安価・お題で短編小説を書こう!7
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
安価お題で短編を書くスレです。
■お題について
現在、毎週日曜日の午後22時に前回のお題を締め切り、新しいお題を安価で決める方式を取っています。現時点での募集お題はスレ主によるレスを確認してください。
■投稿方法
使用お題と【】でタイトルを明記してください。決めていなければ【無題】でも可。
作品は4レス以内で。レスが2つ以上に別れる場合は分かりやすいよう番号を振ってください。
R18は禁止です。他に規制はありません。
■「小説家になろう」等への投稿について
同一内容を別サイトへと投稿する行為は認めています。
その際、権利者以外が5ch上から無断で転載したものと区別するため、出来る限り【本スレへ投稿する前に】投稿してください。
別サイトへと投稿してリンクを貼るのも可。
リンク先のタグに『お題スレ投稿作品』を入れ、使用お題、タイトル、URLを書き込んでください。
※なろうのURLは規制されていますので、KASASAGIか俺Tueee.Net!のURLで代替してください。
■前スレ
安価・お題で短編小説を書こう!
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1508249417/
安価・お題で短編小説を書こう!2
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1511408862/
安価・お題で短編小説を書こう!3
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1522770910/
安価・お題で短編小説を書こう!4
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1529860332/
安価・お題で短編小説を書こう!5
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1541947897/
安価・お題で短編小説を書こう!6
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1557234006/ 「大丈夫ですか?」
近くにいた私は彼女に、当たり障りのない口調で声をかける。言いながら、スマートフォンを拾う。
手渡すと、その女子高生は朗らかに笑って、
「ありがとうございます!」
と元気にお礼を言った。
『私』は、「いえ、お気をつけて」と、当たり障りのない答えと会釈を残して、何事もなかったかのように歩き去る。
女子高生は。
白百合学園中学高等学校に通い、両親と二つ下の弟と暮らす、栃木に住む祖母を一年前に亡くし、運動部には所属せず、
東京理科大学を目指して来年の受験に向けて勉強に励んでいる、趣味はお菓子作りで、血液型B型で身長156cm体重47kg、
将来の夢は植物研究者の、十七歳の捺美柚葉は。
いつも通りに、そのまま二人の友達が待つケーキ屋へと向かっていった。 スカイツリーの展望階で共に夕焼けを眺めた時の照れた笑顔とも、赤坂の三ツ星レストランで前菜を前にした時の緊張した表情とも、
道玄坂のラブホテルのベッドの上で積極的に迫ってきた時の陶酔した瞳とも、快楽に悶えて自分を見失った獣のようによが.り狂う時の顔とも、
弟と両親を惨殺されて怒りと絶望に支配されて慟哭する姿とも、意味不明な殺人鬼に身体の端から順に切り刻まれて涙と嗚咽でぐちゃぐちゃになった時の様子とも、違う。
ごく普通の、親切な見ず知らずのサラリーマンに向ける笑顔だけを、残して。
そして『私』は彼女を振り返ることなく、それとなく街を見渡した。
若者がいた。老婆がいた。店員がいた。サラリーマンがいた。子供がいた。運転手がいた。小汚い男がいた。完璧に整った美女がいた。
古暮祥汰がいた。及川幸子がいた。木原実がいた。田崎正次がいた。志藤舞がいた。顕道京一がいた。比村吾郎がいた。三園凛花がいた。
幾度となく出逢い、幾度となく別れ、ありとあらゆる巡り合いを、喜怒哀楽を、理非善悪を、親愛から憎悪までを酌み交わし。
そして今はまた見ず知らずの他人となった、名前も人生も、ありとあらゆることを知り尽くした幾万の彼らと彼女らが、視界に溢れんばかりに蠢いていた。
「今回は、『良い人』だからな……それと、『休憩で立ち寄った神社の神主に感化されて、神職への転職を決める』んだったっけ」
適当に呟く。けれど、もちろんそれは、今の『私』にとっては何よりも重要なことなのだ。
さしあたっては、神社への道のりをスマートフォンで検索することにしよう。
『私』は『終わらない外回りに疲れ、都会の喧騒を離れた落ち着ける憩いの場を求めている』のだから。
令和元年。
その循環する時間の渦の中に、私は取り残されてしまったらしい。
今やそれを驚くことも、恐れることもないが、そうでもなければ、とても正気を保つことなどできはしない。
けれど、もちろん。
私の正気を証明するものなど、言うまでもなく。
約一年ですべてが消え去り、無限にやり直しを続けるこの世界中の、どこにもないのだが。
【万世元年】 了 規制対応している間にIDが途中で変わってしまいました、すみません 遅レスですorz
>>44
守護霊となったのでしょうか?
いちゃラブカップルの休日は、きっと幸せ色なのでしょうw
>>48
コワレタ者同士の物語と言った所でしょうか?
それでもお互いを想い合っている感じが素敵ですね
>>55
寒空に温かい姉弟の物語
小さな冒険をして、お互いの大切さを再認識したと言った所でしょうか?
>>56
独り身の編集さんが悲しすぎて(;_;)
それでも、ネタにされる位には親近感を持たれているのだと思います
>>63
人からの評価が気になるお年頃と言う事に成るのでしょうか?
承認欲求を簡単に満たせるツールでもありますから……その内、自分でスレを立ち上げそうな? >>80
ちょっと深イイ話ですね
と言うか、藁人形常備系JKですかw
>>89
何処かのマンガで、辛い経験をしてるのに「あれ? これ、ネタになるんじゃね?」と考えてる自分がいると言う物を見た記憶があります
ともあれ、支えてくれる人が居ると言うのは幸せな事です
>>94
転生スライムの冒険ですね
姫と出会ったお話も見てみたい所です >>116
彼女と彼の表と裏
歪な愛情関係でも、二人が惹かれ合っているのは真実なのだと感じました
>>138
ガンマンVS忍者w
アメリカのB級映画になりそうな戦いですねw
>>142
未来の浪人稼業と言った所でしょうか?
用心棒と言っても警察まで敵にまわすとはw
>>148
上級生に恵まれない小学校な件w
誘拐と窃盗で余裕でアウトな気がしますが、弟君が無事でよかった
>>162
収まる所に収まったと言った所でしょうか?
刀のちょっとした冒険……ちゃんと洗ってからケーキは切ったと思いたいw 今さらの感想返しです(;_;)
>>113
感想ありがとうございます
最初っからクライマックスな感じでw
実は夜のシーンから書き始めて、追加でカーチェイスのシーンを書いて居ますw
>>115
感想、何時もありがとうございます
とにかく、時間が無ありませんでしたorz
昼と夜の話の間に、もう一シーン入れたかったのですが…… なんか楽しい流れにw
>>165
前スレのブーツのパクリにしかならなくて、駄目じゃね? とは思った
ですがまぁその、とりあえず書くしかなかったんですよ・・・
>>166
そして力作が・・・その発想はなかった色々と
テンプレとはなんだったのか
仕込み刀は一瞬頭をよぎりましたw
>>183
一応言い訳しておくと、お題を取り始める前の投稿なら、おまけしようとは思ってますw
今回はご遠慮頂きましたが><
律儀に素早い続編! からのおおおおオチが、、、
>>186
IDはもちろん構わないですけど、レスに番号は振ってください
つかあんまり言っても悪いですが、言葉の溢れ出るブルドーザー過ぎて!
