>>738
使用するお題→『駅』『シャブ』『生誕』『バナナ』

【売人を懲らしめろ!】(1/3)

雪がしんしんと降る土曜の朝、ナツミは駅前で親友が来るのを待っていた。
今日は一緒に電車で都市部で開催されているアニメ展に行く約束をしているのだ。
もちろん、魔法少女にいつでも変身できるペンダントも一緒だ。

「ユカリンったら遅いなあ。もう…」

腕時計を見ると、待ち合わせの時間である9時を既に15分も過ぎている。そして30分になった時…。

「ナツミーン!遅れてごめーん!」
「もうユカリン、30分遅刻よ!本当に時間にルーズなんだから…」
「エヘヘ、ごめんごめん!」

彼女の名は江本ユカリ。ナツミの親友であるが、とにかく時間を守らない困り者で、学校では遅刻常習犯として有名だ。

「ねえナツミン、ここ最近シャブで逮捕された人多くない?」
「シャブ?ああ覚醒剤のことね。本当に物騒で怖くてたまらないわ」
「別のクラスの子もそれで捕まったって聞いたよ」

数ヶ月ほど前から、ナツミの住んでいる町では薬物乱用で逮捕される人が続出している。

「(何か怪しい臭いがする…)」

夕方、アニメ展を大いに楽しみ、ユカリと別れて家路についている時だった。
2人のグラサンをかけ、グレーの帽子にスーツを身に包んだ男が走っていく姿を見かける。
あまりに怪しすぎる。ナツミはそう感じ、急いで後を追いかける。
追いかけたその先には小さなビルがあり、男らは何やら暗号のようなものを呟くとドアを開けて中に入っていった。
ナツミはドアを開けて中に入ろうとするが、固く頑丈に施錠されており開けることができない。

「こうなったら…!」

魔法少女に変身してそのパワーでドアをブチ破ろうと考えるが、それでは余計に目立って気付かれるかもしれない。
とりあえず変身するのをやめ、今日は一旦退くことに決めた。

「必ず手掛かりを掴んでみせる!この魔法少女、ナツミに不可能はないんだから!」

それから一週間が経ち、学校からの帰り道のことだ。またあの男らが走っていくのを見かけ、ナツミは急いで物陰に隠れて魔法少女に変身する。

「待ちなさーい!」
「な、何だ!?」

男らが振り返ると、空からナツミが勢いよくこちらに目掛けてキックしてきた。

「あ、危ねえな!…ってお前は魔法少女のナツミ!!」
「あら、私の名前を知っているということはあんた達モンスターね!」
「フッ、バレちゃ仕方がねえな!」

男らは人間の姿から、牛のような角を生やした赤い体のモンスターに変身した。

「あの怪しげなビルの中に入っていくのを見たけど、一体何をしているのかしら?」
「秘密にしても意味がないから、せっかくだから全て話してやる」
「俺たちゃ、このシャブをボスに高値で売りさばいているんだ!」

モンスターは、大きなトランクケースに入った大量の覚醒剤をナツミに見せる。

「最低ね。そのボスという奴を捕まえる前に、まずあんた達を始末するのが先ね」