安価・お題で短編小説を書こう!7
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安価お題で短編を書くスレです。
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安価・お題で短編小説を書こう!
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安価・お題で短編小説を書こう!2
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安価・お題で短編小説を書こう!5
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安価・お題で短編小説を書こう!6
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1557234006/ 【魔王アンジェリカの色々な冒険】(2/4)
このままだと、いつまで経っても話が進まないと思ったアンジェリカの側近である竜人族の少女、エミリアがそう訊ねる。
その目には敵対しているはずの魔族とは思えない程の尊敬の念が込められていた。
それは、タカシは、ある意味でこの小国の救世主だからだった。
この魔王アンジェリカの国は、下手な魔族領よりも小さな小国であり、その国力は、同じく魔王であるスゲエデ・プターの国とは比べ物にならない。
その為、人間領に攻め入ると言うスゲエデ・プター国の方針に対し、意見を述べる事も中立を宣言する事も出来なかったのだ。
そんな訳で、人間領との境界にある彼女の国は最前線として扱われ、国力は疲弊する一方だったのである。
そんな時、この国を訪れたのが勇者であるタカシだった。
当初は、何の躊躇いもなくアンジェリカの城に攻め入ったタカシだったが、彼の隔絶した戦闘力を前に早々に白旗を掲げた彼女に対し、彼は、それ以上の戦闘を行う事は無かった。
それどころか、この国の窮状を知り、あるアイデアを出したのである。
それが、『魔王城のダンジョン化』だった。
魔王スゲエデ・プターの手前、アンジェリカも交戦をしていると言う建前が必要となる。だが、戦争等と言う物を繰り返していては国力は低下する一方なのだ。
そもそも、魔物の数が増え過ぎたが為に土地が無くなり、その為に人間領を攻めようと言うのは、スゲエデ・プターの一方的な理由である。
確かに、アンジェリカの国でも、魔物の増加はあるが、しかし、むしろ兵力増強の為と押し付けられた魔族兵の方がアンジェリ達にとっては頭痛の種だった。
荒くれ者の兵士による治安の低下や、彼等に掛かる維持費による国庫の消費等だ。
ちなみに、そんな魔族兵は、悪名高き勇者タカシが攻め入ったとたんに、この国を放棄して逃げ去っている。
アンジェリカ達が殆ど戦闘も行わず白旗を上げたのにはそんな理由も有った。
『土地が足りないなら、ダンジョンを創ればいいじゃない!!』
そんな事を言い出したタカシに、当初アンジェリカは目を点にした。『ダンジョンって何ぞや』と。
そう、この世界には、ダンジョンと言う概念が無かったのだ。
確かに古代の遺跡などは存在する。しかし、タカシが想像する様な“ダンジョン”と言う物はこの世界に存在しなかったのだ。
平面的な土地が足りないなら立体的に土地を活用すればよい。タカシの考えは高層ビルや地下都市のそれであり、いわゆる、ゲームでおなじみのダンジョンのソレである。
そうと決まれば、話は早かった。
タカシは、『ドリルランス』や『爆砕岩斬破』等の必殺技、『アースウォール』や『状態保存』等の魔法を駆使し、元の姿で顕現させたクラーケンの力も借りて、あっという間に魔王城を地上111階、地下666階、計777階のダンジョンにリフォームしてしまったのだ。
普通の城だったアンジェリカの王城をオドロオドロしい外見に変えた事については、「俺、元美術部だから!!」と、意味不明の理由をあげていたが、彼の中で“ダンジョンの魔王城”とはこうあるべきと言う何らかの指標があった模様である。
そんな訳で、新生アンジェリカ城こと廃棄城は、魔王軍の兵士を押し込めつつ、人間を迎撃する為の施設として完成したのだった。
こうして、城が出来上がった当初こそ、本当にそんなに上手く行くのかと不安に思っていたアンジェリカ達であった。
が、しかし、タカシが子飼いの隠密獣人集団「オボロ」を駆使し、噂をばらまいたおかげで、人間達は、この城だけに集中する事と成り、彼女の国の村々の被害は抑えられるようになった。
それどころか、魔王軍の方にも、「人間戦力を一点に集める事で迎撃がしやすくなります」と言う言い訳で、魔王軍をダンジョン内に閉じ込める事に成功したのである。
そして、副次効果として、城下町に人が集まり、そこで宿屋や武器、防具、ポーション類を買う事での経済効果まで表れる様になったのだ。 【魔王アンジェリカの色々な冒険】(3/4)
当然だが、アンジェリカの城の者達は、タカシに感謝する様に成って居た。それは、エミリアとて同じ事である。
そんなエミリアの声を聞き、タカシはニンマリと笑いながら言った。
「ああ、前に約束してた“おでん”を御馳走しようと思ってね」
「なるほ「本当ですか!!」ど」
納得したと言うエミリアの言葉に、被せるようにアンジェリカが目を輝かせながらそう言う。
そこに、魔王の尊厳などどこにもなかった。
******
アンジェリカの私室。そのコタツの上には、土鍋とそれに入ったおでんがクツクツと美味しそうな香りをあげている。
先程まで豪奢なドレス姿だったアンジェリカは、今はフレアスカートとセーターと言う姿で、タカシの対面に座り、何処か落ち着かなさそうにソワソワとしていた。
「よっし、そろそろ食べ頃だ」
「さすごしゅ!」
タカシが深皿におでんの具を盛ると、彼の膝の上に座っているクラーケンが、早速と言った感じで大根にかじりつく。
ハフハフを熱を冷ましながら頬張る彼女を優し気な目で見ながら、タカシも煮卵に箸を付けた。
「ん? どうしたアンジェリカ、食べないのか? 旨いぞ、この出汁の元に成っている怪魚カツオブッシと怪藻コブーンは、クラーケンが獲って来てくれたんだ、な?」
「さすごしゅ!」
ニンマリと笑うクラーケン。どうやら自慢げに胸を張っているらしい。
「あ、いえいえ、食べさせていただきますよ。えっと、その、あの胸おオバケ……じゃなくて、聖女アリサや、他の方々は?」
「うん? ああ」
タカシは廃棄城を訪れるにあたり、彼のパーティーメンバーである‟聖女アリサ”と‟くノ一ボタン”を連れて来てはいなかった。
当然だが、パーティーメンバーに入れて貰おうとつけ回して来る“自称剣客”のハルナは撒いて来ている。
アリサの方は、彼女が所属している『聖教会』からの呼び出しで王都に赴いており、ボタンの方は、『オボロ』の頭領にお使いを頼んでいたからだ。