『万世』から瞬時にこれが出てくるのも、なかなかユニークなのでは
>>191
感想ありがとうございます、機会があればw
>>192
あまり変なものは切っていないはずなので・・・w すみません
今回のお題に一部の場にはよろしくない物が含まれているので変更をお願いします >>179
使用お題→『了解です』『侍ジャパン』『蛾』『令和』『万世元年』
【8分の1人前】(1/3)
“万世元年”
スクリーンに映った男はそう言った。
侍ジャパンのつば付き帽子にスキーゴーグルに黒マスクと出来合いの物で取り敢えず顔を隠した感が滲み出るような顔面ファッションのその男は《白い蛾》と名乗り、犯行声明のような物を全国の中継局をジャックした集団に流させた。
『令和が終わろうとする今、日本は変わらなければならない、今日この時をもって今年を万世が変わった年、万世元年とする』
最初は下らない革命家気取りのテロリストだろうと思っていたがどうも様子が違う、それは俺だけが……………………正確には俺を含めた4人にだけ解る異常。
映像の後ろに見える部屋の間取りや家具の配置から、其処が再来年には築100年になるオンボロ独身寮、その一室“俺達の部屋”だった。
すぐさま鳴り出すスマホ、周囲を見回して咄嗟に電柱の裏に隠れる、声を潜めて電話に出た俺の耳に…………
「おい、犯人はお前か?」
と聞き慣れた声が届く、映像に映ってるのは夜の寮室、犯人が着用してる黒マスクは今電話をかけてきた吉田の持ち物、必然そんな事が出来るのはルームメイトだけだ、つまり………………
「お前こそ俺のカメラ使って勝手にあんなもん撮った犯人じゃないだろうな?」
つまりは“そういう事”だ。 【8分の1人前】(2/3)
「今頃は寮が特定されてガサ入れが始まってるだろうな」
自分以外の三人の中に犯人が居る、そんな状況で集まった俺達は探るような視線を交差させ、スキーゴーグルの持ち主である島本が重々しくそう言うまで開店前のBARで顔を付き合わせた男達が無言で睨み合うという怪しさMAXな状況に甘んじていた。
「アンタ達、急にどうしたわけ? まだ店も開けてないのにゾロゾロと…………」
「なに、人生の危機を迎えたので取り敢えず逃げてきただけさ」
吉田の妹であり先月このBARを父親から次いだばかりの新米マスターの小百合ちゃんの問いにいつものスカした声音で川崎が答える、余裕そうに見えて言ってることに余裕の欠片もないのまで普段通りだ。
「兎にも角にも俺達の中にいるテロリストの首魁は俺の黒マスクを付けて」
「私のスキーゴーグルを無断で着用し」
「僕の父の形見である侍ジャパンの帽子を被り」
「俺のデジカメであの犯行声明を撮影したに違いない」
「「「「という事だ」」」」
「そ、そう…………」
このように、俺達は元来この程度のリレー台詞なら朝飯前の仲良し4人組なのだが、今回ばかりはその絆にも傷を付けざるを得ないだろう。
「やはり一番怪しいのは秋山君だね」
一番最初に矛先を向けるのは川崎、俺の名を呼び…………
「僕達が犯人だとしてわざわざ無駄に高性能な君のカメラで高画質な犯行声明を出す訳がない、普段からあのカメラを使っていた人間の犯行と見て良いだろう」
と、犯人の行動の不合理さを俺が犯人だと仮定する事で説明してみせた、コレには俺も反論のしようがない何か知らんが使われていたのだ仕方がないだろう、なんて言えるはずもない事実だ。
「いや、それはないだろう、今朝ランニングに行く際、机の上に秋山君のSDカードが置きっぱなしだったのを見つけてデジカメに戻しておいた。
普段の彼の行動を鑑みればデジカメの扱いがお粗末に過ぎる、SDカードを出しっぱなしにするなど有り得ない、他人の物だからこその行動だと私は思うが」
しかし、島本が川崎の言に反論する、あくまでも証言の一つでしかないが俺に罪をなすりつけないと言う事は彼は犯人ではないのだろう、とすると怪しいのは川崎と吉田になる。
「そう言う川崎はどうなんだ? 父親の形見を他人の手が届くところに置いておくか? 普通」
「僕が普通じゃないことの何が行けないんだい? サイン入り帽子を見せびらかして悦に浸りたい時ぐらい僕にもあるさ」
「そうだったな、お前はそういう奴だったわ」
格好の付かない事を“俺今格好いい事言ってる”みたいなドヤ顔で言い切る川崎に頭が痛くなる、コイツは奇人過ぎて俺なら憚るような証言もガンガンしてくる、その点だけ見ればコイツ程信用できる奴も居ない。
また、島本が犯人である線はこの場の全員が言うまでもなく否定しているだろう、彼が犯人ならわざわざゴーグルを探すまでもなくアイマスクを付ける筈だ。
彼以外の二人が犯人の場合はアイマスクを取ることで彼が起きることを恐れてゴーグルを使うのだろうが彼が犯人だった場合に限りその心配はない、よってゴーグルを付ける選択を取りうるのは彼以外の二人しかないのだ。
「秋山が犯人でないなら川崎が犯人という事になるんだけどな………………」
島本が俺の犯行を否定していると言うことは二人の目線からすれば互いが最有力の容疑者である筈で、最も最初にその事に気付けるのが、罪をなすりつけられる対象を探してる犯人か犯人を真剣に探してる警官のどちらか………………
その判断は難しいが反応が早いということは余計な思考が挟まってないとも見れる、俺的には先に川崎に矛先を向ける吉田の方が信用できる気がする。
さて、どちらが犯人なんだ? 【8分の1人前】(3/3)
「吉田君は普段から反社会的思想を見え隠れさせていたね、公立校の教師の給与が下がった所為でヤバい奴を採用しないと現場が回らないようになったって」
「事実だろ?」
「そんな訳無いだろう、公務員は高給取り過ぎるんだ、NHKなんて無駄の極みは即刻取り潰すべきだ」
「お前の方が反社会的じゃねーか」
吉田と川崎の疑い合いは数分がたち貶し合いへと姿を変えていた。
「なんだか聞いてるうちにどっちが犯人でも可笑しくない気がしてきた………………」
二人の大の大人が貶し合う、そんな見苦しい光景を見れば信頼度はゴリゴリ下がっていく、貶す人間も貶される人間も信用できなくなる自分の弱さに苦い思いはある物の、今は信じ切ってしまうよりはマシだろうと二人を見守ろう………………
と決めた瞬間に傍聴者が口を出す。
「ねえ、なんで犯人は場所が特定できる場所でこれ見よがしにみんなの持ち物を身に付ける訳? それって犯人感情として可笑しいんじゃない?」
と。
この場の誰よりも客観的に状況を見守っていた彼女、小百合ちゃんの意見は無視できる物ではない、何故犯人は俺達4人の中に犯人が居ると知らせるような情報を犯行声明に紛れさせてるのか………………その答えは余りに簡単だった。
「「「「この4人の中に犯人は居ないから…………?」」」」
同時に同じ結論に辿り着き間抜けにハモる俺達を見て小百合ちゃんはテレビの電源を付ける、其処には俺達の隣の寮室に入居してる佐藤が容疑者として逮捕されたと言うニュースが流れていた。
後日、俺達は木村警部に呼び出され「自分達の判断で犯人探しをする前に連絡しろ馬鹿共め」とお叱りを受けた。
「了解です! ご指導痛み入ります!!」
こう言うときは無駄に元気よく口ごもらずに答えるのが吉だ。
「本当に分かってるのか?」
椅子に座ったまま睨み上げてくる警部から思わず目を逸らす。
最近はそれも通用しなくなってきているがな。 こちら競馬実況だがスレも軌道にのったということで、しばし休業する
よろしくw う〜ん、残念ですが、休業があけましたら、またよろしくお願いします >>186
最速でアップ! ループする世界ですね
全くの繰り返しの世界は、未来に対する覚悟を決められる幸福な世界か、それとも無限地獄なのか?
擦りきれた主人公が答えだと思いますが……
>>196
警察官の不祥事w
テロを起こしたい程の何があったのでしょうね? バグじゃなく35件も新着あったからびっくりしたわ
でも競馬実況さんいなくなるのは悲しいなあ…… マジですか、、競馬実況さんがいないと、スレを回せる気がしないんですが・・
ともかくありがとうございました・・・
ちょっと休んで、また来てください
>>196
IDがw クリーンなH61年w
こちらも早速の力作過ぎる・・・
何人前なのかミステリーですねw >>203
みんなおるからきっと大丈夫だ
2作品投稿してから何もしてない俺が言うのも何だけど 競馬実況さん……気が向いたら、また遊びに来て下さい。 お前らって本当に人としてダメだよな
もう少し自覚した方がいいよ >>206
すまんな年度明け前頃まで忙しいんじゃ
207は煽りかな、あまり相手にせん方が得策かもしれん >>179
使用するお題→『了解です』『侍ジャパン』『蛾』
【幸せの青い蛾?】(1/3)
夜の9時、レストランの閉店時間になった。
今日も一日の営業を終え、後片付けも済ませたライアンとレイチェルはリビングでテレビを見ながらゆっくりと寛いでいた。
ふとスポーツのチャンネルに変えてみると、侍ジャパンの優勝の話題でもちきりだった。
「日本が優勝だなんてホント予想外だよね。世界と渡り合えたってことだし」
「………」
「ん、どうしたんだいレイチェル?」
急に黙り込んでしまうレイチェルを見て心配になるライアン。
「あっ、ごめんねライアン。ちょっと「侍」って言葉に一瞬落ち着かなくなっちゃって」
「もしかしてあの時の忍者を思い出したのかい?」
「実はそうなの…」
以前、レイチェルはロールケーキ泥棒の犯人である謎の忍者を取り逃がしてしまったことがあった。
得意の銃撃が全く通用しなかったことがかなりショックだったみたいで、あれ以来休みを利用して
数十キロ離れた射撃場に行って練習することが多くなった。
「今度こそ、絶対にあの忍者を捕まえてみせるんだから!」
「(わっ瞳が炎のように燃えてる。でもそんなレイチェルもすっごく可愛い!)」
「この女ガンマン、レイチェルからは逃げられないってことを教えてあげるんだから!」
「まあ落ち着いてレイチェル。明日は水曜で定休日だからのんびり過ごそう。いつもそんなに神経尖らせてちゃ疲れるよ」
「そ、そうね。ごめんなさい、私ってすぐに熱くなっちゃう…」
「気にしないでいいよ。今日はもう寝ようか」
翌日、レイチェルは早起きしてお馴染みのガンマン衣装に着替えると、ライアンと一緒に庭の花壇に水やりをする。
「可愛いお花さんたち、みんな元気に綺麗に育ってね」
するとどこからか一匹の大きな蛾が飛んできて、チューリップの上にちょこんと止まる。
「わっ、大きな蛾!」
「しかも青い色してるね、まだ発見されていない新種かも?」
