>>518
使用するお題→『お酒』『カマキリ』『みかん』

【酔っ払ってしまった弟】(1/3)

冬休みが終わる3日ほど前のことだった。
カナミは宿題である計算ドリルを終わらせようと頑張っていた。

「あと少しで宿題全部終わる、頑張らなくちゃ…!」

正午、父が早く仕事を終えて家に帰ってきた。

「ただいまー!」
「お帰りなさい、あなた。早いけどビールでも飲む?」
「ああ。仕事もなんとか一段落ついて安心したから、グイッと一杯やりたいね」

スーツから部屋着に着替えた父は冷蔵庫からビールを取り出し、グラスに注いでいると
突然プルルルとスマホが鳴り出した。

「はい、もしもし。七尾です」

会社の同僚からの電話のようで、父はそのまま食卓を離れてリビングの方へと向かった。
その間、友達の家に遊びに行っていたケンスケが家に帰ってきた。

「ただいまー!ふぅ、喉が乾いて何か飲みたいな」

食卓に入ると、グラスに注がれたビールに目が入る。

「オレンジジュースだ!お母さんが入れてくれたのかな」

ビールをオレンジジュースと勘違いしたケンスケは、それを一気に飲み干してしまった。

「に、苦ッ!!オレンジジュースってこんなに苦かったっけ?」

その瞬間、頭がフラッとなりケンスケはそのままバタッと倒れこんでしまった。

「やれやれ長電話になってしまった…ってケンスケ!?」

リビングから食卓に戻ってきた父は、倒れているケンスケを発見してビックリした。
父の大きな声に、母だけでなく宿題に集中していたカナミも食卓の方に駆け込んできた。

「ま、まさかビールをオレンジジュースと間違えて飲んでしまったのか?放置していた俺のせいだ…」
「あ、あなた落ち着いて。とりあえず目を覚ますまで待ちましょう」
「ケンスケ、大丈夫なの?ケンスケ?」

するとケンスケが徐々にだが目を覚ましてきた。

「う、う、うぅ…」
「ケンスケ!大丈夫なの!?」

眠たいのか目が虚ろになっているケンスケ。ふと母の方に目を向けたその時…。

「うわああデッカいカマキリだー!食べられるー!」

緑の服を着ている母が巨大なカマキリに見えてしまったようだ。

「ケンスケ、アルコールのせいで完全に酔っちゃってるわね」