そんな訳で暇の出来たタカシは、様子見がてら、約束していたおでんを食べさせに、アンジェリカの元を訪ねて来たのである。 【魔王アンジェリカの色々な冒険】(4/4)
「よっしゃあ!」
「ん?」
「さすごしゅ?」
「な、何でもありませんわ! オホホ」
その話を聞いたアンジェリカは小さくガッツポーズをとる。
今まで、タカシとの距離を詰めようとする度に邪魔して来たアリサは居ないと分かったからだ。
そして即座に行動に移した。
タカシの横まで、すすすと近寄ると、上目使いで、彼の目を見る。そしてタカシの手を取ると……
ジ――――――。
クラーケンがじっと見ているが、所詮は魔物。今は小動物と変わりないと意を決し、「タカシさん」と口を開き……
ジ――――――。
ジ――――――。
「あ、自分の事は気にしないで構わないっスよ?」
ハフハフと竹輪を頬張るくノ一メイドが増えていた。
「ギャ―――――!!」
アンジェリカが羞恥の為に飛び上がる。と。どたばたと廊下から足音が聞こえ、城のメイドと何か言い争ってる声が聞こえたかと思うと、ドアがバン! と開き。
「見つけましたよ!! タカシ殿!!」
と、サムライ風の少女が魔族メイドを引き摺りながら飛び込んできて、アンジェリカが足を引っかけたせいで宙を舞ったおでんが……
******
「……何があったのですか?」
「うん、まぁ、色々」
「さすごしゅ!!」
用事を終え、急いでタカシの後を追ったアリサが廃棄城のアンジェリカの私室で見たもの。
それは、向う脛を押さえて蹲る魔王と、おでんを被り転げまわる剣客少女の姿だった。 >>779
にゃーの無意識が>>363の続きを望んでいるのですにゃー
使用お題→『おでん』『スクラップ』『美術部』『777』『ドリル』
【脱獄した俺は未開の星で帝国相手に無双するかも知れない/第四話】(1/3)
森の外でイヌミミ族を撃退した俺たち。つかの間の勝利に酔いしれるも、翌日には、次の戦いのための準備を始めていた。
「思った通り、昨日のままですにゃー」
現場には、敵のロボットや工事車両がそのまま残されていた。
「意外といい加減なやつらだな」
「イヌミミ族は、命令に従うのは得意なのですが、想定外には弱いのですにゃー」
村長の指示で、俺とニャンダモ、おっさんたちは、現場の片付けを始めた。
「サン、サン、サン、サン、サンライズですにゃー」
「真面目にやれよ」
「今日も曇りですからにゃー」
働いているのは、主に俺とニャンダモだ。おっさんたちは役立たず……ではない。ではないが、どうやらネコミミ族というものは力仕事が得意ではないようで、あまり頼りにならなかった。
「サン、サン、サン、サン、サンライズ、にゃー」
「サン、サン、サン、サン、サンライズー……あっ」
「晴れてきましたにゃー」
おっさんたちの踊りの効果ではないだろうが、灰色の雲が薄くなって、その切れ間から青空がのぞいた。
「太陽が出てますにゃー」
「出てはいませんが、明るくなりましたにゃー」
ニャンダモの動きが目に見えて良くなった。おっさんたちの動きは大して良くならなかったが、士気は大いに上がった。
俺たちは大急ぎで作業を進めた。敵の機械を回収し、暗くなる前に落とし穴の修復まで終わらせると、俺たちは全員で村に戻った。
*
翌朝は雨だった。しとしとと降る雨を眺めていると、村長が俺を呼びにきた。
「こんな天気ですが、お見せするものがありますのにゃー」
俺は村長に連れられて、村の外に出た。わだちが続く泥道を歩くこと数分、やがて、森の中に、大きく口を開けた洞窟が現れた。
洞窟の中は暗かったが、床面は広く平らに加工されていた。俺たちは奥へと進む。いよいよ外光が届かない深さになると、電灯の明かりが俺たちを照らした。
一番奥まで進むと、そこは開けた空間になっており、一種異様な、洞窟の外とは別の世界が広がっていた。
「これは……」
広場の半分は掘り込まれて、何かの液体で満たされていた。そこに、丸やら三角やら四角やら、機械の部品らしきものが浮かんでいる。
「ここがにゃーたちのニャンダモ整備工場ですにゃー」
残りの空間には、がらくたのようなものが積まれていた。その手前には、昨日運び出した敵の車両が並んでいる。クレーンのような機械も見える。
「学士様はどこですかにゃー」
俺がこの施設に半ば感心し、半ばあきれている隣で、村長は誰かを探している様子だった。
「おやー? どうしましたかにゃー」
「あっ、学士様」 【脱獄した俺は未開の星で帝国相手に無双するかも知れない/第四話】(2/3)
村のやつらとはまた別の、猫耳のおっさんが現れた。例によって仮面を装着している。
「どうしましたかにゃー、村長。そちらの方はどなたですかにゃー」
「こちらの方は脱獄囚ですにゃー」
「脱獄囚……! それはそれは。にゃーはエヌ学士ですにゃー。全部で五人いるニャンダモ開発者の一人ですにゃー。一応申し上げておきますが、にゃーも脱獄囚ですにゃー」
脱獄囚だらけだな……。どうも釈然としないが、まあいいだろう。
「それで、どうして俺をここに連れてきたんだ?」
「それはですにゃー」
村長が固まった。
「村長……? どうしましたかにゃー」
「おい村長」
「…………なんでしたかにゃー」
大丈夫かよ。
「……ああ、思い出しましたにゃー。学士様、昨日の今日ですが、ニャンダモ弐号機はどうなってますかにゃー。それとにゃーの物忘れは単なる文字数稼ぎなので心配ないですにゃー」
「そうですかにゃー。弐号機ですが、壊れた部品は交換しましたにゃー。後はプログラムの修正が終われば、起動できますにゃー」
そう言ってエヌ学士が振り向いた先には、見覚えのあるロボットが立っていた。
「昨日運んできた敵のロボットじゃないか。何がニャンダモだ」
スクラップで補修したのだろう、部品の色や形が合わない箇所がある。
「大砲……イヌダーキャノンはどうしたんだ」
ロボットが背負っていた新兵器、イヌダーキャノンが見当たらない。
「あれは邪魔なので外してありますにゃー。それと、後で調べてみますが、にゃーの見たところ、あれは使い捨ての兵器ですにゃー」
一発撃ったら終わり、ってことか。随分と効率の悪い話だが、それに見合うだけの威力があったのだろうか。
「もしよろしければ、にゃーの仕事を手伝っていきますかにゃー」
このために俺を連れてきたのか? 村に戻っても暇なので、俺は学士の提案を受け入れることにした。
とは言え、急に来て何かできるはずもなく、俺と村長は、学士が作業するのをただ眺めていた。
「にゃー。これはにゃーには難しいですにゃー。にゃーはプログラムの専門家ではないですからにゃー」
ロボットの胸部ハッチからはケーブルが引き出され、学士はそのケーブルに接続された情報端末を操作している。
「どうして難しいのですかにゃー。そのままでは起動できないのですかにゃー?」
「それが起動できないのですにゃー」
村長の質問に対する学士の説明は長かった。