「もしかしたら青い鳥みたいに、幸せの青い蛾かしら?だったら捕まえましょ!」
しかし蛾は飛んで逃げてしまう。
「あっ待って!幸せの青い蛾ー!」
レイチェルはその青い蛾を追いかける。
「レイチェルは本当に好奇心旺盛なんだから」
そんなレイチェルを見て、ライアンは思わず苦笑いをする。 【幸せの青い蛾?】(2/3)
レイチェルは目の前をヒラヒラと飛ぶ青い蛾をひたすら追いかける。
「レイチェルさんだ!おはよう!」
町の子供達が挨拶をするも、蛾に夢中なレイチェルはそれに気付かない。
彼女の後を追ってライアンも走ってきた。
「あっライアンさん。レイチェルさん一体どうしたの?」
「レイチェルはね、幸せの青い蛾を追いかけているんだよ。それじゃあね」
ライアンは優しく子供達に返答すると、またレイチェルの後を追いかける。
そんなライアンの後ろを白いワンピースを着た白髪の少女、そうジュディも走って追いかけていた。
「(レイチェルさんって結構メルヘンチックなのね!)」
しかしライアンはレイチェルを見失ってしまった。
「あーあレイチェルったらどこに行っちゃったんだ?」
「(仕方がない、こうなったら私が空から探すしかないわね)」
ジュディは空中に高く舞うと、レイチェルを探しに向かう。
「(そう遠くまでは行ってないはず。待っててねライアンさん、私が見つけるから)」
その頃レイチェルは無我夢中で蛾を追いかけていた。
しかし蛾にとにかく夢中だった彼女は、道端で居眠りをしていた野良犬の尻尾を踏んでしまったことに気付かなかった。
怒った野良犬はワンワン!と激しく吠え、レイチェルを追いかけた。
「えっ!?」
ふと後ろを振り向いた瞬間、犬が鉄砲玉のように自分の方に突進してくるのに気付く。
「ワーーーーッ!!!」
尻尾を踏まれて怒った犬が、勢いよくレイチェルの左太腿にガブッと噛みついた。
「い、痛い痛い!放して、放してったら!!」
犬は頑なに彼女の太腿から放れようとしない。空から一部始終を見ていたジュディがすぐに助けに向かう。
彼女は運良くゴミ箱に捨てられていた、まだ中身の入ったドッグフードの缶詰を見つけるとそれを持って犬に近づく。
「(ほら、これでも食べて大人しくしてなさい!)」
ジュディは思いきり遠くへ缶詰を投げる。犬はレイチェルの太腿を放すと、ドッグフードの良い匂いに誘われて走り去っていった。
「(レイチェルさん、今のうちよ!早く!)」
レイチェルは急いでその場から走って逃げるのだった。 【幸せの青い蛾?】(3/3)
「あの青い蛾、見失っちゃった…」
レイチェルは青い蛾を捕まえられず落胆し、元来た道を辿って家へと帰る。
さっき犬に噛まれた左太腿がズキズキと痛む。ジーンズは牙で破け、血で滲んでいた。
家に帰るとライアンが待っていた。
「レイチェル、青い蛾は捕まえられたかい?…って大丈夫か!?」
「た、ただいまライアン…」
ライアンはすぐにレイチェルの太腿の手当てをし、薬を塗って優しく包帯を巻く。
「これでよしっと!君の好奇心旺盛ぶりには本当にハラハラさせられるよ」
「ごめんねライアン。私ってどうしてこう、すぐに先走ってしまうのかしら…」
「僕はレイチェルのそういうところが大好きだけど、無茶だけは絶対にやめてくれよ」
「りょ、了解です…!!」
「急にかしこまらないでよレイチェル。君らしくないよ(で、でも可愛い!)」
「(レイチェルさんって気分の浮き沈み激しいなあ。ライアンさんもこりゃ大変よね)」
そんな2人の姿を見て、思わず苦笑いをするジュディ。
その後、レイチェルは気を取り戻してライアンと一緒に録り溜めていたドラマの続きを楽しむ。
「あの蛾がもし本当に幸せを呼ぶ青い蛾だったとしても、僕はそんなのいらない」
「私も今そう思ったところよライアン」
「だって僕たちは今…」
「すっごく幸せだもんね!!」
ライアンとレイチェルは顔を合わせ、そして互いに笑い合うのだった。 >>208
まーそのうちw
その人はただのかまってちゃんっぽい
どうせ暇だろうから何か役割を、とも思うんですが、、うーん・・
>>209
これは楽しい話w
侍・・・ブルーモスを追い掛けて・・・らしくない『了解です』!
結局最後は幸せそうで何よりですw >>179
使用するお題→『了解です』『侍ジャパン』『蛾』『令和』
【奇妙なゲーム】(1/3)
雲一つなく晴れた土曜の朝、カナミとケンスケはのんびりと散歩していた。
「ねえお姉ちゃん、今日はどこに行く?」
「………」
「お姉ちゃん?」
「あっごめん、ちょっと考え事してて」
「考え事?」
「今年さあ平成から令和に変わったわけだけど、令和ってどんな時代になるのかなあって」
「うーん、令和だから令和な時代になるんじゃないかな?」
「アハハ、面白いこと言うわねケンスケ」
しばらくして商店街にやって来た2人。侍ジャパン優勝を記念してか、どの店舗も全品3割引セールを実施していた。
「侍ジャパン優勝、本当にすごいわね」
「ねえお姉ちゃん、何か新しいゲームソフトでも買おうよ。僕、今2000円持ってるよ」
「私は4000円。合わせて6000円あるし、3割引で安くなってるから十分買えるわね」
近くのゲーム店に立ち寄る。中には最近発売された新作がズラリと並んでいた。
「うーん、どれが面白いかなあ?」
「お姉ちゃん、これはどうかな?」
ケンスケが持ってきたのは「バイオモス・アタック!」という、大量発生した蛾から町を守るという内容のゲームだった。
「なんか聞いたことのあるタイトルね」
「これにしようよ、お姉ちゃん」
「そうね。他に面白そうなの見つからないし」
4500円で購入し、家に帰ると早速ゲームの準備をする。ソフトをセットし電源を入れる。
すると黒い画面に白い文字で注意書きみたいなのが出てきた。
「このゲームには一部、刺激の強い場面が含まれています。それでもプレイしますか?」と。
「了解です、っと!」
「了解です」のボタンを押し、ゲームが開始される。
小さくカクカクとしたデザインの可愛らしいキャラクター達が大きな町に住んでいる、
とてもファンシーな世界観なのだがそれが急に一変する。
さっきまで青かった空が赤く染まり、大量の蛾が現れたのだ。
「うっひゃあ、さっきまで世界観が全然違うよ」
「それより蛾を退治して町を救わなくちゃ!」
プレイヤーを操作し、手に持っている銃を使って蛾を駆除していく。
しかし次から次へと現れるためキリがない。 【奇妙なゲーム】(2/3)
開始してから1時間ほど、ようやく最初のステージをクリアしたところだった。
第二のステージでは農作物を食い荒らす蛾の幼虫を退治するのだが、カナミは途中で疲れて離脱してしまった。
「わ、私疲れちゃった…悪いけどリタイアするわ」
「えー、せっかく良いところなのに」
「ケンスケ、やりすぎちゃダメよ」
ケンスケはそのままプレイを続行する。夕食とお風呂を済ませた後も、ケンスケは無我夢中でひたすらプレイしていた。
そんな弟の姿を見てカナミは心配になってきた。
「一心不乱でやってる…一体どれだけ中毒性があるのかしら?」
次の日、カナミが学校から帰ってくると、ケンスケはあのゲームを夢中でプレイしていた。
両親もさすがに心配になってきたようだ。
「ケンスケ、学校から帰ってきてからずっとゲームばかりなのよ」
「ケンスケは確かにゲーム好きだけど、あそこまで病的じゃないぞ。どう見てもあれは夢中ってレベルじゃない」
深夜0時、カナミはベッドを出るとケンスケの部屋に向かい、そっとドアを開けて中を伺う。
もう深夜だというのに真っ暗な部屋の中で、ケンスケはひたすらゲームを続けていた。
「ケンスケ、もうそのゲームやめなさい!」
しかしケンスケは姉の注意に全く反応しない。目をパッチリ開け、口もポカンと開いている。
「ケンスケ?ケンスケ聞いてるの?」
すると突然ゲームの画面から非常に低い声が聞こえてきた。
「おい、邪魔するんじゃない…!!」
「えっ、何なの今の声!?」 【奇妙なゲーム】(3/3)
すると大きな白い蛾のモンスターがゲームの画面から現れた。
「お前の弟はもう我々の獲物だ。誰にも渡さない」
大きな脚でケンスケの体を掴む。ケンスケは既に洗脳されてしまったのか身動き一つしない。
「ケンスケに何するのよ!放しなさいよ!」
弟をゲームの世界へ引きずり込もうとするのを何とか阻止しようと、モンスターを叩いたり蹴ったりするものの全く通用しない。
するとカナミは机に置いてあるハサミを見つける。
「これだわ!」
ハサミを手に取り、モンスターの頭部によじ登るカナミ。
「お、おい貴様!一体何をするつもりだ!」
「虫の弱点といえばこれ!」
カナミはハサミで頭部の触覚をチョキン!と切断する。触覚を切断されたモンスターはコントロールを失い、狂ったかのように飛び回る。
その間にコントローラーを手に取り、プレイヤーを操作して銃を放つ。
「グワアアアア!」の断末魔と共にモンスターは爆発し死んでしまった。
同時にゲームの電源が切れ、ケンスケが意識を取り戻す。
「あれっ!?僕、今まで一体何してたんだろう?」
「ケンスケ!目が覚めたのね!」
カナミはケンスケをギュッと抱き締める。その後、さっきまでの出来事をケンスケに全て説明する。
「そ、そんな事があったんだ…」
「全部このゲームのせいよ。もうこのゲームは捨てることにするわ」
「そうだね」
翌日、「バイオモス・アタック!」のソフトは粗大ゴミとして廃棄処分した。
もうあんな呪われたゲームなんて二度とプレイしたくない。
「ケンスケ、今度からはちゃんと決めて買いましょ」
「そうだね、あの時お姉ちゃんがいなければ、ゲームの世界にずっと閉じ込められてたかもしれない。本当にありがとう!」
「て、照れるわねウフフ」
学校に向かう中、楽しそうに笑い合う姉弟なのであった。 >>213
まさかの2連発ww
少し特別な日常から、『了解です』なるほど、奇妙な世界にw、『蛾』の攻撃、再び日常へ・・・
シリーズの設定を生かしつつ、絶好調ですねこれ
仕方ないけど、競馬さんがいないと感想がパワーダウンだw >>209
幸せの青い蛾ですかw
もし、本当に新種であれば、学名に名前が付いたかもしれませんね
>>213
悪魔のゲームと言った所でしょうか
弟を想う姉の絆パワーで、ハッピーエンドになって良かったw ところで次回のお題ですが
全部ひらがな企画をやってみようと思います
ひらがなの、つまり同音異義語になるものを5つです
ご提案頂いた時には却下してしまったんですが、一度カオスを体験してみたい >>212
>>216
感想ありがとうございます!
