>>688
使用お題→『世界規模』『ブルーベリー』『サムギョプサル』

【 代替案】

 葡萄といえばワインの原材料であることは言わずと知れた事実である。
そんな葡萄が穫れなかったら何が起きるだろうか?
 その年代、地球規模で葡萄の凶作が起こった。
葡萄の生産量のうち大きな割合を占めるイタリアやフランスは経済に大打撃を受けた。
主要な輸出品であるワインを十分な量作ることができなかったからだ。
ワインが作れないと困るのはワイン生産国だけだろうか? 
そんな事は無い。
今回の話は、地中海地方から東に一万キロメートル程移動した国の話である。

「あの、ワインはないんですか?」
「すいません。只今品切れ中でして.......」
「ワインと一緒に食べるのを楽しみにしてたのに」
「本当に申し訳ありません」
「ごめんなさい、今日はもう帰らせてもらいます。しばらくしてワインが入荷したかなって頃にまた来ますね」
「本日はまことに申し訳ありませんでした。またのご来店をお待ちしております」 
 空前の韓国ブームが起きた日本では、ここ数年のうちで韓国料理店の店舗数がうなぎ登りで増加した。
現在の店舗数は五年前の百倍とも言われている。
そんな店々で提供されている韓国料理の中で一番の人気を誇るのはサムギョプサル。
どこのお店の看板にも「삼겹쌀」の文字が書かれていると言っても過言ではない。
ワインはそんなサムギョプサルと相性抜群の飲み物だ。
サムギョプサルを食べに店を訪れる客の多くが合わせて注文する。
近頃の葡萄の凶作の影響でワインが入荷できなくなり困っている店は少なくない。
そんな中で声をあげたのはとあるブルーベリー農家だった。
「葡萄の代わりにブルーベリーでワインを作れば良くない?」
この農家は粒の大きさなどの関係で出荷できなくなったブルーベリーの利用法として、以前からブルーベリーワインを作っていた。
しかし知名度はあまり高くなかった。
ブルーベリーワインも葡萄から作られるワインと同様に甘味と酸味のバランスがよい。
ブルーベリーワインには葡萄ワインとは違った味わいもある。
今、このワイン不足に便乗してブルーベリーワインを大々的に売り出せば一儲けできるのではないか?
そう考え通常業務である、ブルーベリーの実の出荷と並行して、ブルーベリーワインの本格的な製造を始めた。

 結果としてその農家の試みは上手くいった。
ワインを入荷できていない飲食店からの注文が殺到し、多大な利益をあげた。
今まで行ってきたブルーベリーの実の出荷で得られた利益よりも、ブルーベリーワインの出荷で得られる利益の方が上回った。
葡萄ワインの代わりにブルーベリーワインを使う飲食店が増えるにつれ、日本国内では徐々に葡萄から作られるワインに代わってブルーベリーワインが台頭するようになった。
その現象は瞬く間に世界へも広がった。
日本国内でブルーベリーワインが利用され始めてものの数年で、ワインの原材料としてブルーベリーが最も一般的なものとなった。
ブルーベリーワインの普及は、世界的なワイン不足から起こる弊害の解消へと繋がったのだ。

 その頃、以前のワイン生産国であったイタリアやフランスといった国は経済への大打撃が止まらずにいた。
ブルーベリーワインが主流になった頃には葡萄の凶作は解消されていた。
しかし葡萄が穫れるようになっても、またワインが作れるようになっても、今までのようには葡萄から作られるワインが売れない。
ブルーベリーワインの普及は世界的なワイン不足を解消したという点で素晴らしい功績を残した。
その一方で、以前の主なワイン生産国の経済に大打撃を与えた。
物事には二面性がある。
今回のできごとはその事実をよく表しているのではないだろうか。