「まず、このロボット、パグ・ワンコーの制御プログラムは、プロテクトされてますのにゃー。ですがそれは問題ではないのですにゃー。こうやって配線を引き出して直接いじればいいのですにゃー」
「なら何が問題なんだ」
「世代が違いますのにゃー。にゃーは最初、ニャンダモのプログラムをコピーすればいいと思ったのですにゃー。ですが、ワンコー世代のニャンダモと、このパグ・ワンコーとは、似ているようで全然違うのですにゃー」
プロテクトのせいもあって起動ができず、修正はできるが学士の手に余る、ということか。
「ではどうしますかにゃー」
「これはもう仕方がないので、ここをこう……これで起動自体はできますにゃー」 【脱獄した俺は未開の星で帝国相手に無双するかも知れない/第四話】(3/3)
ロボットの電飾が点灯した。素人目には問題なさそうに見える。
「そしたらフラグをごまかして……『777』ですにゃー。これだと通常モードでは動かせないのですが、緊急避難ですにゃー」
学士の作業は続いた。時々、ロボットの手や足が動いたりする。
「とりあえずこれで完了ですにゃー。これ以上はエム先生がいないと無理ですにゃー」
「そうですかにゃー。お疲れさまですにゃー。ああ、エム先生はニャンダモ開発者の一人で、プログラムの専門家ですにゃー」
俺も村長も見ているだけだったが、パグ・ワンコー改め、ニャンダモ弐号機が動くようになった。
「それでは学士様、弐号機を村の方に持っていって、色を塗りますのにゃー」
俺たちは洞窟を後にした。弐号機にはケーブルと端末が接続されたままだ。学士はコックピットには乗り込まず、徒歩で機体を先導している。
「ところで、洞窟の中のプールだが、あれにはなんの意味があるんだ?」
「おでん池のことですかにゃー。あれはにゃーの趣味で、特に意味はないですにゃー」
朝から降っていた雨は、村に着く頃には上がっていた。弐号機が村に入ると、ブラシや絵の具らしきものを手に、村人たちが集まってきた。
「あっ、学士様ですにゃー。ねこの岩戸から出てきましたにゃー」
「お絵描きの時間ですにゃー」
「お絵猫きですかにゃー」
「違いますにゃー。そんな誤字でにゃーたちが釣られニャー」
「にゃーたちは何をするのでしたかにゃー」
「お絵描きですにゃー。サンダーボルト森林のネコミミ村美術部ですにゃー」
肉体労働では今一つだったネコミミ族だが、弐号機の塗装では意外なほどの実力を発揮した。
「これで完成ですにゃー」
「これで完成ですが、何か物足りないですにゃー」
「なんですかにゃー」
「なんでしょうかにゃー」
「文字数でしょうかにゃー」
「違いますにゃー。まだ使ってないあれが……あっ」
そう言うと何人かが走っていった。しばらくして戻ってきたやつらの手には、何か先のとがったものが握られていた。
「これですにゃー」
「これはなんですかにゃー」
「にゅんにゅん丸ですかにゃー」
「違いますにゃー。そんな造語でにゃーが釣られニャー」
「これはドリルですにゃー」
「……それはにゃーが言おうと思ってたのですにゃー」
三角コーンほどの大きさのドリル二つが、弐号機の頭部に取り付けられた。猫耳のように見えなくもない。
「ちゃんとくっ付きましたかにゃー。試しに回してみますのにゃー」
学士が操作すると、弐号機の頭のドリルが回り始めた。
「いつも通りに回ってますのにゃー」
回り続ける弐号機のドリル。そして学士が持つ情報端末。
これは……未開の星の技術じゃない。
俺は強大な敵との対決を予感し、先行きへの懸念を深めるのだった。 こちらも長いけれども、作者本人はそれなりに満足した話
続きは・・・いずれまた・・・ お題→『おでん』『スクラップ』『美術部』『777』『ドリル』締切
【参加作品一覧】
>>786【イエローマスクド・デーモン】
>>793【最悪最強!?猛攻のスロットモンスター】
>>798【姉弟はいつでもラッキーセブン】
>>803【魔王アンジェリカの色々な冒険】
>>808【脱獄した俺は未開の星で帝国相手に無双するかも知れない/第四話】 では予告通り、状況指定をやってみます
予備のお題2つ
どこかで、誰かが、何かをする話←これが3つ
お題安価>>814->>815
場所>>816
人物>>817
行動>>818 ☆お題→『銀河で、検察官が、人捜しをする話』『ケチャップ』『オールスター』から1つ以上選択
☆文字数→4レス以内に収めれば何字でも可。ただし3レス以内を目標とすること。
1レス約2000字、60行が上限。
☆締め切り→3/8の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。
【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】 どうなるかなと思いましたが、今回もかなり早く集まりましたね
普通に考えればSFですが、これはどうなるか
お題も作品もアイディアもありがとうございます
今回もよろしくです >>803
来た来た、今回これが来るとは思ってませんでしたがw
『スクラップ』の城=『777』階のダンジョン、『ドリル』ランスで元『美術部』のセンス、『おでん』が・・・
これは楽しい話、とうとう最後の一人が登場で、通常営業のドタバタって感じですねw >>821
感想有り難うございます
短編連作なので、初めて読んだ方ですと分かり辛いかもしれませんが……
なるべく“なろうテンプレ”をつぎ込んでいるお話ですので楽しんでいたたけたなら幸いですw >>819
使用するお題→『銀河で、検察官が、人捜しをする話』『ケチャップ』
【魔法少女、銀河に行く!?】(1/3)
今日も世界の平和を守るため、ナツミは魔法少女に変身し、極悪なモンスター達と激しいバトルを繰り広げていた。
「なかなか手強かったわ。ま、特に骨が折れるほどではなかったけどね」
モンスターを倒し、その場から立ち去ろうとするナツミ。
「(ふん!バカな魔法少女め、油断しやがって…)」
モンスターは息絶えて消えそうになる数秒前、ナツミの足下にコロコロと黒く丸い何かを転ばせる。それは爆弾だった。
「ん?」
それに気付いた時にはもう遅かった。ドカーン!と大爆発し、その爆風でナツミは勢いよく空中に吹っ飛ばされた。
「ワーーーーーーーッッッッッッ!!!」
まるでロケットのような勢いで大気圏に突入、宇宙空間、そう銀河にまで飛ばされてしまった。
「えっ?ここって宇宙ってか銀河!?こ、これじゃ息ができずに死んじゃ…って、あれ?」
どうやら普通に呼吸できるようで、体には特に何の異常も起こらない。
「もしかして魔法少女だから宇宙でも平気でいられるってこと?もはや何でもありなのね」
早く地球に戻ろう。ナツミはそう思いつつも赤や青、金色に輝く美しい無数の星につい見とれてしまう。
「すっごく綺麗…心が癒されるわ」
しばらく壮大な宇宙の中をのんびり散歩することに決め、自由気ままに飛び回る。
すると、突然ゴンッ!と何かにぶつかってしまう。