レイチェルは今回も好奇心を爆発、それから弟を悪魔のゲームから救う姉のお話でした
青色ってこう幸運のイメージが強いですよね
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! >>217
感想ありがとうございます!
途中でちょっぴり鬱な展開があっても最後は必ずハッピーエンドで締めるのが好きです
レイチェルシリーズもブラコンシリーズもこれからどんどん続いていきますのでどうぞお楽しみに!
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! うわああるのかそういうの……やっぱ事前申告大事だね うわああるのかそういうの……やっぱ事前申告大事だね 個人的には別に気にしないし、まとめサイトの形で公開されてるなら問題ないけどね
無断転載を発見したのなら晒すべき >>179
お題:『了解です』『侍ジャパン』『蛾』『令和』『万世元年』
【時をかけない少女】
「了解です!!」
部屋に朗らかな声が響く。
その声を上げた少女は、キラキラとした希望に満ちた瞳で辞令を快諾した。
『辞令、令和元年のタイムテレビ支社への出向を命ず』
辞令を出した側の男は、その頂点まで薄くなった髪をわしゃわしゃと掻いていたが、しかし、すでに決まってしまった事でもある為に、大きな溜息を吐きながらも口を開く。
「くれぐれも分かって居るだろうが、問題をおこすなよ?」
「分かって居ます! 問題などおこっても、この私がズバッと解決して見せます!!」
「だから!! 余計な事に首を突っ込んで、仕事を増やすなと言っているんだ!!」
「ははは! 怒ってばかりだと、ストレスで禿げますよ?」
「余計なお世話だ!!」
******
万世元年
時間遡行技術が確立してからどれ程の時代が過ぎただろう。
この時代には、すでに“時間”と言う物も調べ尽くされ、『すでに確定した歴史は、覆す事が出来ない』と言う事も分かって居た。
つまりは、どれ程、未来の人間が過去を変えようとしても、その結果は変える事が出来ないと分かってしまったのである。
例えば、超小型で高性能な爆弾を爆破させたとしよう。
しかし、そこで爆弾が爆発したと言う歴史的事実が無いのであれば、当然、爆弾が爆発する事は無く、不発弾と成ってしまう。
そして、単分子ナイフなどで現地の人間を斬り付けたとしても、歴史として残っていないのであれば、当然の様にナイフは刺さらず、怪我人が出る事は無い。
そうなると『過去改変』等と言う事を行う者も当然居なくなる。当然だ、全くの無駄な事の為に動く者など居ないのだから。
つまりは、未来人が何をしても現地に影響を及ぼす事は出来ない。そうなれば、歴史と呼ばれた物が、知識ではなく娯楽に変わったのは当然の事かも知れない。
東海林 麻由佳は時間リポーターである。過去の時代へと赴き、その時代をリポートするのが仕事だ。
彼女は、ある意味で人気のあるリポーターだった。
何せ彼女は、どの時代に行ってもアクシデントに巻き込まれるリポーターだったからだ。
他の、淡々と歴史的事実を説明するリポーターたちとは違い、彼女のリポートは常にアクシデントが付きまとう。
それ故に人気が出るのも当たり前だろう。その分、局長の頭は薄くなってゆくのだが。 【時をかけない少女】(2/2)
「令和、令和ねぇ〜。侍ジャパンって、あの辺りだっけ?」
タイムマシンに向けてウキウキと歩く麻由佳が、振り向いてカメラマン兼ADの津川 智朗にそう訊ねる。
まだ、それ程リポーター歴の長い訳では無い麻由佳だが、それでも様々な時代の支社へと赴いて、リポートをして来た。
ただし、令和と言う時代は、そんな麻由佳にっとっても、ぶっちぎりで古い時代ではある。
結構な功績を認められなければ古い時代に赴く事は許されていないからだ。
そんな事も有って、麻由佳はかなりご機嫌だった。
「そうっすね。あー東京オリンピックもあの辺りだったかと思います」
「オリンピック? それって、もう二つくらい昔じゃなかったっけ?」
「あれ? 知らないんすか? 東京でオリンピックって、何回かやってんすよ?」
「マジ?」
「フジ」
「マジかぁ、知らなかった」
それ以外にも、令和時代で歴史に残っている事件は多かった。そのリポートが出来るとあって、彼女のやる気は鰻登りに漲っていたのである。
「そんじゃ!! 張り切ってリポート、行きまっしょい!!」
******
「ぎゃー!! ぎゃ! 嫌!! もう、お家帰るぅ〜!!」
そんな麻由佳は既にホームシックに掛かっていた。
彼女の生まれた万世の世は、地球環境を維持する為に都市のドーム化が終わっており、人々は管理された都市世界で暮らしている。
外に出れば全くの手つかずの様な自然界なのだが、都市内はそこから隔離され、人間にとって住み良い環境と成って居るのである。
「確か、“蛾”って、虫っすよね? あれ? 昆虫でしたっけ?」
「知らない! 知らない! どうでも良い!! 誰か、追っ払って!! はやくぅ!!」
令和支社の窓ガラスに張り付く5cm程の蛾に、麻由佳は半泣きだった。
そう、この令和の時代、都市は外界と別れてはおらず、当然、万世の時代にはありえない事だが、町の中にも虫が居るのである。
今まで麻由佳が行っていた時代は、それでも都市のドーム化が進められていた時代であり、こんな町中に虫が居る事などあり得なかったのだが…………そんな予備知識の無い彼女は令和の洗礼を受け、既に心が折れかかっていた。
だが、既に辞令は下り、彼女は受けてしてしまっている。少なくてもこの時代で何らかの成果を出さねば、意見も通せないだろう。
会社勤めの悲しい所である。
頑張れ麻由佳! 負けるな麻由佳! 視聴者が君のリポートを待っている!!
「あ、ごき……」
「うぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」 >>179
使用お題→『了解です』『侍ジャパン』『蛾』『令和』『万世元年』
【お題の時代】(1/2)
ある日、私たちの学校に、万世元年が転校してきた。
「万世元年くんは、えーっと、数万年前から続く宇宙人帝国の末裔(まつえい)だそうだ。みんな、仲良くしてやってくれー」
「初めまして、皇帝です。『万世』は一万代目という意味で、『元年』は字(あざな)です。よろしくお願いします」
万世元年くんはイケメン過ぎて、教室に入り切らないほどの見物人が集まってしまった。
仕方がないので、グラウンドに出て野球をすることになった。
「おーい、皇帝殿。拙者は侍ジャパンでござる。拙者と勝負するでござるよ」
侍ジャパンくんは野球部の部長で、一騎当九の天才野球選手だ。
「勝負? それは面白そうですね。了解です」
「はい、何か用ですか、皇帝くん」
「了解です殿、丁度いいところに来たでござる。今から拙者、皇帝殿と勝負するでござるから、貴殿の○ッキーを貸してなむや」
「侍ジャパンくん、キャラがぶれてるよ。了解です。はいどうぞ」
同級生の了解ですくん。彼は正体不明のスーパーマンだ。頼まれごとは絶対に断らず、引き受けたことは必ずやり遂げる。
「よっしゃー、バッチ来いやー! ……でござる」
「侍ジャパンくん、語源に鑑みて、それはちょっと違うと思うよ」
万世元年くんをマウンドに立たせ、打席で叫ぶ侍ジャパンくん。キャッチャーは了解ですくんだ。
万世元年くんが無言で振りかぶって第一球を投げようとした瞬間、彼と彼の手の中のボールに何が起きたのか、それを説明するのは難しい。
彼は最初に、下半身に力を込めた。軸足の底から……中略でござる……ボールに触れる指先まで力が伝わる。だけどそれは本当は逆で、ボールが自分で飛び出したのかも知れなかった。
ボールは弾丸となり、物質を超越した波動となり、最後には侍ジャパンくんの構えるポッ○ーを直撃した。
「……ばらっばらだ。ばらっばらだよこれ……でござる……」
「侍ジャパンくんほどの天才でも、ポ○キーでホームランを打つチートは使えなかったね」
「まだ勝負は終わってないでござる」
侍ジャパンくんは、普通のバットに持ち替えて、次の球を待った。
万世元年くんが無言で振りかぶって第二球を投げようとした瞬間……中略でござる……バットを直撃した。
「……全部省略でござる……ツーストライクでワンナウトチェンジでござる」
マウンドに立つ侍ジャパンくん。打席には万世元年くんが入る。キャッチャーはいない。
「よっしゃー、バッチ来てください」
侍ジャパンくんが無言で振りかぶって第一球を投げる。次の瞬間、彼はマスクをかぶってミットを構えていた。
これこそが侍ジャパンくんの真骨頂、ワンマンチームだ。
白球がミットに吸い込まれる。万世元年くんはぴくりともしない。これはいい勝負になりそうだ。
「……は?」
ボールが消えた。
数秒遅れて、昼の月が輝く。更に遅れて、風が震える。
「ジャストミートでした。えっと、了解ですくん、申し訳ないのですが、月まで行って、ボールを取ってきてもらえますか」
「りょ、了解です。だけど月まで行く宇宙船を用意するのに一年以上かかります」
「そうですか。じゃあいいです。ポッキ○とバットとボールのお代は弁償します」 【お題の時代】(2/2)
予想外の結果に誰もが言葉を失う中、一人つぶやく子がいた。
「弁償する必要はないでごじゃいます。閣議決定したでごじゃいます」
令和くんだ。お父さんが政治家の令和くんは、時々意味の分からないことを口にする。
「令和殿、何を閣議決定したでござるか。それと、おなかの調子は大丈夫でござるか」
「宇宙船がなくても、空を飛べる人が取りに行けばいいでごじゃいます。腹案があるでごじゃいます。おなかの調子は絶好調だから大丈夫でごじゃいます」
「令和くん、キャラが混ざってるよ。うちの学校にそんな人いたかな?」
令和くんが右手の人差し指をこちらに向ける。そして再びつぶやく。
「いるでごじゃいます。蛾(が)さんでごじゃいます」
*
空を飛べるのは、私だ。
