※大遅刻の供養SS(しかも長い)となります、よろしければお付き合いください。
出来れば期間中に仕上げたかった……

>>2
☆使用お題→『自撮り』『小麦粉』『ハロウィン(Part2)』『幻想』『爆弾』

【ゆるキャラ奏者ヤゴ太郎:2曲目 〜ハロウィンの夜と押しかけ弟子〜】(1/4)

決してメジャーとは言い難いが、旅慣れた者たちの間では地方都市の老舗宿として知られ
知る人ぞ知る名湯としても名前が上がる『蜻蛉の湯』(せいれいのゆ)では、現在ハロウィンイベントが開催中だ。
カボチャのランタンや洋館、可愛らしくデフォルメされた黒猫や蝙蝠やゴーストなどのオブジェが所狭しと
ロビーラウンジはもとより、正面エントランスや中庭の一部にまで飾られて。
それらは夜間にライトアップされると幻想的に輝き、いつもの和風テイストの館内とは趣を異にしている。

 そんな中でも一番人気のイペントは、やはり当館で誕生したゆるキャラのヤゴ太郎による津軽三味線であった。
その彼の外見も10月からは秋仕様となり、胴体は赤と黒の縞模様で手足は赤いタイツに包まれている。
初披露のときには一部の観客から「今日から赤トンボか〜」「いや塩辛トンボだ」と言われたのに少々ヘコんだりしたものの
大半は「秋らしくていいね!」と概ね好評だった。演目ではいつも弾いている「津軽じょんから節」から始めて
他にも「ハイサイおじさん」「千本桜」「Storm」「ライディーン」など他ジャンルのテンションの高い曲で盛り上げ
最後はハロウィンにちなんで、しっとりと落ち着いたケルト音楽のメドレーで締めくくった。

 しかし今日はこれで終わりではなく、このまま当日限定の観客参加イベントに移行していくのを
司会の若い女性従業員の明るく朗らかで伸びやかな声が宣言する。

「ここからは特別企画の”三味線で音当てクイズ”を行います。皆さん頑張って当ててくださ〜〜い!!
ああっ後ろのお客さま、自撮り棒での撮影は周りのご迷惑になるのでお止め下さい!?」

 声の主は、普段はフロント業務を担当する照山紅葉(てるやま・もみじ)さんだ。
栗色のセミロングが似合う、文系の女子大生のようなふんわりした雰囲気の美人である。
ヤゴ太郎としてライブを始めた当初からコンビを組み、奏太郎がヤゴ太郎である事を知っている数少ない一人である。
今日の彼女は、フリル付きの白ブラウス以外は全て黒いとんがり帽子とマントとミニのプリーツスカ―ト
そして紫と黒の縞々ニーソックスという、気合入りまくりの魔女っ子衣装でステージに立っている。
いつもの制服である宿の法被に紺色のベストやタイトスカートとは大違いの華やかな姿で
ヤゴ太郎に負けず劣らずの注目を集めている。

「ベン♪」 「ド?」 「正解で〜す!」
「トゥン♪」 「ラッ!」 「はいっ正解〜!」
「テンティン♪」「ソとミッ!?」「凄いっ、お見事!!」

 まずは音階を当てる絶対音感クイズが始まったが、今日の観客は音楽通が集まったのか
早くも白熱した点取り合戦になって、子供も大人も関係なく対等な立場での勝負が繰り広げられた。

「続いては”イントロクイズ”になります。一音だけで曲名を当てないといけないから難しいですよ! 
ではヤゴ太郎くんお願いします!!」

「リョ……了解。デハ一問目イキマス……」

近頃はカタコトながら喋るようになり進化を見せるヤゴ太郎が新ゲームの開始を告げた。