「痛タタタ!もう何よ!」
目の前にあったのは巨大なサファイア色をした宇宙船、いや軍艦だろうか。
「宇宙だからエイリアンでも乗ってるのかな?友好的で襲ってこなかったらいいんだけど…」
するとナツミの存在に気付いたのか、軍艦から大きな吸引機のようなホースが現れる。それに彼女は吸い込まれ、そのまま軍艦内に入ってしまう。
「もう乱暴ね!いきなり何するのよ!」
「大人しくしろ!不審者め!」
ナツミの前に姿を現したのはエイリアン、と思いきや普通の人間の姿をした生命体のようだ。
「に、人間なの?」
「人間のように見えるが違う。我々はブルースパークル星人で、宇宙の治安を守る警察部隊マイティーコメッツだ」
「ブルースパークル星人?マイティーコメッツ?もう何が何だか訳が分からない…」
「いや、ちょっと待て。お前、もしかして今地球の平和を守るため日々戦っている魔法少女か?」
「そうよ、名前は佐久間ナツミよ。…って、どうして知ってるの?」
「我々は宇宙の平和を守ってるだけでなく、地球での人々の様子を見て楽しんでいたりもしているのだよ」
「すごく目立ってるから一瞬で分かったよ。私、あなたのファンでして会えて凄く嬉しい。サインくれないかな?」
「べ、別にいいけど…」
渡された色紙に、ナツミはとりあえずサインをするのだった。 【魔法少女、銀河に行く!?】(2/3)
「モンスターと戦うあなたの勇姿は本当に素晴らしい。いつも応援してます!」
「あ、ありがとう」
そのままナツミは、ブルースパークル星人達に大きなモニター室のような場所に案内された。
「ここでこの壮大、いや無限大ともいえる宇宙空間で誰か困っている人がいないのか見ているのです」
「地球での人々の暮らしなどを眺めたりもしていて、それもすっごく楽しいんですよ。決して監視してるわけじゃないですよ」
「そういえば、この前イタリアのシチリアだったかな?爽やかな好青年と、西部劇に出てくるガンマンのような格好した女のカップルが、丘の上で星空を眺めているのがありましたよね」
「ああ。あれは本当に幸せそうで印象深い光景だったな。確かどれが何の星座か当てる勝負やってたなアハハ」
そんな楽しそうに会話するブルースパークル星人達を、ナツミは微笑ましそうに見つめていた。
「(地球にすごく憧れを持ってるのかな?)」
「あっナツミさん、置いてけぼりにして申し訳ない」
「ううん、気にしないで」
すると、他よりも一回りか二回りくらい大きな体をした星人が現れた。
「初めまして、ナツミ様。私は検察官をしております、グラヴィスと申します。今、行方不明の男を捜索しておりまして…」
「行方不明?一体、どういうことなんですか?」
グラヴィスと名乗るその検察官は、半年ほど前に失踪し行方不明となっているチャムという男を必死に捜索しているのだという。
「彼には妻子がいるのです。必ず見つけ出して会わせてやりたいのです」
「私もお手伝いします!」
「本当にありがたい。あなたがいると心強い」
その時だった。けたたましい音のサイレンが艦内に響き渡った。
「敵襲だ!」
外に出てみると、脳が破裂しそうなくらいに膨らんだ緑色のモンスターがいた。彼らはナツミの姿を見てビックリした。
「ま、魔法少女ナツミ!?何でお前がこんな宇宙にいるのだ!?」
「モンスター!?宇宙でも悪事をしているってこと!?」
「俺達モンスターは地球だけで暴れてるとは一言も言ってないぞ。あ、名乗るのが遅れたな。俺はウィズダム、そう最高のIQを誇るモンスターだ」
「だからそんなに脳が膨れているのね」
「おしゃべりはそこまでだ。こいつを見ろ!」
ウィズダムと名乗るそのモンスターの腕には、一人の男が捕まっていた。
「チャ、チャムだ!」
「さっき言ってた行方不明の方?」
「た、助けてくれー!」
「一歩でも近づいたら殺すからな。人質を傷つけられたくなかったら大人しく身代金を出せ」
「ひ、卑怯な…!」
迂闊に近づけば、チャムの命が危ない。しかも相手は自称ではあるが最高のIQを誇るモンスターだ。
「グラヴィスさん、ここは大人しく身代金を渡しましょう」
「犯人相手に屈することにはなるが仕方ない。人質の命を守るのが最優先だ」
「待ってください。私に良い考えがあるんです!」
「な、何ですと?」
ナツミには「ある作戦」があった。
「おい、お前ら何をヒソヒソ話し合ってやがる!ちょっとでも下手なことしたら、こいつは一瞬でこの世からおさらばだぜ!」 【魔法少女、銀河に行く!?】(3/3)
「おいウィズダムとやら!これに身代金が入ってる!受け取れ!」
「おう潔くていいじゃねえか」
グラヴィスが身代金が入った「何か」をウィズダムに向かって投げる。それを上手くキャッチするウィズダム、しかしそれは…。
「こ、これナツミのブーツじゃねえか!」
ナツミのブーツだった。ちゃんと彼女のブーツの中に身代金が入っているのだが、ブーツの強烈な臭いでウィズダムは失神しそうになる。
「く、臭えッ!ちゃんとブーツ洗ってるのかよ!」
一瞬ウィズダムが怯んだ瞬間、ナツミは電光石火の如く彼の背後に回り、脳に向かって勢いよく踵落としを食らわせる。
「ウゲッ!!」
「私の方が少し賢かったかもね」
ウィズダムの脳は歪に変形、ドカーン!と破裂死してしまった。そして無事にチャムの救出を成功させた。
「本当にありがとうございます、皆さま!そして魔法少女のナツミさん!」
「ご無事で何よりですチャムさん。一体何があったのですか?」
「ああ、それはね…」
チャムの話によると、失踪した半年前のこと、仕事帰りに突然飛んできた隕石に衝突してしまう。無傷ではあったものの船が大破してしまったため、家に帰る事ができなくなってしまった。
何とか歩いて帰ろうとするも、無限と言えるほど広大な宇宙空間なため途方に暮れてしまう。
途中、たまたま落ちていたケチャップを拾ってそれを一応非常食として携帯し、何日もかけて帰ってる中でウィズダムに見つかって捕まってしまった、というわけなのだ。
少しでっぷりしている写真の姿と比べるとかなり痩せ細っていた。
「ケチャップだけで本当辛かったですよ。でもこれでやっと妻子に会うことができて嬉しい限りです」
その後、マイティーコメッツが手配した宇宙船でチャムは無事に妻子の元に送られた。
「ナツミさん、今回は本当にありがとうございました。我々もモンスター達に負けないよう、もっと強くならないといけないですね」
「どういたしまして。マイティーコメッツのこれからの健闘をお祈りします」
ワープルームに案内され、ナツミはそこの自動転送システムで地球に戻ることができた。
「銀河、すっごく綺麗だったなあ。また行きたいなあ」
そう考えながら、ナツミは家路につくのだった。 >>823
早速なんだこれw、なんでもあり過ぎるw
『銀河で〜』ブーツw『ケチャップ』を食料にしていた
いやーこれは、まさかの宇宙進出、見覚えのある人たちもw、かなり自由な話でしたw >>826
感想ありがとうございます!
