>>658
スレ5→743、スレ6→868の続編です

使用お題→『靴紐』『改造』『ティーカップ』『ハゲ』『ハーディー・ガーディー(という楽器)』

【砂漠の休日】(1/2)

 キリンギガスの襲撃を退けたギガスウォンバット。
 その後、エヌエックス炉の暴走……オーバードライブ現象を再現するための実験が行われた。
 最も優秀なパイロットを集めて実験は繰り返されたが、ついにその現象が再現されることはなかった。
 そして。

「改造ねぇ」
「ああ。研究者の人らが言うには、キリンギガスのエヌエックス炉が特別なんじゃないかって」
 地下にある格納庫。二人の男が話している。
「まぁな。そりゃ分かりやすい話だが、俺は違うと思うんだがなぁ」
 一人はスキンヘッド……有り体に言えばハゲ頭の中年男性。
「そう……かな。うん。おっさんもそう思うよな」
 もう一人は少年。一見すると、小柄で頼りない印象だ。
「ああ。いや、あれが特別なのは確かだと思うが、だからって、こいつを改造してどうするんだ? これだって最新型だろ。それを都合良くなぁ」
「世代も技術も大差ないって言ってた。あっちは出力優先の設計になってるって」
「出力優先ねぇ……気に入らねーな……」
 会話が途切れる。そこへタイミング良く、女の声が加わる。
「お兄さんたち、お茶でもいかが?」
 すらりとした若い女だ。よく通る声が、格納庫の中で反響する。
「頼んでねーぞ」
「あらー? あたしはそっちの子に持ってきたんですけどー? 飲みたくないなら、どうぞ、ご勝手に」
 彼女が持つトレイには、ティーカップが三つ並んでいる。
「ありがとう」
「ほらほらー。若い子は素直よねー」
「ちっ。なんの用だ」
 そう言いながらも、ティーカップを受け取る。
「だからさー、お茶を持ってきただけだって。どうせ暇なんでしょ」
 格納庫の中に、他に人影はない。黒いギガマウントが三人を見下ろしている。
「今はな。ここしばらくひどかったろ。次は何をやらされるのやら」
「やらされてたのは、あなたじゃないけどね」
「違いねぇ。ま、何もないならそれでいい」
 カップを空にした三人は、連れ立ってその場を後にする。出入り口まで来た時。
「ん? おい小僧、靴ひもくらいしっかり結べや」
 少年の靴のひもがほどけていた。
「ああ、ちょっと待って」
「ここってあんまり明るくないけど、よく気が付くわね」
「不器用なやつだな。ちょっと貸せ」
「……父親じゃないんだから……それはどうなの……?」