>>37

使用するお題→『限定スイーツ』『刀』『バイオリン』『神話』『歯がゆい』

【サムライが少女と、少女がサムライと出会うまで】(1/3)

限定スイーツという悪魔の言葉を生み出した誰かを殺してやりたい、そんな自分ながら物騒にすぎる思考をウッカリ声に出しながら、“抹茶クリームチーズ神話最大の挑戦者”と銘打たれた抹茶クリームチーズと宇宙アナゴの盛り盛りアナゴタルトを頬張る俺。

「抹茶クリームチーズ神話シリーズはハズレが無かったからって油断したぜ、期間限定という思わぬ伏兵まで俺を惑わしやがった」

涙が出てくる不味さに何処へともなく向けた殺気が周囲に漏れていく、何となく営業妨害になってる気がするが、コッチはそれどころではない、この糞マズタルトは一つで140宇宙$日本円換算で2,800円………………

「細々と用心棒で食ってる俺にゃ痛い出費だ、食うしかあるめえ」

自分でもテメエの顔が飯を食うときの顔じゃねえ事ぐらい分かる、まるで修羅場だ、油断すりゃ命を持ってかれるあの場所と同じ空気をこのタルトは放っていやがる。

「よし食うか、さて食うか………………食うぞ? 食うかんな!? 分かってんのかゴルァ!?」

駄目だ、どれだけ鼓舞しても俺ときたらフォークを動かそうとしやがらねえ。

「居たぞ! 腰に刀…………間違いない!」

そんな俺にミニ豚もとい残飯処理係が声をかける、何やら声を上げて威嚇してるようだが、どうにも糞マズタルトをご所望らしいときた。

「待ってたぜぇ! 豚共!!」

駆け寄る先頭の豚にタルトの乗った皿を叩きつけ、仰向けに倒れ込むそいつの腹を蹴って後続の豚共を飛び越える。

「お代はそいつ等にツケといてくんな!!」

間抜けな顔で目を剥く店主にそう告げて悠々と店を出る、其処は宇宙港M-08、雑多な人種が入り乱れる地球の衛星“月”の玄関口、その一つだ。