魔法少女が宇宙で大活躍!?なお話でした。
宇宙空間でも呼吸かつ行動が可能なのは魔法少女で無敵状態であるから故、という解釈でw
会話の中だけですが地味にレイチェルとライアンも出ちゃってますねw
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! >>819
使用するお題→『銀河で、検察官が、人捜しをする話』『ケチャップ』『オールスター』
【ギャラクシーコップ】(1/3)
「ねえねえ、お姉ちゃん!あのゲームの続きやろうよ!」
「そうね!すぐに宿題終わらせるから、リビングで準備して待ってて」
今やっている宿題を手っ取り早く片付けると、カナミは1階のリビングへと向かう。
「お待たせー!それじゃあプレイ開始といきますか!」
カナミとケンスケは早速あるゲームをプレイする。「ギャラクシーコップ」というタイトルで1週間ほど前、
777人目のお客様記念として7割引で購入したゲームだ(※>>798【姉弟はいつでもラッキーセブン】を参照)
ギャラクシーコップと呼ばれる警察部隊を操作し、無法者らから銀河の世界の平和を守るといった内容で、現在ストーリーモードを進めている真っ最中だ。
「もう終盤だね。今日は一気に全クリしちゃおうよ!」
「ケンスケ、焦らないの。先走ってちゃ何も手に入らないわよ」
ストーリーはもう終盤、検察官であるジェムという名の男を操作、行方不明となった一家を探し出し、
その事件の元凶であるラスボスを倒せば完結を迎えることができる。
カナミとケンスケは2人同時プレイで協力しながら、着実にストーリーを進めていくものの
途中、一家を探し出すヒントをなかなか掴むことができずに悪戦苦闘する。
「ヒントはあと一つなのにぃ!!」
「このゲーム、割と推理必要なんだね」
ヒントを見つけることができず、足止めを食らってしまう。既にゲームを始めてから2時間が経過していた。
「もうゲームはやめて、風呂に入ってもう寝なさい」
「はーい!」
「分かったわよぉ」
お風呂に入ってパジャマに着替え、それぞれ自分の部屋に向かう。
「お姉ちゃん、こうなったら攻略本買おうよ」
「攻略本に頼ってちゃ面白くないわ!たとえゲームでも自分の力でクリアするってのが醍醐味なんだから!」
「そ、そうだね。それじゃあ、おやすみ(お姉ちゃん、なんか熱くなってて怖い…)」
「おやすみなさいケンスケ!」
翌朝、授業中でもカナミはゲームをクリアすることばかり考えてしまい、なかなか集中することができない。
「(わ、私のバカ!ゲームのことばかり考えて何してるのよ!これじゃあケンスケの二の舞になっちゃう!)」
カナミは自分の頬を強くつねり、なんとか冷静になる。放課後、家に帰るとケンスケが既に帰っていた。
「お姉ちゃん、宿題終わらせたら早く昨日の続きやろう!」
「分かった、分かったから落ち着きなさい。ゲームは逃げたりしないんだから」
宿題を終わらせると、リビングに向かいソファーに座って早速プレイする。
「昨日のお姉ちゃん、鬼気迫るものがあったよ」
「だ、だって難しいからつい熱くなっちゃって仕方がないじゃない!」
「熱くなりすぎちゃ、手に入れれる物も手に入ることができないよ」
「そ、その通りね。冷静、冷静に…」 【ギャラクシーコップ】(2/3)
広い銀河に住む、多種多様な宇宙人や異星人に話を聞き、行方不明の一家を探し出せる最後のヒントを掴もうとする。
「お、お姉ちゃん、ちょっとトイレ行ってくる。すぐ戻るから」
「わ、私も!ポーズしとかなくちゃ!」
とりあえずポーズ状態にして、姉弟はトイレに向かう。
その後、少し喉が渇いたので冷たいお茶を飲みに食卓に行くと、父が大笑いしながらテレビを見ていた。
「お父さん、何見てるの?」
「芸人や俳優オールスターのお笑いスペシャルだよ。ほら、誰がワサビ入りのケーキを選んでしまうかで面白いところだ」
「アハハ!楽しいわね!」
そのお笑いスペシャルに夢中になってしまい、姉弟はゲームのことをすっかり忘れてしまっていた。
ゲームがつけっぱなしで誰もいなくなったリビングの窓ガラスが突然割れ、誰かが中に入ってきた。
「ここがあの七尾の家ね。今日こそ、あいつを見つけて捕まえて思いきり可愛がってやるわ!」
七尾家に不法侵入してきたのは、乱暴凶悪の小6女子の一人である柿田ハルコだった。
これまで無残に散っていった(無論、自業自得だが)同胞達の仇を討つために、カナミを捕まえにやって来たのだ。
「ん?ゲームがついてる…」
ポーズ状態のギャラクシーコップに目が入り、興味を持ってしまう。
「面白そうね。せっかくだから私がもらうわ」
勝手に電源を切ると、ハルコはソフトを抜いてそのまま出て行ってしまう。片手に持っているホットドッグのケチャップがポタポタ落ちているのにも気付かずに…。
2時間後、スペシャルが終わった途端、カナミとケンスケはゲームのことを思い出して急いでリビングに戻る。
割れた窓ガラスやゲームソフトが無くなっているのを見て、驚きを隠せない。
「ど、泥棒!?一体、誰の仕業なの!?」
「お姉ちゃん、見て。何か赤い物が落ちてる、絵の具かな?」
「トマトのような匂い、これはケチャップね。ケチャップ…ということは6年の柿田ハルコね!」
カナミ曰く、ハルコはハンバーガーやホットドッグといった高カロリーなジャンクフードが大好物で
コンビニでよく万引きしていることでも知られている。
「あいつ、よくケチャップとかマスタードをポタポタ落としながら食べてるのよく見るわ。彼女に違いないわ!」
地面に落ちてるケチャップを辿って、姉弟はハルコを探しに走り出す。向かった先にあったのは他でもない彼女の家だった。
「うーんホットドッグ美味しい。ムシャムシャ…」
窓からじっと様子を伺うカナミとケンスケ。
「さてっと、さっき奪ったゲームで遊ぶとしよっと!」
「うわ、ケチャップでベトベトの手でソフト触ってる!最悪!」
「ホント下品だね」
ストーリーモードの続きで遊び出すハルコ。
こうなったらこっちも強行突破だ!と、カナミは近くに落ちている大きめの石を拾うと
思いきり投げて窓ガラスをガシャーンと割る。 【ギャラクシーコップ】(3/3)
「な、何!?」
「6年の柿田ハルコ!私よ、七尾カナミよ!そのゲーム返してもらうわよ!」
「あら自分からノコノコ現れるとは潔いじゃないの。感心しちゃうわ」
「(ケンスケ、今よ!早く!)」
「(OK、お姉ちゃん!)」
カナミの合図に、ケンスケはハルコに気付かれないようにゲームを取り戻そうとする。
「柿田ハルコ!どこからでもかかってきなさい!」
「いいわ、思う存分グチャグチャにしてやるわ。仲間達の仇を今こそ討ってやるんだから」
ハルコのパンチを避け、カナミは彼女の脛を思いきり蹴る。ウッ!と一瞬怯んだ、かのように見せかけてハルコはニヤリと笑う。
「それくらいで私がダウンするとでも思ってるのかしら?」
ハルコはカナミの体を持ち上げると、壁に向かって思いきりブン投げた。
「お姉ちゃん!」
「あら、弟君も来てたのね。せっかくだから、あんたも可愛がってあげる」
「ケ、ケンスケ!私のことはいいから早くゲームを持って逃げて!」
「あんたは黙ってな!」
ハルコに足を踏みつけられ、カナミ大ピンチ。その時だった。
突然テレビの画面から眩しいレーザーのようなものが飛び出し、ハルコの体を勢いよく貫いた。
ブヘッ!とハルコはそのまま気絶し倒れてしまった。テレビの画面の方に目を向けると、
検察官のジェムがレーザー銃を放ったかのようなポーズで立っていた。
ジェムがそのまま姉弟に向かってニッコリと微笑むと、「MISSION COMPLETE!」の文字が現れた。
その流れで行方不明の一家が無事見つかって事件は解決。そう、ストーリーモード全クリアを達成できたということだった。
「まさかこれで全クリとは、一本取られたね」
「つまり元凶は柿田ハルコだったってことね」
その後、駆けつけた警察により、ハルコは不法侵入と器物損壊の罪で逮捕された。
ゲームを無事に取り戻し、カナミとケンスケは家路につく。
「ゲームのキャラもちゃんと意志を持ってるんだなあ」
「やっぱり製作者の愛が詰まってるのかしらね」
グゥッとお腹が鳴り、姉弟は互いに顔を合わせてアハハと笑うのだった。 >>828
なるほど考えたなぁ
『銀河で〜人捜しをする』ゲーム、『オールスター』のテレビ番組、『ケチャップ』の痕跡・・・!
