0450この名無しがすごい!
2019/12/29(日) 22:10:34.26ID:rok+j2Th使用お題→『平面』『クローゼット』『レジェンド』『クリスマス』『手入れ』
【機知に富んだ紳士サン……】(1/3)
「なっ……なんじゃこりゃー!!」
遠く北の果て、ラップランド。そこに一人の聖人がいた。
「どうしたでございますかおや、……おやー? どうしたでございますかー」
白い付けひげには威厳がなく、中肉中背……むしろ痩せ気味のシルエットも頼りない。
しかしながらこの男。
「どうしたでございますかー、サンタクロース様!」
この男こそ、言わずと知れたクリスマスのレジェンド、サンタクロースその人である。
*
それはクリスマスを控えたある日のこと。例の赤い服の様子を見るため、男はクローゼットに踏み込んだ。そこで男は見てしまった。
「こりゃ手入れどころではない。新調するしか……」
「こっ、これはひどうございますね」
地球温暖化の影響は、この極寒の地にまで及んでいたのだ。
「俺の服が……どうしてこんなことに……」
「これも、それも、あれも、カビだらけでございますよ」
一年近く閉め切られていたその場所は、カビのパラダイスと化していた。
それなりに広さのある空間が胞子に沈む、恐るべき状況。
想像を絶する状況に、男はしばらく立ち尽くしていたが、やがておもむろに口を開いた。
「これは……これは正にヘーケの――」
「あー! こっちには黒いゴ某の死骸が落ちてるでございますよ……。それと床に穴が……これはシロアリではございませんか……?」
北国の冬は暗く、深い。底の見えない極夜の闇が、彼らの眼前に広がっていた。