私は蛹(さなぎ)だった。
だけど、ある日突然、私の繭は壊れてしまった。
壊れてゆがんだ繭から、私は外の世界に飛び出した。
*
私は羽を広げる。壊れた月を目指して。
「待ってください!」
万世元年くんが声を上げた。
「あなたは私の妻ではありませんか? あなたは嫦娥(じょうが)でしょう?」
私は彼の問い掛けには答えず、羽に力を込めた。
「待ってくれ!」
「皇帝くん! やめるでごじゃいます!」
万世元年くんが私の羽をつかんだ。鱗粉(りんぷん)が風に舞う。
「嫦娥よ、答えてくれ! 我が妻よ!」
私は彼の目を見た。それは月のように白く、彼がこの世の者でないことを示していた。
死臭が風に漂う。
「答えはイエスでありノーです。蛾は姿を変えます。私は芋虫。私は蛹。私は繭。私は蛾」
万世元年くんも、令和くんも、侍ジャパンくんも、了解ですくんも。みんな私を見ていた。
「私は嫦娥。私はかぐや。私はツクヨミ。月の化身。私はアルテミス。私はセレーネー、そしてヘカテー、冥府の魔女。私は月の女神。易なる蛾、蛾」
私は風に乗った。月の光を背に浴びて。
眼下では、万世元年くんがお香をたいていた。令和くんは何かをシュレッダーにかけていた。それは花びらのようにも見えたけど、いつしか風に溶けていった。
ボールがぶつかって壊れた月は、それでも美しかった。浮かぶ破片から死者の声が聞こえる。
一万年目の青空が暮れてきた。蛾は月までは飛べない。とりあえずどこを目指そうか。
明かりを消して。世界中の。そうしたら。
私はどこまででも飛べる。 私の最高傑作の怪文書です
締め切りはいつもそこにある お題→『了解です』『侍ジャパン』『蛾』『令和』『万世元年』締切
【参加作品一覧】(1/2)
>>186【万世元年】
>>196【8分の1人前】
>>209【幸せの青い蛾?】 【参加作品一覧】(2/2)
>>213【奇妙なゲーム】
>>230【時をかけない少女】
>>233【お題の時代】 6つでレスアンカー多過ぎって言われたんですが・・・どうなってるの? そうなのか・・・
ともかく、、やらかし気味ですがノーカンで、、、
今回は予告通り企画回です!
お題5つ、全部ひらがなでお願いします!
お題安価>>241-245 ☆お題→『とうそう』『せんとう』『しりとり』『いちご』『すき』から1つ以上選択
☆文字数→4レス以内に収めれば何字でも可。ただし3レス以内を目標とすること。
1レス約2000字、60行が上限。
☆締め切り→12/1の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。
【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】 びょ、秒速で埋まって震える
ありがとうそしてありがとう
次の締め切りは12月、師走ですね・・・
皆様無理なくマイペースで行きましょうー >>230
ハゲの(ある意味)復讐w
辞令を了解、未来の万世、すごい過去の『令和』、『蛾』とごき・・・
多分リポートもこの調子なんでしょうねw 平仮名でやるのなんかいみあんの?って思ってたけど確かにこれは色々取れて面白そう >>233
理不尽系擬人化小説と言う訳ですねw
最終的に主人公が色々なモノから逃避でエンドと言うw >>248
感想有難うございます
おそらく何時も、どたばたリポートだと思いますw >>250
感想ありがとうございます
嫦娥乗風、作者奔月、こんなの擬人化に逃げるしかないですw >>246
使用するお題→『とうそう』『せんとう』『いちご』『すき』
【忍者、また現る!そして決着!】(1/3)
定休日である水曜日の夜。ライアンとレイチェルはリビングで夕食を食べながら、テレビを見ていた。
すると奇妙なニュースが飛び込んできた。このシチリアにある小さなイチゴ農園に泥棒が侵入し、大量のイチゴを盗んでいったとのことだった。
その泥棒の正体はなんと日本刀を背負った忍者で、農夫は捕らえようとするも非常に俊敏な動きに対応できず、そのまま逃走を許してしまった。
それを見たレイチェルは思わず立ち上がる。
「あの忍者、ライアンのロールケーキの次は農園の大切なイチゴを盗んだのね。ゆ、許せない…!!」
「お、落ち着けってレイチェル。少し頭を冷やしてさ、ほら」
「ご、ごめんなさい…」
「よっぽど逃したのがショックなんだね」
「だって成す術なくロールケーキを奪われたんだからすっごく悔しくて、悔しくて…」
「でも今は冷静になって。勇敢な女ガンマンである君なら、次こそは必ずあの忍者を捕まえられる」
「ラ、ライアン、ありがとう!」
レイチェルは思わずライアンに抱き着く。
「さ、明日はまた仕事で早いからもう寝よう」
「そうね!」
シャワーを浴びてパジャマに着替え、ベッドに入って寝ようとするレイチェル。
しかし、どうしてもあの忍者のことを思い出して不安になり、なかなか寝つけなかった。
「(あの俊敏な忍者に立ち向かうにはガンマンじゃなく、黒猫の衣装の方がいいのかな…?)」
黒猫の衣装を着れば忍者と対等に渡り合えるかもしれない。
「(だ、ダメダメ!私は基本ガンマンでなくちゃ!黒猫はいざという時のためだけ!)」
あれ以来、負けないよう必死に射撃の練習を積んできたから今度は必ず勝って捕まえられる!
そう信じると、これ以上考えるのをやめて眠りにつくのだった。 【忍者、また現る!そして決着!】(2/3)
翌日、レストランの客達の間でも忍者の話題で持ち切りだった。
「昨日のニュース見たか?」
「まさかシチリアに忍者が現れるなんてな。ずっと空想の中だけの存在かと思ってたぜ」
休憩時間、レイチェルがキッチンに入った時、足下に何か落ちているのに気付く。
それはなんと手裏剣だった。レイチェルは急いで手裏剣をライアンに見せる。
「これは何かの合図かもしれないね。もしかして今夜、またここに現れるということかな?」
「そう思った方が良いかもしれないわね。この女ガンマン、レイチェルから逃げられないってことを思い知らせてあげるんだから!」
「レイチェル、君ならできるよ。絶対に勝てる!で、でも絶対に無理だけはしないでね」
「もちろん!」
深夜の0時。ちょうど日付けが変わった頃、レイチェルは今か今かと忍者を待ち構えていた。
すると、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。天井の方からだ。
「あら今日はロールケーキは置いていないのね。すっごくがっかりだわ…」
「出てきたわね忍者!今日という今日は絶対捕まえてみせる!」
忍者が床に降り対峙するや否や、レイチェルは腰のホルスターから銃を取り出し勢いよく発砲する。
咄嗟に忍者は鞘から日本刀を取り出す。
「だから私に銃なんて無意味。学習能力のないガンマンね、可哀想に」
「それはどうかしら?」
日本刀で弾丸を切り刻もうとするも、刀は弾丸でパキン!と音を立てて真っ二つに折れてしまった。
「な、何故だ!」
「私の攻撃が一秒速かったから、あなたの日本刀は弾丸の勢いに負けて折れてしまった。つまり一瞬の隙を突かれたってわけ!」
「な、生意気な!」
忍者は刀を捨てて今度は手裏剣で攻めてくるものの、レイチェルは得意の銃撃で難なく手裏剣を次々と破壊していく。
しかし何十発も撃ち続けたため弾切れを起こしてしまい、予備の銃弾ももう無くなってしまったため、銃は使い物にならなくなってしまった。
「し、しまった!」
「銃はもうダメなようね。こっちはまだ手裏剣が一つ残ってる。どういう意味か分かるわよね?」
忍者がレイチェルに最後の手裏剣を投げてきた。 【忍者、また現る!そして決着!】(3/3)
手裏剣がレイチェルの方に凄まじいスピードで迫ってくる。
「あなたはもう終わりよ!」
しかしレイチェルはジャンプして回避した後、足を回してブーツの拍車に手裏剣を当て、そしてそのまま蹴り返した。
手裏剣はそのまま勢いよく忍者の方に戻っていき、胸に突き刺さった。
「ギャーーーーー!!!」
忍者が倒れると、レイチェルはすぐに体を縄で縛って身動きができないようにした。
近くで様子を伺っていたライアンも駆けつけてきた。
「レイチェルやったね!」
「うん!さあ観念なさい、悪い忍者さん!」
「レ、レイチェル暗殺はし、失敗したわけね…」
「あ、暗殺!?誰の差し金なの!?」
「ナ、ナタリーって覚えてるかしら…?私はシーラ、彼女の昔からの友人よ…」
忍者は全てを説明した。かつて子供達から盗んだおもちゃを売り飛ばして荒稼ぎしていた老婆で、元女子プロレスラーのナタリー。
脱獄しレイチェルに復讐を果たそうとするが失敗、遥か遠くの大きな刑務所に投獄された彼女は、面会で度々会っていた旧友のシーラにレイチェルを暗殺するよう依頼したのだ。
シーラは元トップアスリートで、年老いてはいるものの高い身体能力は今も健在だった。
忍者に変装するのもナタリーからの提案だった。また、ナタリーは既に老衰で他界していた。
「私の暗殺が目的なのに、何故ロールケーキやイチゴを盗んでたりしてたの?」
「そ、それはただ私が大の甘党なだけ…特に深い理由なんてないわ…」
その後、シーラは駆けつけた警察に逮捕、連行されていった。
この事件で、レイチェルはこれまで以上にシチリアでは知らない者が誰もいないほどの人気者になった。
「それにしても凄く手強かったわ。あの婆さん、元トップアスリートに恥じない俊敏さだったわ」
「レイチェル、僕は君が本当に誇らしいよ」
「ウフフありがとうライアン!私はライアンがいるから強くなれる、いつもそう信じてる」
そんなレイチェルの言葉にライアンも思わず顔を赤らめるのだった。 >>253
おお、、今週も早速
『逃走』する『イチゴ』泥棒、『隙』あり忍者(再登場)と戦闘、拍車も活躍、甘いのが好きな悪党w
アクションあり、過去作の要素ありで、立ち止まらないレイチェルシリーズですね >>256
感想ありがとうございます!