とうとう自宅にまで押し掛けられてますがw、やり返した上に助っ人登場で事件解決でしたw >>831
感想ありがとうございます!
前回はゲームのキャラに襲われる展開でしたが、今回は逆に助けられるパターンでした
話が進むに連れて小6女子がますます凶暴化してますねw
でも仕方がありません、彼女ら本当に目的のためなら手段を選ばないくらいの冷酷非道ですからw
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! >>819
お題:『銀河で、検察官が、人捜しをする話』『ケチャップ』『オールスター』
【星空の下の検事】
空を見上げれば、満天の星空。
吹きすさぶ北風に身を晒し、凍える様に身を竦める。
(まるで、この銀河でたった一人の様じゃないか)
加藤 優司は、埒も明かない想像を振り払うかの様に頭を振った。
同僚の検察官からは、「やめておいた方が良い」と言われ続け、実際に上からの圧力も掛かっている。
この寒空の中、周囲の反対を押し切りながらも何処にいるかも分からない証人を探す作業は、正直、疲労感が大きい。
被疑者、能登 佳純は、いわゆるエリート官僚であり、しかし、欲望を我慢すると言う事の出来ない男でもあった。
今までに彼が手を染めたであろう犯罪は、詐欺、横領、窃盗、脅迫、暴行、薬物、強姦、殺人と、まるで犯罪のオールスターの様な状態なのだが、しかし、それ等は一つとして立証される事は無かった。
それもこれも、証拠不十分であるとされたり、被害者が提訴を取りやめる事態が続いたからである。
要は、誰もそれもが、能登の権力に屈したと言う事だ。
しかし、今回だけは優司は諦める訳には行かなかった。これ以上、彼の犠牲者が増える事が無い様にと言うのも確かに有ったが、今回の被害者が彼の亡くなった妹と重なった為だった。
両親を早いうちに亡くし、さして裕福でも無かった加藤の家は、優司本人も、その妹の香奈見も奨学金によって大学まで卒業をした。
彼の妹の香奈見も、苦労して就職し、ようやっと人並みの生活に成れると思った矢先だった。
「はい、お兄ちゃん、ケチャップライス。大好物だったでしょ?」
「いや、大好物と言うか……(他に食べられる者が無かったと言うか……)」
「え?」
「あ、いや、大好物だよ、うん」
ケチャップで炒めただけのライスをさも美味しそうに食べる優司を見ながら、香奈見はニコニコとしていた。
「……何か良い事でもあったのか?」
「うん? 分かっちゃう? へへ、あのね? 私、プロポーズされたんだ」
「へ? え? へー……そ、そうか」
正直、苦労して育てて来た妹を他の男に渡すのは業腹だった優司だが、しかし、幸せそうな彼女を見てしまえば、それも許すしかない。
「そ、そうだな、今度、お兄ちゃんにも、その男を紹介してくれるのかな?」
「フフ、当たり前でしょ? たった一人の家族なんだよ?」
だが、その幸せは長くは続かなかった。
彼女が結婚をしたのは、小さな工場を経営する社長だったのだが、しかし、贈賄の容疑で逮捕され、会社は倒産。
そして、その男は獄中で謎の病死をしたのである。
当初こそ、多額の借金を返しつつ、彼の帰りを待っていた香奈見だったが、獄中死をした言う事を聞き、心が折れてしまったのだろう。
自らに保険金をかけ、謎の事故死をしてしまったのである。
その陰には、やはり能登の姿がチラついていたのだが、しかし、立件するには至らなかったのである。
今回の事件は、その時の状況とあまりにも似通っていた。
白い息を吐き、コートの襟を立てながら、優司は満天の空を見上げる。
美しい筈の星の輝きが、今は、まるで彼の事が銀河でただ一人の様な気分にさせた。 >>819
使用お題→『銀河で、検察官が、人捜しをする話』『ケチャップ』『オールスター』
【コンテンポラリー・ユニヴァースィズの私たち】(1/3)
「いらっしゃい」
落ち着いた雰囲気の店内。初老の店主の穏やかな声が私を迎える。私はカウンター席に座る。店主と私の他に人影はない。
「ご注文は?」
「コーヒーで。あの、マスター」
私が話し掛けるのを手で制して、店主はゆったりと告げる。
「慌てない、慌てない」
言われた私は、店主の仕事を黙って眺めることにする。
やがて私の前にコーヒーの入ったカップが差し出される。
「それで、ご用件は?」
「あの、私」
「ああ、ごめん。まずはコーヒーを飲んでからね」
私はコーヒーを一口含んで、それを飲み込んでから、改めて話を始める。
「人を捜しているんです。その人は――――」
* * *
「いらっしゃい」
その店の中は薄暗く感じられたが、それは砂漠の日差しが特別に強かったからだ。
私は数瞬立ち尽くし、目が慣れてくると、カウンターの中に店主の姿を認めた。落ち着いて歩み寄る。
「ご注文は?」
私が席に着くと、店主が愛想良く話し掛けてきた。
「コーヒーで」
「コーヒー? うちにはそんなものありませんよ。あるのはコーラと、よく冷えたビールだけでございます!」
私は店主の返答に面食らったものの、大人しくコーラを注文する。
「それでマスター、お聞きしたいことがあるのですが」
私はコーラを一口飲んでから、そう切り出した。店内に他の客の姿はない。
「なんでしょう」
「私、人を捜しているんです。その人は――――」
* * *
「いらっしゃいませですにゃー」
林の中に隠れるようにして、その店は存在していた。店主の声は決して大きくはなかったが、よく通る声で聞き取りやすかった。
「ご注文はなんですかにゃー」
カウンター席しかない小さな店だ。店主の頭には猫耳が生えている。
「コーヒーで」
「コーヒーですかにゃー。それはなんでしたかにゃー」
私は答えに窮した。ここはコーヒーを出す店ではないのか。その後ろにあるのは?
