>>688

使用お題→『精神異性化』『世界規模』『ブルーベリー』『枯れ葉』

【「日本の真島瞬」と「この世界のロザリア」】(1/4)

「俺は男だぁーーーーーー!!!」

 何やら懐かしい言葉が聞こえてきた、街中を駆ける少女と緩みきった顔で少女を追いかける男、さて、明らかに少女は助けを求めている、しつこい男に付きまとわれているようだ、

 しかし、ここでサッと助けに入れる人間はそう居ない、大抵は奇異な光景に目を奪われたまま呆然と立ち尽くすか咄嗟に走り出せずに見送ってしまうのが精々、

 現実にヒーローなど居ないのだ、かく言う俺もその一人だった、愛剣の研磨が済みほくほく顔で鍛冶屋から出てきた一剣士が御伽噺のヒーローになれる訳が無い……………無いはずだ……………………

 それなのに、

 腰の剣に手をかけた物の、走り出せない俺に少女が投げかけた恨みがましい視線が妙に頭から離れなかった。

◆◆◆

 気付けば路地裏に立っていた、人気が無く助けを呼んでも誰も来ないような、そんな場所だ、響き渡る悲鳴に背筋が凍る、震える足はいつの間にか走るのをやめていた、

 恐る恐る剣を手に掛け、角に隠れて様子を窺う……間もなく俺はすぐさま飛び出した!

「たたた助けてぇ〜!」

 我ながらに素晴らしいと褒め称えたくなった、スルリと音もなく抜き払った剣が鮮やかな銀光を放ち、踵を天に向けて真っ直ぐと頭よりも高く上げていた“少女”の首元にピトリと触れた、

 血も出ないくらいの力加減で肌を押す刃の感覚に驚いた少女はひっくり返って強く頭を打った、

 お礼も言わず、謝りもせずに悲鳴を上げて去っていく男には一瞥もくれず俺は気絶した少女を見下ろしていた。

「どうすんだコレ」

 少女の真意は分からないが、人気の無い路地裏に逃げなければ反撃できない理由なんて不穏な物しか思い浮かばない……………………

「でも放っとけねーしなぁ」

 いつもの事ながら俺の運勢は今日も最悪だ。

◆◆◆

 見慣れない旅の男が気絶した可憐な少女を背負って歩く、なんて怪しさMAXな姿は見せられない、何度経験しても街から追い出される時の惨めさは慣れる気がしない、

 殆どの場合で俺に落ち度が無いのだから尚更だ、運も落ち度のうちと言われれば黙るしか無いが………………

 何にしたって追い出されるのは気分が悪い、出来るだけ穏便に済ませたいのが、日本生まれ日本育ち特有の日和った小市民心というものだ。