0768この名無しがすごい!
2020/02/23(日) 21:57:03.02ID:7me6qDJaお題:『駅』『シャブ』『方程式もの』『生誕』『バナナ』
【クソッタレ共の賛歌】(1/3)
その事故の原因が何だったのか? それは分かりはしなかったが、21番ステーションから出発した宇宙船『ガニメデ』は、その航路の途中で突然の制御不能状態に陥った。
乗員であったストライク・ラッキー、マルボロマン・レッド、スター・セブン等の必死の操作によって、暴走状態からは回復したものの、そのメインエンジンは停止し、サブエンジンでの航行を余儀なくされてしまっていた。
「どうだ? ラッキー」
「切り詰めてギリギリですね、下手すりゃOUTです」
スター・セブンの問い掛けに、コンソールを叩いていたストライク・ラッキーが、ずり落ちかけたメガネを直しながらそう言った。
「チッ、マジかよ」
サラサラとした金髪をガシガシと掻きながらセブンが溜息を吐く。彼らの目的地である42番ステーションは、プルトー近くの辺境ステーションであり、その間に有用なステーションも小惑星も存在しない。
その為、42番ステーションに到着するまで、メインエンジンの修理はおろか、物資の補給も出来ないのである。
多少の余裕は有るとは言え、サブエンジンの出力ではメインエンジン程の速度は出せない。
その為、彼等の船に積んである水や食料と言った物は、計算上ギリギリと成って居た。
「まぁ、そう悲嘆しないでくださいよセブン。何事も無けりゃ、着けなくはないんですから」
「おい馬鹿、止めろ。そりゃフラグだ」
「え?」
ラッキーがセブンにそう聞き返したその時であった。
「おい!! 止めろ!! 手を離せ!! このウドの大木!!」
「喧しいぞ!! このクソガキ!! 外に捨てられないだけましと思いやがれ!!」
操縦席の扉の外からけたたましい言い合いの声が聞こえて来た。
その内の片方は仲間であるマルボロマン・レッドの声で間違いなかったのだが……
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「密航者、ですか……」
「だから言っただろ? 『そりゃフラグだ』ってよ」
「僕のせいですか?」
責める様な視線のセブンに、ラッキーは眼鏡の奥の瞳を嫌そうに歪めた。
そんな二人にレッドが溜息を吐く。
「変な所で揉めるなよ、問題はコイツをどうするかって話だろ?」
「コイツ言うな!! オレにはバット・ゴールデンって立派な名前が有るんだからな!!」
「黙れよ小僧、手前ぇはただの密航者だ」
睨みを利かせるレッドにバットが歯を剥く。
「はぁ、確かにな。問題はこっちの方か」
「厄介ですね、計算はやり直しますが、でも、これで食料が足りないってのは決定事項です」
溜息交じりのラッキーの言葉に反応したのはレッドだった。彼は人一倍立派な体格をしている為、二人よりも食事の量も多い。
そんな彼が食事量を減らすと言う事は、本人と彼の筋肉にとっては死活問題だった。
「そりゃマジか!? やっぱり、見つけた時、外に放り出しゃ良かった!!」
「ちょっと待てよ!! そんな事すりゃ、お前等、国際宇宙法違反だぞ!!」
「密航者が言うな!!」