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使用するお題→『了解です』『侍ジャパン』『蛾』

【幸せの青い蛾?】(1/3)

夜の9時、レストランの閉店時間になった。
今日も一日の営業を終え、後片付けも済ませたライアンとレイチェルはリビングでテレビを見ながらゆっくりと寛いでいた。
ふとスポーツのチャンネルに変えてみると、侍ジャパンの優勝の話題でもちきりだった。

「日本が優勝だなんてホント予想外だよね。世界と渡り合えたってことだし」
「………」
「ん、どうしたんだいレイチェル?」

急に黙り込んでしまうレイチェルを見て心配になるライアン。

「あっ、ごめんねライアン。ちょっと「侍」って言葉に一瞬落ち着かなくなっちゃって」
「もしかしてあの時の忍者を思い出したのかい?」
「実はそうなの…」

以前、レイチェルはロールケーキ泥棒の犯人である謎の忍者を取り逃がしてしまったことがあった。
得意の銃撃が全く通用しなかったことがかなりショックだったみたいで、あれ以来休みを利用して
数十キロ離れた射撃場に行って練習することが多くなった。

「今度こそ、絶対にあの忍者を捕まえてみせるんだから!」
「(わっ瞳が炎のように燃えてる。でもそんなレイチェルもすっごく可愛い!)」
「この女ガンマン、レイチェルからは逃げられないってことを教えてあげるんだから!」
「まあ落ち着いてレイチェル。明日は水曜で定休日だからのんびり過ごそう。いつもそんなに神経尖らせてちゃ疲れるよ」
「そ、そうね。ごめんなさい、私ってすぐに熱くなっちゃう…」
「気にしないでいいよ。今日はもう寝ようか」

翌日、レイチェルは早起きしてお馴染みのガンマン衣装に着替えると、ライアンと一緒に庭の花壇に水やりをする。

「可愛いお花さんたち、みんな元気に綺麗に育ってね」

するとどこからか一匹の大きな蛾が飛んできて、チューリップの上にちょこんと止まる。

「わっ、大きな蛾!」
「しかも青い色してるね、まだ発見されていない新種かも?」
「もしかしたら青い鳥みたいに、幸せの青い蛾かしら?だったら捕まえましょ!」

しかし蛾は飛んで逃げてしまう。

「あっ待って!幸せの青い蛾ー!」

レイチェルはその青い蛾を追いかける。

「レイチェルは本当に好奇心旺盛なんだから」

そんなレイチェルを見て、ライアンは思わず苦笑いをする。