今回は忍者との決着、ということで色んな要素てんこ盛りの力作に仕上げることができたと思います
この世界の老婆は年老いていてもとにかくパワフルです(笑)
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! >>246 使用お題→『とうそう』『せんとう』『しりとり』『いちご』『すき』
【私は一人でも大丈夫“だ”】(1/3)
男…………白浪(パイロン)は、長い逃走と闘争の日々に疲れていた、何物にも代えられない大切な知己や居場所は、他ならぬ彼自身を引き金とした厄介事でとうの昔に消え果てた。
今の彼に寄る辺はなく、また行く宛もなく、終わり無き旅路の最中、時に置いてかれるような永遠は今も続いていた。
「ねえねえお兄さん」
美しい田園風景の中で木漏れ日と春風に身を委ねて無防備にも眠ってしまっていたのも、彼が長い旅に疲れているからだったのだろう。
「大人がこんな所で寝てていいの? ひょっとしてお兄さんは畑持ってないの?」
まあ、彼に話しかける少女からすれば、そんな事情を知るはずもなくただただ暇な大人が昼間から木の幹に寄りかかってサボっているようにしか見えないのだが。
「お兄さんはね、畑どころか家も郷も持ってないんだ、だからずっと旅をしてるんだよ」
無知で無垢な少女の問いに暖かな笑みを浮かべて答える男の顔には皺一つ無く、どこか幼さすら残る整った顔立ちをしていた、けれどその顔が少女には老爺のように見えていた。
「そうなんだ、家も“さと”? も無いんだ…………じゃあひょっとして夜寝るところも無かったりするの?」
「毎日探してるけど、なかなか良い家が見つからなくてね」
寝床はあるか? と尋ねる少女に思わず男は普段は口にしない過ぎた夢を語る、旅の路が己の寝床と割り切ったつもりで居たしても、時には安寧の中ひとところに留まる事も夢に見よう、それは彼の日常に失われて久しい物だ。
疲れもあった、何より少女の雰囲気が穏やかで、感じている以上に彼はリラックスしているのかもしれない、そんなあれこれもあって彼は…………
「じゃあウチにいらっしゃいますか?」
いつの間にか少女の背後に現れた男の言葉を断らずに受け入れてしまっていた。
◆◇◆◇◆
「いやぁ旅の武芸者をウチにお迎えする日が来るとは、今日の今日まで思いもしませんで」
「いえ、武芸者などと、私ごとき流浪人が名乗れたものでは無いのですが」
少女の父親李訊(リシン)と名乗った彼は昔、武芸者を夢見て励んでいた時期があるらしく、腰に剣を差す白浪に尊敬と羨望の目を向けていた。
この国、というよりもこの世界では、武芸者として武者修行の旅に出る事は男児なら一度は夢見る事なのだ、故に彼のように武芸者に寝床と食料を恵む者も少なからず存在している。
と言っても、白浪がその世話になったのは百と数年ぶりである、久方振りに甘える彼は、人の好意に触れることを嫌うように恐縮していた、李訊の娘雅玲(ヤーリン)はそんな彼を不思議そうに眺めながらいつもより具の多い粥を頬張っていた。
◆◇◆◇◆
一家団欒の風景に紛れ込んだ白浪は、なんだかんだで腹一杯ご馳走になってしまい、その礼にと雅玲の寝る部屋で彼女に本を読み聞かせていた。
「孫悟空は天帝様の言いつけを破り、バクバク、バクバクと仙桃を食べてしまいました」
「どうして、駄目だって言われたのにお猿さんは桃を食べてしまうの?」
「昔はね不老長寿なんて珍しく無かったんだ、だから自分もそうなりたいと思う者も多かったのさ」
同じ布団に入り、可愛らしい幼子に読み聞かせる本として、白浪の持ち物である西遊記は最適だった。
村の集会に向かった雅玲の両親に代わり彼女を寝かしつける彼は自身の身の上と深い関わりのある物語への質問をついつい本気で答えてしまい、彼女を混乱させるのを繰り返していた。
「さあ、もう遅い、今日のところはコレまで」
自分の言葉に首を傾げながらもうーんうーんと唸っていた雅玲の顔が眠気でトロンとしだしているのを察した白浪はパタリと本を閉じ、優しくそう言った、だが、いくら優しく言われても、納得できるわけがない、彼の読み聞かせは良いところで途切れているのだ。
「明日……また続き読んでくれる?」
そう尋ねてくる少女の潤んだ瞳に、白浪が否と言えるわけは無かった。 【私は一人でも大丈夫“だ”】(2/3)
「余録」 「首輪」 「童歌」 「短躯」 「君主」
2つある集落の出入り口、外界と村とを隔てる木の柵が唯一許す人の通り道の一つに暇な男二人のしりとりの声が響く。
片方は衛士歴10年の男世隆(シロン)、もう片方はこの村の村人歴4日目の白浪だ、雅玲の家に世話になっている彼は仕事もせずに居るわけにもいかず、こうして衛士の一人として働いていた。
「主君………………あっ」
三十回目の勝負が終わり、頭を抱える世隆、その様を微笑ましげに眺める白浪はすっかりこの村に馴染んだようだ。
彼は、それが本来は良くない事だと知りながら、今晩で読み聞かせも終わり、彼女に別れを告げられるだろうと踏んで、5日の期間延長を良しとしていた。
長い時と共に押し流された記憶が警鐘を鳴らしたとしても、旅の疲れを癒やす憩いにばかり耳を傾ける彼に、その音は聞こえやしない。
何もかもが懐かしいと心の中で感涙する彼は哀れなほどに愚かで、哀れなほどに痛ましかった。
◆◇◆◇◆
「こうして、取経の旅を終えた孫悟空はその罪を許され、仏の記別を賜り、解脱し悟りをひらきました、おしまい」
「………………」
最後の一文を読み終え、雅玲の寝顔を慈しむように眺めた後、ゆっくりと名残惜しむように白浪は布団から出ていく、コレでしばしの休息は終わりだ。
そんな時だった、別れを惜しまれでもしたら旅立てなくなると、黙って出て行こうとする彼の耳に、異常が聞こえてきたのは。
「っ!」
微かに臭う血と煙の匂い、聞こえてくるのは聞き覚えのある軍靴の音、その瞬間、男は忘れていた全てを思い出した、己が立場、己が分際を。
剣を取り、走り出す、燃えるような怒りにその身を焦がせながら。
◆◇◆◇◆
瞬く間に燃え広がる炎、そこかしこから聞こえる悲鳴と怒号に聞き覚えのある物が混じるたびに血が滲むほどに唇を噛みしめる白浪、手当たり次第に下手人達を斬り伏せていく彼の目には多くの“物”が映っていた。
今切り倒した男は右手に首を持っていた、ここ数日共に衛士として肩を並べた世隆のそれだ、知った顔、関わった人々の末路、二度と忘れまいと思っていたのに、二度と誰とも深くは関わるまいと決めたのに…………
男は自分の愚かしさに募る怒りを剣に乗せ、“この国の兵士達”を斬り伏せていく。
彼が全ての敵を始末し、村の火の手が収まったとき、狙ったように東の空が茜色に染まり出す、真っ黒だった空が赤くなる頃、ようやく赤かった村が炭の黒一色になったのだ。
家だった炭の固まりを掻き分け、死んだ目で生者を探す永遠を生きる生きた屍は、世話になった、あの家がどうにか原形をとどめてるのを見て、縋るような思いで雅玲を探す。
その奥で、無傷な雅玲を見て希望を抱くように駆け寄り…………………………そして。
呼吸がないことに気付いた。
火事場で火に囲まれれば焼かれずとも息は続かない、奇跡的に生きてる事も有ろうが、その奇跡は彼女を救いはしなかったのだろう。 【私は一人でも大丈夫“だ”】(3/3)
「私は………………私……が」
『居なければ』こうはならなかった、本の続きをねだる彼女に、続きを読み聞かせるのではなく、本を置いてその場を去るという選択肢もあった、決して白浪は雅玲のためにこの村にとどまっていたのではない。
「すまない…………」
疲れた心に心地良かったのだ、人々との交流が、それが大切な物だからこそ、自分が居てはいけないことを彼は知っている筈だったのに。
「私が弱い所為で、君から全てを奪った」
白浪は涙を流し、自分の行動を悔いる、もう何もかもが遅いと言うのに、今更のように涙を流す。
仙桃を食し、不老不死となった男白浪、彼の数百年と続く浮浪の旅には隣人などあってはいけない、往々にして為政者という物は彼の体質を羨みその秘密を探ろうとするものだからだ。
彼の始皇帝ですら目指した末に辿り付けなかった人の夢の極致、それが己が国の中にあるのだ、手を伸ばさない訳がない。
彼を孤独たらしめ、この村を焼き滅ぼしたのはそういう欲望なのだが、被害者の一人である白浪自信はそう思わない、そう思えない、自分は孤独であるべきで、そうなれず人々を傷付けたなら、それは自分の罪だと彼は言う。
だからだろう、償いをしようと彼が決めたのは。
意を決した白浪の手によって、荷物から取り出された“あるもの”が雅玲の口の中へと消えていく、それは死した彼女を生き返らせるに足る奇跡を秘めているが、それと同時に彼女に孤独の呪いを齎す物でもある。
だから。
「君の口の中には種が残っているはずだ、それを育てれば一つだけ実が生るだろう、それを好む相手に渡しなさい、君が孤独でなくなるにはそれしか方法はない」
そう、助言を残して立ち去ろうとする。
しかし、聞かせるつもりのない、その一語を死の淵より帰ってきた彼女は聞いてしまったのだ。
『ーーーーーーーーー“だ”』
彼女がその言葉の意味に気付くのはずっと先、育てた仙桃が一つきりの実をつける頃だった。 >>258
力作だああああ・・・・
とうそうの果て、『しりとり』勝負、心の隙と戦闘、『仙桃』を『好』きな相手に、残された『一語』
永遠の旅路、お題の面白さや意外性、組み合わせの面白さが表れてると思いました >>261
