そんな俺の気持ちを汲み取ったのか小林さんは続けた。
「私が悩んでも仕方の無いことです、人智を越えた巨大な存在が我々とその世界を創造したと言うのなら、そのお庭の片隅で遊ばせてもらえばいいのです
その存在が創ったおもちゃを使って、きっとその様子を見て楽しんでいる事でしょう、作動させたピタゴラスイッチを見るように」
 言ってる事は宗教じみているのに理論的なのが小林さんらしい。でも科学を極めると宗教的になってくるって話も聞いたことがある。
 妙な間があって小林さんを見ると、何か期待の表情でマテ状態の子犬のようだ。よく見るとたすき掛けにバッグをかけている。あ、思い出した、今日は俺の生活に密着する日だ。
「ちょっと待ってね、お風呂入るから」
「私はもう入りました」
 俺は玄関近くの脱衣所に目をやった。想像しちまった。

 俺のテリトリーの東キャンパスに来た。といっても取らなければならない講義も無いので適当に人文社会学を聴講した。今日のテーマは人間文化学だった。
「どうだった?」
「話はわかりましたが目的が解りません」
「ははは、単なる知識だよ」
 2限は第2外国語のスペイン語だ。しかし語学なんて何処の学科でもやっている。チョイスミスだ。会話で繋ぐ。
「小林さんは多分ドイツ語でしょ」
「よくわかりましたね」
「やっぱり」
「著名な博士の論文を原文で読みたかったのです」
 その後、キャンパスの中央付近にある牛めし屋で昼食を取った。カフェテリアはギャル系の女子が多くて小林さんが怯えるからだ。ここは男子のたまり場だ。昭和の駄菓子屋のように演出された外観に彼女のテンションも上がる。
 お腹を満たした後、商学部にあるヘブンレイブンでアイスコーヒーを買い、キャンパスの西側にある地下鉄に向かった。俺が所属するテニスサークルに向かうためだ。リア充ばっかりの集団に特攻するのは心配だったが
俺を知りたいと言うなら避けては通れなかった。こうしていると、俺達は付き合っているんじゃないかと錯覚する。距離感は十分だ。俺はある決意をしつつあった。その時、俺に声をかける奴がいる。
「おー、結城じゃねえ?」
 振り替えるといたのは1、2年の時からよく一緒にあそんだ浜田だ。
「おう、久しぶり」
 こいつはお洒落で遊び上手でリア充の典型なやつで、いまいち垢抜けていなかった俺もこいつの影響で雰囲気が変わったんだと思う。なぜかこいつは俺が好きだ。小林さんは俺の後ろに隠れた。まあこいつのチャラさだ
無理もない。浜田は俺と他愛もない話をしながら肩越しにしきりに小林さんを気にした。俺がなかなか紹介しないのに痺れを切らしたのか浜田は言った。
「そちらは?」
 もう守りきれない。俺は一歩横にステップすると、紹介した。
「理工学部の小林素子さんだ」
「はじめまして、小林で……」
「ええー、お前最近付き合い悪いと思ったら天才と付き合ってたの?」
 こいつ、間が最悪だ。告白はしようと思ったが余計な事いいやがって。それに自己紹介遮りやがった。
「そんなんじゃないよ、ただの友達でお隣さんだ」
こんな事を言うはめになったじゃないか。浜田は上から下まで舐めるように見て「へぇー」だの「ふぅーん」だの言っている。小林さんは縮こまっていて見ていられない。
「俺達急いでるんだ、また電話するよ」
「お、おう」
 俺は小林さんの手を引いて逃げるように立ち去った。
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