早速供養します

>>279
お題:『山脈』『成長』『ホラー』『自家製野菜』『VR』

【VRから始まる異世界生活】(1/3)


 必死の形相で、緒方 拓篤は逃げていた。木の枝をくぐり抜け、根を飛び越える。
 背後から迫り来るのは異形の怪物。後ろをチラリと確認しながら、彼は(なんでこんな事に!!)と、舌打ちをした。

 その瞬間、足元が宙を蹴る。

「が、崖ええええぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 拓篤の身体は、空を舞ったのだった。

 ******

 「『最新VRゲーム機のモニターに選ばれました』? そんな物、応募してたっけ?」

 拓篤が首を傾げる。メッセージの書かれた手紙の入った段ボールの中を見れば、それらしいヘッドギア型の機械が入っていた。

「まあいっか、ゲームは好きだし、どっかで応募してたのかもしれないし……」

 廃人とまでは行かなくとも、拓篤も無類のゲーム好きである。それに、そう言った懸賞にはとりあえず応募するタイプでもあった。

 説明書を見ると、脳波と視線、それと音声でコントロールできるシステムであるらしく、本体であるヘッドギア以外では充電用のアダプタぐらいしか入っていない。
 どうやら、ソフトはダウンロードする方式であるらしい。

「じゃあ、早速……」

 ヘッドギアの電源を立ち上げ頭にかぶる。一瞬間を空けてロゴらしきものが映ると、画面が暗くなり……

 拓篤は原生林の中にいた。

「は? え? いきなり始まったのか?」

 選択画面も何も無かった。本当に“気が付いたら”と言う感じで、彼はそこにいたのだ。

「せめてチュートリアルとか欲しかったなぁ」

 恐らくβ版のゲームでも入っていたのだろうと思った拓篤は、とりあえず自身の状況を確認する事にした。
 格好は何故か部屋で自分が着ていた服装のままだった。

(普通、初期装備とかじゃないのか?)

 どうやって自分の服をテクスチャーに取り込んだのかは分からないが、しかし、世界観に合わせたTPOと言う物もあるだろう。
 ファンタジーの世界観で普段着だとしたら興醒めも良い所である。

「もしかして、現代物? だとしても何で原生林?」

 街中と言う訳でも無く唐突な原生林。アメリカのB級ホラーでもなかなか見ない唐突さであった。