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使用するお題→『クローゼット』『クリスマス』『手入れ』

【あなたに出会えて本当によかった】(1/3)

私は名も無き女ガンマン人形。もう20年くらいも前に作られた、古いお人形よ。
私を製造した会社は既に倒産している。もう長いこと、この店に売れ残ったままでいる。

「この人形、あと1ヶ月以内に売れないともう処分するしかないな」

店長の言葉に私は焦る。処分って、まさか売れなかったらゴミとして廃棄されるとということ?
そんなの絶対に嫌、誰でもいいから私を買って。本当に誰でもいい。
そう願いつつ3週間ほどが過ぎ、クリスマスがやって来た。一人の父子が店に入ってきた。

「ライアン、欲しいおもちゃはあるか?何でも買ってあげるぞ」
「ありがとうパパ。今すぐ決めるからちょっと待ってね」
「アハハ、慌てなくていいぞ」

ライアンという名の少年が店の中を歩き回る。すると、彼の目に私が入ったのか、立ち止まりじっと私を見つめる。

「パパ、この女ガンマンの人形が欲しい!」
「よし分かった」

私は一瞬驚きを隠せなかった。まさか本当に買ってもらえるだなんて。
袋に入れられ数十分後くらい経過し、少年の家に着いたようだ。ライアンは早速私を箱から取り出す。

「カッコいいね、この人形。そうだ、名前をつけよう。うーんとね…決めた!君の名前はレイチェルだよ!」

レイチェル、すっごく良い名前ね。ずっと名前なんて無かったから、嬉しさで胸が満ち溢れてくる。

「今日から君は僕の家族だよ、レイチェル!」

私は今にも泣きそうになるくらい嬉しかった。人形である私を家族の一員として扱ってくれるなんて。
ライアンはその証として、マジックで私のブーツの裏に「RYAN」と書いてくれた。
それ以来、ライアンは友達と遊んだり、どこか旅行へ出かける時も必ず私も一緒に連れて行ってくれた。

「その女ガンマンの人形カッコいいね、ライアン」
「レイチェルっていうんだ。さすらいの女ガンマンで、旅の邪魔をする無法者を撃ち倒すんだ!」

2年が過ぎたある日、ライアンが私を持って友達の家へ向かっている時だった。

「よぉライアン、良い人形持ってるじゃねえか」
「ノ、ノーマン…!」

近所に住んでいる、ノーマンといういじめっ子とうっかり出くわしてしまった。

「そのレイチェルっていう女ガンマンの人形、俺に寄越せ!」
「絶対に嫌だ!レイチェルは僕の人形なんだから!」
「つべこべ言うんじゃねえ!」

ノーマンはライアンをドンッと思いきり突き飛ばし、彼から私を乱暴にひったくった。

「じゃあなー!」
「ま、待てノーマン!」

ちょ、ちょっと私をどこへ連れて行く気!?
放してよ、汚い乱暴者!ライアンのところに返して!お願いだから!
そのまま私はノーマンの家に連れて行かれた。