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使用するお題→『改造』『ティーカップ』『ハゲ』『ハーディー・ガーディー(という楽器)』

【女ガンマンはただ旅を続ける】(1/3)

岩石やサボテンしかない広大な荒野の中を、黒く大きな馬に跨って颯爽と駆け抜ける一人の女がいた。
彼女の名はシンディ、さすらいの旅を続ける女ガンマンだ。

「そろそろ町が見えてもおかしくないんだけど…」

今走っている荒野はとても蒸し暑い。近くに川が流れていたらそこで休憩したいところだが、それもない。
つばの広いウエスタンハットを目深に被るも、太陽の眩しく熱い光が照りつけてくる。

「ヒヒーン!」

シンディを乗せて走っていた黒い馬が足を止める。

「サンセット、どうしたの?」

馬の名はサンセット。シンディの愛馬にして、彼女の最高の旅のパートナーだ。ちなみに性別はメス。
長い時間走り続けていて疲れてしまったのだろうか、無理もない。しかし周りに何もない荒野のど真ん中に止まってしまってもどうしようもない。

「サンセット、お願いだから次の町まで頑張って。美味しいニンジンやリンゴ買ってあげるから」

しかしサンセットが止まったのは疲れたといった理由ではないようだ。
彼女の視線の向こうには、地面に落ちて苦しそうにしている鳥の雛がいた。巣から落ちてしまった上に迷子になってしまったのだろうか。
すぐにシンディはサンセットの背中から降りて雛のところに駆け寄る。

「可哀想に…」

すぐに太陽の熱い光を遮られるよう、スカーフで雛の全身を覆う。
弱肉強食の自然界に人間が干渉するのは決して良いことではないが、シンディは雛を見捨てることができなかった。

「何の鳥の雛かしら?」

すると近くの断崖の方からピーピーと可愛らしい鳴き声が聞こえてくる。上を向いてみると、そこには鳥の巣があった。

「あそこの巣から落ちたのね。すぐに戻してあげる」

シンディは自力で断崖をよじ登る。巣は大体地上から30メートル上のところに位置していた。

「安全なお家までもう少し…!」

なんとか巣まで辿り着くことができ、雛をスカーフから出して巣に戻す。

「もう大丈夫よ。巣から落ちないように気をつけてね」

地上に下り、雛に向かって手を振るとシンディはまたサンセットの背中に跨り、荒野の中を走り出す。
再び走り出して1時間ほど経っただろうか、町が見えてきた。

「サンセット、町が見えてきたわよ!」

サンセットもヒヒーンと嬉しそうに鳴く。町につくとシンディはサンセットに冷たい水を与え休憩させ、店に立ち寄る。
食糧やサンセットの餌であるニンジンやリンゴの調達を済ませると、バーの中に入り、自分も休憩する。