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お題:書き出し『「やめてくれ!」』+『タイムアタック』『会場』『四次元』『ダークホース』

【アムネジア】(1/2)
「やめてくれ!」

 そんな声が響く。

(ここに来てそんな弱音を吐く位なら、最初から参加しなければいいのに)

 高畑 瑞穂はそう思う。ここに居る参加者は大なり小なり自分の意志でこのゲームをしているはずだ。
 にも拘らず、今さらそんな事を言い始めるなんて認識が甘すぎると言う物だろう。
 果たして、それが“神”によって起こされたデスゲームだったと知らなかったとしてもだ。

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 会場に集まった参加者の目はギラギラと輝き、自らの欲望を隠そうともして居なかった。そこに居るの者達はネットで告知された、あるゲームに参加する為にこの場に来ていたからだ。

 賞金1千億。

 主催者を名乗る者から提示された金額は、一生遊んだとしても使いきれない額であり、ここに集まる者達の欲を大いに刺激する物だった。
 瑞穂は、そんな大人達の様子を見ながら溜息を吐く。
 これが、そんな生易しいモノでない事を良く知っていたからだ。

【次元ゲイム】

 告知されたタイトルは、そんな物だったと思う。思うとしているのは瑞穂自身もそのタイトルが既にうろ覚えに成って居るからである。
 それでも彼女が自身を見失わずに済んでいるのは、全ての事柄を記録として残しているからと、彼女にはやり遂げなくてはならない信念があるからに他ならなかった。

 会場に入った参加者は、一様に驚きの表情を見せた。外見は普通のオフィスビルに思えていたにも拘らず、中に入ってみれば真っ白な天井と安っぽい床の、しかし、見渡す限り果てしの無い空間だったからだ。

 瑞穂が驚かなかったのは単純にその事を知っていたからである。

 会場にすべての参加者が入ると、空中にある人物が現れた。老人にも子供にも、男性にも女性にも見える不思議な人物だった。