感想ありがとうございます、改行が多すぎると、一行が長すぎるの間で四苦八苦してたら読みにくくなってしまった気がして…………
ちゃんと読んでもらえたみたいで良かったです。 >>262
確かに文字数で言うと長いですが、読みにくいことはなかったですw
ただそれとは別に、句点の代わりに読点を使うスタイルが引っ掛かる・・・というのはあります
それ以外は読みやすいと思います >>263
ああ耳に痛いw
昔から句読点の使い方が良く分からなくて…………
勉強します。 句読点の使い方わからんってのはわりとまずいと思うけど、なんかこれはこれで古典文学みたいな独特のリズムあっていいよね >>246
使用するお題→『とうそう』『しりとり』『いちご』『すき』
【クラスメートのハヤト】(1/2)
月曜日の朝、カナミが下駄箱で上履きに履き替えていると一人の女の子が元気よく挨拶してきた。
「おはようカナちゃん!」
「あっリーちゃん!おはよう!」
彼女の名は森野リナ。幼稚園の頃からの親友でお互いにカナちゃん、リーちゃんと呼び合う仲だ。
「急に寒くなってきたよね。先月までは蒸し暑かったのに」
「それなんだよね。今日の体育は外でやるから嫌だなあ」
楽しくおしゃべりしながら階段を上って教室へ向かう中、後ろから一人の男子の声がしてきた。
「おっ、森野に八尾じゃないか。グッドモーニング!」
陽気に2人に挨拶してくるその声の主は、クラスメートの宮坂ハヤトだった。
「あっ宮坂君じゃない。おはよう!」
「オーッス!」
「ちょっと宮坂君、私は八尾じゃなくて七尾よ。いい加減わざと間違えるのやめてよね」
「えーだってお前、七尾というより八尾って感じだし」
「意味わからないよ、まったく…」
ハヤトはいつもカナミの名字である七尾を、わざと八尾と間違えて呼んでからかっている。
ちなみにカナミとは2年生の頃からずっと同じクラスだ。
カナミはよくハヤトからちょっかいをかけられているが、陽気で気さくな彼の人柄はとても好きだった。
最初の授業の初め、席替えをすることになった。アミダくじによる結果、なんとカナミはハヤトと隣でしかも一番後ろの席だった。
「お、七尾と一緒か。しばらくよろしくな!」
「うん。でもあまり教科書の忘れ物しないでよね」
「分かってるって!」
2時間目の理科の授業の中、隣からハヤトが小声で話しかけてきた。
「なあ七尾、しりとりしないか?」
「しりとり?うーん、理科って退屈だし少しならいいよ」
「よし!俺の闘争心が燃えてきたー!負けないぞ!」
「しりとりに闘争心燃やすって…」
ハヤトとのしりとりバトルが始まった。
すずめ、めだか、かたつむり、りんご、ゴリラ…と続けていく。 【クラスメートのハヤト】(2/2)
「えっとねー、しじみ!」
「み、み、みかん!あっ、しまった!」
「私の勝ちね!」
ハヤトはうっかりで自滅、カナミの勝利となった。
「今度は負けないからな」
「いつでも勝負受けるわよ」
お互いに顔を合わせ、クスクスと笑う。4時間目の授業が終わり、給食の時間となった。
クリスマスが近いのか、デザートはイチゴショートケーキで豪華なものだった。
また今日は欠席者が1人いるため、男子が数人集まり、一つ余ったケーキの争奪戦が始まった。その中にもちろんハヤトの姿もあった。
熾烈なジャンケンバトルを制したのはハヤトだった。
「ケーキいただき!」
「ハヤトのやつ、ジャンケン強いからなあ」
ケーキをゲットできてハヤトは嬉しそうに席に戻る。すると、彼は手に持っているケーキをカナミのトレイに置く。
「このケーキ、お前にあげるよ」
「えっ?」
「さっき消しゴム貸してくれたお礼さ」
「あ、ありがとう…」
掃除の時間、窓拭きをしているカナミにリナがニヤニヤしながら話しかける。
「宮坂君、もしかしてカナちゃんのことが好きなんじゃない?」
「え、リーちゃん急に何を言うの。そ、そんなことないよ…」
思わず顔を赤らめるカナミ。
放課後、運動場で他の男子と一緒にサッカーをして遊ぶハヤトの姿を少し眺めると、校門を出て家路につく。
家に着くとカナミは自分の部屋に入り、ベッドに寝転がりボーッとする。
するとコンコンとドアをノックする音がし、カナミは体を起こす。
「だーれ?」
「僕だよ、お姉ちゃん。オセロで遊ぼう!」
ドアを開けると、そこにいたのはオセロ盤を持ったケンスケだった。
弟の姿を少しジーッと見つめるとカナミはニコッと微笑み、彼をギュッと抱き締める。
「お姉ちゃん、急にどうしたの?」
「ううん、何でもないわ。それじゃあ早速遊びましょ」
「今日は負けないよ!」 >>265
それはある
>>266
今度はちょっと世界が広がる
『しりとり』で『闘争』w『イチゴ』ケーキで豪華な給食、『好き』なんじゃ? 最後に弟くん少しw
こっちのシリーズじゃないとできない話ですね >>246
お題:『とうそう』『せんとう』『しりとり』『いちご』『すき』
【信繁と津久エ門】
「隙在り!!」
打ち下ろされる刀を鉄扇でいなし、座った状態から回転する様に足を刈って転がすと、相手の両腕を膝で固定する様にして、喉元に鉄扇を突き付ける。
「……! くっ、ま、参った」
「…………奇襲をするなら、声を掛けてはダメだと思いますよ?」
組伏した側の男は、鉄扇を開くと口元を隠しながら相手の上から立ち上がった。
下茂 信繁。御留流組打ち芸の師範である。
組打ち芸とは、主に室内での戦闘を念頭に置いた武芸であり、江戸太平の世になってから発展した武術である。
その基本は“座った状態からの迎撃”であり、後の先を極めた武芸と言って良かった。
「先生!! もう一度!! もう一度だけ機会を!!」
「……武芸は一期一会、二度は有りません。そもそも、今を時めく柳生の門下たる貴方が、田舎武芸の師範でしかない私に、何をしろと言うのですか」
「何を仰る!! 確かに柳生は徳川家指南役ではありますが、昨今の者達は実戦から離れすぎ、あまつさえ型のみを重視する有様!! 決して天下一と言えるものではありません!!」
そう吠える漢は尾張 津久エ門 時貞。江戸柳生の門下生であり、次期筆頭との呼び声も高い若者であった。
「ならば、貴方がその風潮を変えて行けば良いではないですか。わざわざ、自分の様な者を担ぎ出さなくとも……別に隠す程の物でのないのですから、技の手解きくらい行いますよ?」
「確かに、柳生の剣は無形の剣。時代時代で他の流派も取り入れ進化する物です。ですが、これとそれとはまた違う!! 拙者は“柳生こそ天下無双”と言う思い上がりをこそを正したいのです!!」
津久エ門の言う事も理解はできる。確かに柳生は様々な流派の理を取り入れ、進化して来た流派であり、それ故に天下一とも成れたのだから。
そんな柳生が、「既に我が流派に並ぶものなし」と奢り、他の流派を顧み無くなれば、その進化も打ち止めとなるだろう。
彼はそれを危惧しているのだ。
信繁が「はぁ」と溜息を吐く。
懐に手を入れると、金細工で刀装を誂えた小刀を出した。
「では、津久エ門殿、『しりとり』を行いましょう」
「は? 何を」
「『しりとり』です。その『しりとり』が終わるまでに、この小刀を私から奪う事が出来れば、貴方の思惑に乗ってあげましょう」
「!! 本当ですか!?」
「………武士に二言はありませんよ?」
信繁のその言葉に、津久エ門の表情がパアッと明るくなる。
「では、始めましょうか……『犬』」
「ぬ、『ぬ』? 信繁殿!! 最初から難易度が高くは?」
「では、この話はここまでで……」
「う!! ぬ、『沼』!!」
そう言いながら、信繁の目の前に置かれた小刀に手を伸ばす津久エ門だったが、しかし、その手は簡単に弾かれてしまう。
「『鞠』」
「りぃ? り、り、り、…………」
******
徳川が天下を統一して百年が経った。
世は天下泰平、平和な時が積み重なっている。
この話は、そんな太平の世に有って、武芸者足らんとした男達の物語である。 時代劇の書き始めの様な感じになってしまいました
そして、続きをかく気は無いと言うw お題→『とうそう』『せんとう』『しりとり』『いちご』『すき』締切
【参加作品一覧】
>>253【忍者、また現る!そして決着!】
>>258【私は一人でも大丈夫“だ”】
>>266【クラスメートのハヤト】
>>269【信繁と津久エ門】 よしでは通常お題5つです
お題安価>>273-277 ☆お題→『山脈』『成長』『ホラー』『自家製野菜』『VR』から1つ以上選択
☆文字数→4レス以内に収めれば何字でも可。ただし3レス以内を目標とすること。
1レス約2000字、60行が上限。
☆締め切り→12/8の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。
【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】 ぼ、、某山脈で成長した自家製野菜から逃げ回るVRホラー・・・
前回は思ったほどカオスでもなく、それぞれ工夫があって面白かったですね
そして今回も、楽しい作品をお待ちしておりますー >>269
なるほどこれはw
『隙』あり、室内『戦闘』の武術、『一期』一会、『とうそう』あった!『しりとり』をする武芸者たち・・・
知らない単語があったり、突っ込み所があったりして楽しめましたw >>278
あと一歩で安価踏むとこやったやん……良かったな >>253
老婆くノ一ですねw
しかも、逆恨みも甚だしいと言う……
結局は自業自得ですしね
>>258
永遠と言う牢獄、そこに見つけた希望でしょうか?