「……ああ、コーヒーですにゃー。失礼しましたにゃー。これのことですにゃー」
私は少なからず不安に駆られたが、余計なことは言わず、静かに待つことにした。
やがて私の前に、間違いなくコーヒーの入った、なんの変哲もないカップが差し出される。
「どうぞですにゃー」
「ありがとう。あの、マスター。お聞きしたいことがあるのですが」
「なんでしょうかにゃー」
私は、この優しそうな店主に事情を話すことにする。
「私、人を捜しています」
「そうなのですかにゃー。その人は脱獄囚ですかにゃー?」
脱獄囚……? その発想はどこから出てくるんだろう。
「いえ、その人は――――」 【コンテンポラリー・ユニヴァースィズの私たち】(2/3)
私がその店の前に着いた時、店の戸には『closed』のプレートが掛けられていた。
私は、一瞬迷ったものの、すぐにその場を後にした。
* * *
「いらっしゃいませぇ!!」
ウェイトレスの元気な声に、私はびくっとした。
「お席にご案内いたします!」
「あの」
「はい、なんでしょう」
趣味のいい内装に、エプロンドレス姿が素敵な店員たち。忙しい時間帯は避けたつもりだが、テーブルもカウンターも客で埋まっている。
「私、人を捜してまして、こちらの店主の方にお話を伺いたいのですが」
「あっ、はい。店主ですか。ではこちらへ……マスター、こちらのお客様なのですがー」
店員は店主らしき人物に声を掛けてくれたが、声を掛けられたその人には、この状況で私の話を聞く余裕はなさそうだった。
「申し訳ありません、今ちょっと忙しくて。あと二時間くらいしたら落ち着くと思うのですが。どんな方をお捜しなのでしょうか」
「いえ、えっと、そうですね。ではすみませんが、二時間後に出直してきます」
説明を始めると長くなってしまう。私は一度その店を後にした。
* * *
その建物の内も外も、治療の必要な人間であふれていた。そして、もう治療の必要のない人間も。
「あの」
責任者らしい人物に、私は声を掛けた。
「はいなんでしょう」
間髪いれず返事があって、私は戸惑った。見るからに大変な状況で、それでも私は自分の事情を告げる。
「お忙しいところすみません。人を捜しています。ここの患者さんたちの中にその人がいるかどうか、調べて回ってもよろしいでしょうか」
「それは構いませんが、邪魔にならないようにしてください。ああそれと、身元の分からない方が多くいらっしゃいます。お知り合いの方を見掛けられましたら、係の者にお知らせください」
床やベッドに並べられた患者たち。赤黒い染みが目立つ、着衣や包帯。兵士も一般市民も混ざっている。私はその人々の間を注意深く進む。
「あっ……」
私と目の合った一人が、小さく声を上げた。
「あなたは……いえ……人違いですね……」
私もこの人には見覚えがない。本人の言う通り、人違いだろう。
「あの……」
だとしても、この人は私に用があるらしい。
「はい、なんでしょう」
「人を……捜しています……」
「……それは奇遇ですね。私も、人を捜しています」
馬鹿にされたように感じただろうか、特に表情は動かさなかったが。
「こんな状況ですからね……。実はさっきから、あなたがどなたかを捜しているのは、気付いていました。そう言えば、王様の行方は……王は見付かったのでしょうか……」
「それは私にも分かりません。うわさはここまで広がっているのですね。何か分かれば発表があると思いますが……」
「そうですね……」
この騒がしい中にあって、私たち二人の間にだけ、刹那の沈黙が訪れる。
「人を捜しているとおっしゃいましたが。もしよろしければ、私が、ついでと言ってはなんですが、捜すこともできると思いますが」
私がそう提案すると、その人はゆっくりと口を開く。
「そうして頂けると助かります……。私が捜しているのは――――」 【コンテンポラリー・ユニヴァースィズの私たち】(3/3)
「いらっしゃい」
落ち着いた雰囲気の店内。まだ若い、三十代だろうか、その割に老成した印象を与える店主が、にこやかにたたずんでいる。
「お客さん、初めてですね」
「ええ。コーヒーを。それとちょっと事情がありまして、お話を伺いたいのですが」
「そうなんですか。構いませんよ、私で良ければ」
他に客はいない。コーヒーを待つ間、私は店主に話し掛けてみる。
「このお店の名前、『銀河』ですが」
「はい。あんまり『銀河』って感じがしないでしょう?」
それはちょっと分からないけど。店内を見回すと、星座を模した小さなオブジェが置いてあったりする。
「はいどうぞ、コーヒーです。ここにミルクを、ちょっとだけ垂らすと……」
ちょいちょいと手を動かす店主。
「これがほんとのミルキーウェイ、ってね」
うーん……。
「お気に召しませんか。ところで」
店主が私の顔を見詰める。
「あなた、検事さんですよね。こないだ裁判の中継で見ましたよ」
「ええ、まあ、そうですが。よく分かりましたね。私なんて隅っこに小さく映っていただけだと思いますが」
私がそう言うと、店主は我が意を得たりという顔で言葉を継ぐ。
「好きでよく見てるんですよ。弁護士を目指してたんです。あの事件は、検察側も弁護側も、我らがサクラ・カウンティーのオールスターじゃないですか。だから本当はずっと見ていて、全員の顔を覚えてしまったんですよね」
熱っぽく語る店主は、どうやら本当に裁判を見るのが好きらしい。
「ああ、すみません、しゃべり過ぎましたね。それで事情というのは? 事件の捜査ですか?」
わくわくと楽しそうな店主は、第一印象とは別人のようだ。
「いえ、そうではなくて、どちらかと言うと個人的なことです。ある人を捜しているんです」
「人捜し、ですか」
「ええ。それで、ずっと捜してるような気がするんですけど、不思議ですね」
「何がですか?」
そう聞き返す店主の顔も不思議そうだ。
「初めて入ったお店のマスターが、その、裁判オタクで、私の顔を覚えているなんて。ある意味面白い偶然ですよね」
すると店主は少しだけ思案顔になり、それからすぐにこう言った。
「偶然ではないですね。あなたは、たまたまではなく、この店を選んで入った。違いますか」
「まあ、そうです。ここで聞き込みをすれば何か手掛かりが得られるだろうと、そういう見込みがあって、ここに来ました」
「そうですよね。だから、これは運命、とまでは言いませんが、あなたが検事であることも、私が弁護士を目指したことも、あなたが捜している人のことも、全部つながってるんですよ」
「……おっしゃっていることが、よく分からないのですが」
私の困惑した表情に、しかし店主は動じる気配もない。
「大丈夫ですよ、分からなくても。あ、ところで、お食事は済ませましたか」
「いえ、まだですが」
「ではオムライスをごちそうします。この写真のやつです」
ケチャップの星座がなんだかおかしい、オムライスの写真だった。
「それであなたのお話を伺います。どんな人を捜してるのか。それでいいですよね」
言って、店主はさっさと料理を始めてしまった。私はそれを眺めるしかない。
まあ、いいか。何か手伝ってくれるなら、問題はないはずだ。
私は捜している。
オムライスの香りが、私の鼻孔をくすぐる。
私が捜している人。その人は―――― 見た目以上に僭越な話なんですが・・・
なんか無駄に長いし・・・
でもまぁ・・・ お題→『銀河で、検察官が、人捜しをする話』『ケチャップ』『オールスター』締切
【参加作品一覧】
>>823【魔法少女、銀河に行く!?】
>>828【ギャラクシーコップ】
>>833【星空の下の検事】
>>834【コンテンポラリー・ユニヴァースィズの私たち】 ☆お題→『クッキー』『庶民サンプル』『肉襦袢』『信楽焼』『マンティコア』から1つ以上選択
☆文字数→4レス以内に収めれば何字でも可。ただし3レス以内を目標とすること。
1レス約2000字、60行が上限。
☆締め切り→3/15の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。
【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】 なんかまた微妙な過疎、、あと今回お題の組み合わせがすごいですが・・・
ともかくお題も作品もありがとうございます
それと気が早いですけど次回、リレー企画をやろうか、どうしようか、って感じですが
まーそれはその時募集してみて、って感じですよね >>833
超シリアス・・・!
