>>37
お題:『ジャム』『夜空』『ダウンジャケット』『変装』

――<最低で、ごく普通で、いちごジャム色の夜>


 神様を殺す方法を考えていたら、いつの間にか空は夜に覆われていた。

「……寒い、な」

 世間は早くも十一月だ。そりゃあ制服にセーター一枚で半日も外に突っ立っていれば体も冷える。
 そろそろ風邪を引く頃合いかもしれない、と思って呟いた独り言には、驚いたことに返事があった。

「そりゃそうだろ」
「うわっ!」

 慌てて振り向く。
 後ろに立っていたのは、誰あろう、幼馴染のクラスメイトだった。クラスメイトの後藤祐也だった。
 夜道で不審者に後ろに立たれていれば通報ものだが、この場合はどうするべきか少し迷う。

 不審と言えば、不審だし。

「びっくりした。何でいるの。ずっといたの?」
「五分ぐらい前からかな」
「短いようで長い……結構普通に怖い……」

 天下の女子高生がドン引きで怯えた様子を見せているのに、クラスメイトの後藤は慌てる様子も、
ぐふふと興奮して襲い掛かってくる様子もなかった。EDかもしれない。
 まぁ、違うのは知っているんだけど。

 後藤とわたしはセックスまではした仲で、一緒に色んな楽しいことをした仲で、そしてもう一生そういうことはしな

いんだろうな、とお互いに思う経験をした仲だった。かつては、彼氏の祐也だった。
 今は違う。クラスメイトの、後藤祐也だ。

 まぁ後藤だったら襲われても後藤のおばさんに泣きついて慰謝料をせびれば元は取れるだろう、と適当に計算し、わ

たしは昔馴染みの不審者に対する警戒をやめた。得にならないことはしない。コストパフォーマンスこそがすべて。今

時の若者ってやつだ。