>>658
使用するお題→『靴紐』『改造』『ティーカップ』

【狂気の爆走スクーター女】(1/3)

ある土曜の朝7時。ジリジリと鳴る目覚まし時計の音に、カナミはフワァーッと大きな欠伸と共に起床する。
パジャマから普段着に着替え、1階に下りて食卓に来るとケンスケが既にトーストを頬張っていたところだった。

「お姉ちゃん、おはよう!」
「おはようケンスケ」

カナミとケンスケは今日、一緒に近所のショッピングセンターにある映画館へ一緒に映画を見に行く約束をしていたのだ。

「今日は目覚まし時計ちゃんと鳴ったから、寝坊せずに起きれたわよ。もう同じ失敗は繰り返さない」

以前、カナミは限定チョコタルトを買いに行く約束をしていたのに、目覚まし時計が壊れていたせいで寝坊してしまったことがあったのだ。
まあ何とか喫茶店の開店時間までには間に合い、無事に購入することはできたが(※>>148【弟とチョコタルトを守れ!】を参照)
机に座り、カナミがコップに入った牛乳を飲んでいると、母が皿洗いをしながら言った。

「あっカナミ、あなたのスリッポン汚れてたから今朝洗って今乾かしているところなの。悪いけど今日は別の靴で出かけてね」

母の言葉に、カナミは思わず口の中の牛乳を噴き出してしまいそうになる。

「えー!別の靴ってスニーカーしかないよ!それ履いて行ってっていうこと?」
「そういうこと。我慢して履いてちょうだい」

カナミはスニーカーを履くのが嫌いだ。靴紐が解けたりすると、その度に結んで直さないといけなくて面倒だから嫌なのだ。
朝食を終えて歯磨きも済ませ、ハァと溜め息をつきながらスニーカーに足を入れる。

「お姉ちゃん、そんなに落ち込まないで。今日は思いきり映画を楽しもう!」
「そ、そうよね。たかがスニーカーくらいでイライラしちゃダメよね」

行ってきまーす!と元気な挨拶をすると、カナミとケンスケは映画館へと向かう。
しかし靴紐が途中で解けたりしないかカナミは心配になり、時々足下をチラチラと見る。
30分後、ショッピングセンターの最上階にある映画館に到着した。

「お姉ちゃんと一緒に映画を観れるなんてもう最高ッ!!」
「ウフフ、それはこっちのセリフよケンスケ」

映画が終わり、ショッピングセンターの中を歩いている時だった。

「あっ宮坂君!」
「おっ七尾じゃないか!」

偶然にもクラスメートのハヤトと会ったのだ(※>>266【クラスメートのハヤト】を参照)

「こんな所で会うとは奇遇だな」
「弟と一緒に映画を観に来てたの」
「どうも初めまして。僕…」
「ケンスケ君だろ?」
「えっ、どうして弟の名前を知ってるの?初対面なのに」
「お前、よく弟の話してるじゃん。名前なら何回も聞いてるよ」
「そ、そうだったんだ。エヘヘ…」
「七尾、お前って面白いよな」