それでも自分と同じ孤独は味会わせたくはないと言う葛藤が切ないですね
>>266
子供は兎に角、自分に興味をもって貰おうとしますからねw
小さな恋の物語が紡がれるかは、これからですねw
>>281
感想有難うございます
この物語はフィクションです
実在の個人、団体とは関係ありませんw >>279
使用するお題→『山脈』『成長』『ホラー』『自家製野菜』
【夢は決してあなたを裏切らない】(1/3)
シチリアでレストランを開業してから10年もの月日が経った。
しかし2年前、数キロ離れた場所に新しいレストランができて以来、ここに食事に来る客の数はめっきり減り、
今は常連客が数人ほど訪れるくらいで以前とは比べものにならないくらい閑散となってしまった。
「ライアン、今日も暇だね。もう毎日がホントに退屈…」
「新しいレストランができたんだから仕方がないよ、レイチェル。あそこは色んな国の料理を多種多様に扱えるんだ。勝てるわけがないよ」
これまでシチリアの山脈で採れた新鮮な野菜、自分達の手で育てた自家製野菜を使った瓶詰めのピクルスや、
オリジナルのスイーツなど販売したりと、あの手この手で対抗してきたのだが減った客数を取り戻すまでには至らなかった。
レイチェルも長年愛用していたガンマン衣装を全く着なくなった。決して西部劇に飽きたというわけではなく、
帽子やコート、ブーツの綻びが酷くなって人前で着れるような物ではないと判断し、今はクローゼットの中に収納、保管している状態だ。
今は店の経営状態が厳しいため、衣装の修繕費用で無駄にしたくなかったのだ。
「レイチェルがガンマン衣装着なくなってから、正直すごく寂しいよ」
「だってもう長年来ているからボロボロなんだもん。ごめんねライアン」
今のライアンとレイチェルにとっての一番の楽しみは、 立派に成長した庭の花を眺めることだった。
「美しく立派に育ったよね。見ているだけでも元気になってくるよ」
「そうね。お花さん達も雨風に負けずに頑張っているんだから、私たちも頑張らなくちゃ!」
あの星座当て勝負で楽しんだ、2人だけの秘密の雄大な丘「シャイニングスターヒル」も
ゴルフ場建設のために切り崩されてしまい、跡形もなく消えてしまった。
「時の流れって残酷なものよね…」
「受け入れることしかできないさ。だって時は止められない」
ライアンとレイチェルはもう本気でレストランを廃業しようと考えていた。
すると誰かが扉をコンコンと叩く音がしてきた。
「ん?誰かな、お客さんかな?」
ドアを開けると、そこに立っていたのは1人のメガネをかけたほっそりとした男だった。 【夢は決してあなたを裏切らない】(2/3)
「あなた、もしかしてライアン・シードルズさんですよね?」
「は、はい。そうですが…」
「やっと見つけましたよ!ずっと探してんだんですから」
「えっどういうことですか?(も、もしかして警察!?僕、何か悪いことしたのかな?)」
「あ、申し遅れました。私、ハリウッドでエージェントをやっておりますケントと申します」
「ハ、ハリウッドォ!?」
ハリウッドという言葉を聞き、ライアンは動揺を隠せない。
「ライアンさん、あなたかつてハリウッドで俳優をやっていたことがありますよね?」
「は、はい。でもほとんどエキストラでしたし、主役で出れたのもB級の一作だけでしたし…」
「その映画をですね、評論家の方々が大絶賛したのです。あなたには俳優の素質があると!是非主役で出てほしい映画があるのですよ」
「ほ、本当ですか!?」
「ライアン、すごいよ!実力を認めてくれてったことよ!この絶好のチャンス逃しちゃダメ!」
本当の夢だった俳優にまさか復帰できるチャンスが本当に来るとは。
何年修行を積んでも実力を認められず、やっと主役で出れたと思えば一作のB級映画だけ。
自分には俳優の素質、才能なんて無いと自信を喪失する日々だった。
「レイチェル、君のおかげだよ」
「えっどういうこと?」
「もし君がいなければ、僕の心は一生荒んだままだった。もしかしたら自殺していたかもしれない」
「お、落ち着いてライアン。大袈裟よ」
「僕はレイチェルの明るさ、優しさ、奔放さに本当に心を救われたし、癒された。そんな君が幸せを呼んでくれたんだ」
「ラ、ライアン…私もあなたに出会えて、そして結婚できて本当に嬉しかった。今の私があるのもライアンのおかげ」
大学を卒業時、ハリウッドに向かうライアンに最後会えないまま離れ離れになってしまい、
レイチェルも一時期心を病んでいたことがあった。
就職するも長続きせず2年で辞めてしまい、それ以来在宅勤務で食いつないでいく日々。
そんな寂しさを紛らわすためにガンマン衣装に身を包むと、自然と心が晴れ、自分に自信が出るようになった。
それから様々なトラブルに立ち向かい、住人達に愛されるようになった。
そしてライアンと再会、結婚、そしてシチリアに旅立ち現在に至る。
「レイチェル、本当にありがとう」
「ライアンも本当にありがとう!」
互いに抱き合い、嬉し涙で顔を濡らす2人だった。 【夢は決してあなたを裏切らない】(3/3)
ライアンとレイチェルはレストランの廃業手続き、荷物の整理等を終えると飛行機に乗り、シチリアを後にした。
ハリウッド、そう生まれ故郷のアメリカに戻るのだ。
「アメリカ、十数年ぶりね」
「ああ、また俳優を目指せれるとなると胸が高鳴るよ!でもシチリアを離れるとなるとやっぱり恋しくなるね」
「レストランをしてた日々もすっごく楽しかったわ。忘れられない思い出でもういっぱい!」
「またアメリカに帰ったら一緒にたくさん思い出作りしようね、レイチェル!」
「もちろんよライアン!」
アメリカに帰ってきた2人。ライアンは再びハリウッドで立派な俳優を目指し、鍛錬を積む日々が始まる。
今回、彼が主役で出る映画のジャンルはサスペンス・ホラーものだった。
ホラーものは初めてということですごく張り切っていた。
ライアンがハリウッドでの俳優業に忙しいため、レイチェルは家で一人の時が多かったが寂しくなかった。
近所付き合いも良好で、時々お馴染みのガンマン衣装に身を包んで子供達を楽しませていた。
「ライアン頑張っているかなあ」
数ヶ月後、ライアンが休みをもらい久々に家に帰ってきた。
「ライアンおかえりなさーい!」
「ただいまー!僕がいなくて寂しかったかい、可愛いガンマンちゃん!」
主演の映画は大成功を収め、ライアンは俳優として認められ軌道に乗ったところだ。
この先も映画の撮影などでスケジュールが詰まっているという。
「レイチェル、また忙しくて会えない日々が続くかもしれない。ごめんね」
「気にしないでライアン!私は強い女ガンマンよ、だって…」
「だって?」
「だってライアンがいるから強くなれる」
「僕もレイチェルがいるから強くなれる」
お互いにギュッと強く抱きしめ合うライアンとレイチェル。
そんな2人の姿をジュディは微笑ましく眺めている。
「(私もこの2人がいるからいつまでも幸せでいることができる。本当にありがとう)」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています