>>688
それでは遅くなりましたが、供養枠で失礼します

使用お題→『精神異性化』『世界規模』『ブルーベリー』『サムギョプサル』『枯れ葉』

【魔法少女戰域】(1/3)

 その日、世界規模で発生した災禍的暴風《パンドラ・ストーム》。
 昨日までの現実は失われ、私たちの日常は崩壊した。

 *

 そんな世界の、とある地方都市。
「あっ、いたいた。おーい。やほー! ネージュってば、相変わらず白いねぇ」
 名前を呼ばれて、私は顔を上げる。広場の向こうから走ってくる、青いチャイナドレスの少女。
「藍莓(ランメイ)、おひさだね。そう言う君だって、相変わらずじゃない」
 私の前で、その薄い胸を張って立つ彼女は、しかし、自信満々に言い放つ。
「ふっふっふー。甘い、甘いよ! 甘過ぎる! やっぱりネージュってば、お砂糖で出来てるんだー!」
 そう言って、私に抱き付いてくる。
「ちょっ、やっ、やめてよ! はぅ……みんな見てるよー」
 広場には、これから起きることに備えているのだろう、私たちの他にも、多くの女の子たちが集まっている。
「やだもーん、やめない! お砂糖に、スパイスに、いいものぜーんぶ!」
 それはごちゃ混ぜの女の子。
 私は恥ずかしくて、視線だけでも空へと逃がす。よく晴れて気持ちのいい天気。明るい太陽に白い雲。
「……『いい天気だな』って思ったでしょ。ほんと、いい天気だよねぇ」
 私に抱き付いたまま、ぽつりと。
「どしたの?」
「ううん、なんでもない。ただ、こんな天気が、いつまでも続けばいいのにな、ってね」
「藍莓……」
 その時、広場の外で悲鳴が上がる。それから、警報が鳴り始める。
「来た来た」
 そう言ってからやっと、彼女は私を開放する。
 明るかった日差しが、何か不吉なものに遮られる。警報は鳴り続けている。騒ぎはどんどん大きくなる。
 やがて。
「……何度見ても、でっかいねぇ」
「うん」
 そう短く返事をして、私はそれを見上げる。
 暴食大鼠《グラトニー・ラット》。
 ただのネズミではない。巨大なモンスター。その大きさ、何かが混ざった異様な姿に、広場の女の子たちにも緊張が走る。
「だけど今回も楽勝でしょ。ネージュは大丈夫?」
「うん。……藍莓ってば、まだ覚えてるの? あれは最初だけだから!」
 初めて参加した時は、気持ち悪くなって……吐いてしまったのだ。
「ごめんごめん。ほら、もう飛び出してるのがいる。私たちも行くよ!」
「うん!」

 日常が崩壊した後に、待っていたのは戦いの日々。
 今日の現実は、狂った怪物。
 明日の現実は、分からない。
 そんな世界で。

 私たちは、魔法。なんだってできる、無敵の力。
 私たちは、少女。いいものだけで出来ていて、悪いやつらをやっつける。
 待っていて。

 私たちは、魔法少女。