『銀河で、検察官が』証人を探す、犯罪の『オールスター』な被疑者、『ケチャップ』ライス
なんやこの細かい設定と壮大なプロローグ・・・でした・・・! >>847
感想有り難うございます
体調を崩して、ネガティブに成っている為、何だか暗い話になってしまいましたorz
とりあえずコロナではなさそうなので、一安心ですが >>845
使用するお題→『クッキー』『肉襦袢』『マンティコア』
※スレ6>>891【ハロウィンの夜の決闘】を先に読んでおくことをオススメします
【伝説の怪物、現る!?】(1/3)
今年もシチリアにハロウィンの季節が近づいてきた。
町の広場では、住人達がお祭りの準備で大忙しだ。
「今年もまた賑やかで楽しいハロウィンパーティーになりそうね、ライアン!」
「そうだね、レイチェル。今年も仮装コンテストに出場するんだよね?」
「もちろん!このガンマン衣装でね!」
「おやおやライアンさんにレイチェルさん、お久しぶりです」
「あっグレーズ市長!」
シチリアの市長であるルイーニ・グレーズが、ライアンとレイチェルに挨拶をする。
「去年は、私の秘書が君達に迷惑をかけてしまって本当に申し訳ない」
「いえいえ、全然気にしてませんよ。だって黒猫のレイチェル、すっごくカッコよかったんですから!」
「ラ、ライアン…!!」
そう、昨年のハロウィンではグレーズ市長の女秘書がレイチェルのガンマン衣装を盗んだ挙げ句、ライアンを誘拐した事件があったのだ。
大好きなライアン、それにお気に入りのガンマン衣装を奪われて途方に暮れるレイチェルだったが
黒猫の衣装を身につけてパワーアップし、犯人である女市長を倒し、無事にライアンを救出することに成功したのだ。
「あの時のレイチェル、カッコいい上にすっごく可愛かった!まさに闇夜の戦士って感じだったよ」
「て、照れるからやめてよライアン。でも私の本来の姿はさすらいの女ガンマンなんだからね!」
「(カッコつけちゃって。もうレイチェルは可愛いんだから!)」
グレーズ市長はそんな2人の姿を微笑ましそうに眺めていた。
「そ、それじゃあ、またパーティーの日にお会いしましょう」
そう言うとグレーズ市長は去っていった。
「じゃあ僕達も帰って準備を始めようか」
「そうねライアン!」
レストランに帰ると、ライアンは早速お祭りで配るケーキやお菓子作りの準備に専念する。
「このチョコチップクッキー、すっごく美味しいのよね!」
レイチェルは、ライアン手作りで出来立てのチョコチップクッキーを一つ摘んで口に入れる。
「うーん最高!!」
「レイチェル、摘み食いしちゃダメじゃないか」
「だ、だって美味しんだから仕方がないじゃない」
「本当に君は食い意地の張ったガンマンだね、困ったもんだ」
「し、失礼しちゃうわね!」
「でもレイチェルのそういうところが好きさ!」
「もうライアンの意地悪!」
すると近くに置いてあったラジオから臨時ニュースが流れてきた。
「先ほど入ったニュースです。このシチリアでマンティコアを見かけた、という情報が入ってきました」
「マンティコアって、確かライオンっぽい空想上の生き物よね?」
「そうだね、赤い体にサソリのような尻尾、そして人間のような顔つきをしているんだ」
「そのニュース、本当なのかしら?ただデカい野良犬でも見かけただけなんじゃない?」
「アハハ、そうかもね」 【伝説の怪物、現る!?】(2/3)
ハロウィンのパーティー当日の早朝。
レイチェルは早起きしてお馴染みのガンマン衣装に身を包むと、自転車を漕いで近くの店まで買い物に向かっていた。
小麦粉や調味料などを調達し終えて、沼地沿いの道を走っている時のことだった。
少し尖った小石が自転車の前輪に当たって、レイチェルはよろけてバランスを失ってしまう。
「ウワワワワッ!!」
そのまま近くの沼地にボチャン!と落ちてしまった。幸いレイチェルにケガはなかったものの、沼地の泥でガンマン衣装はひどく汚れてしまった。
「さ、最悪…」
レストランに帰ると、泥だらけになったレイチェルを見てライアンはビックリする。
「この汚れようじゃ、今すぐ洗ってもパーティーまでには間に合わないよ」
「ど、どうしよう。ということは…」
「うん、あれしかないね!」
レイチェルは今年は仕方なく、あの黒猫の衣装でパーティーに参加することとなった。
「黒猫はあくまでも「もう一つ」の姿なんだけどなあ…」
「落ち込まないで、レイチェル。黒猫な君も僕はすっごく大好きさ」
「ラ、ライアンがそう言うなら…」
仮装コンテストで黒猫の衣装で現れたレイチェルを、住人達が物珍しそうに眺めている。
「今年のレイチェルさんはガンマンじゃなくて黒猫だよ!」
「黒猫ニャンニャンなレイチェルちゃんも最高だぜ!」
レイチェルは苦笑いしながら住人達に手を振る。今年も豪華で盛大なハロウィンパーティーは無事に幕を閉じ、ライアンとレイチェルは家路につく。
レストランへ帰る途中、ふと近くの茂みから聞こえるザザザッという音に足を止める。
「な、何!?」
茂みの方に目を向けると、何か大きなものが姿を現し、レイチェルとライアンの方にゆっくりと近づいてくる。
その姿は赤い体にサソリのように先が尖った尻尾、そして人間のような顔つきをしたライオンだった。
「ま、まさかマンティコア!?本当にいたなんて!」
「レイチェル、早く逃げるんだ!僕が囮になる!」
「そ、そんなライアン!冗談言わないで!」
「いいから早く!必ず無事に帰るって約束するから」
ライアンに強く促され、レイチェルは急いでその場から走って逃げる。
「来いマンティコア!僕が相手だ!レイチェルには指一本触れさせないからな!」
マンティコアがライアンに向かって突進してくる。ライアンは内心とても怖かったが、レイチェルを守るため今はとにかく必死だった。
銃口から放たれた弾丸の如く突進してくるマンティコアはライアンに襲いかかる…と思いきや高くジャンプして
彼を飛び越えると、死に物狂いで走って逃げるレイチェルを追いかけた。
「ま、待て!レイチェルを傷つけたら絶対に許さないぞ!」
自分に向かって突進してくるマンティコアに、レイチェルは恐怖のあまり泣き叫ぶ。
しかし足下に落ちている小石に躓いて転倒してしまう。マンティコアがじわじわと彼女の方に迫ってくる。
「わ、私を食べても美味しくないわよ!お願いだからあっち行って!」
大きく口を開けて鋭い牙を見せるマンティコアに、レイチェルは死を覚悟した。 【伝説の怪物、現る!?】(3/3)
マンティコアはレイチェルに噛みつく!と思いきや、両前脚を大きく出して彼女をギュッと抱き締めるかのように掴む。
そしてペロペロと嬉しそうに顔を舐め始める。
「えっ!?ど、どういうことなの?」
「も、もしかしてレイチェルを本当のネコと思って一目惚れしちゃった?」
ライアンの言う通り、マンティコアは黒猫衣装のレイチェルを本当にネコだと思い込んでいるようだ。
そのマンティコアはレイチェルはおろか、ライアンに敵意すら一切向くことはなかった。
よく見るとマンティコアではなく体を赤いペンキで塗られたライオンで、顔に人間のマスク、尻尾に尖った枝をつけられただけだった。
「オイオイオイ、俺の商品をどうしてくれるんだよ」
その言葉と共に現れたのは、ボディービルダーのように筋肉質で屈強な体をした男だった。
「それでせっかくのハロウィンを血と恐怖で盛り上げようと計画していたのに、お前らにバレてしまっちゃ仕方がないな。悪いが死んでもらおうか」
男がライアンに銃を向けたその瞬間、黒猫衣装でパワーアップしているレイチェルが非常に俊敏な動きで、男の手にある銃を蹴り上げる。
「な、何だ!この黒猫女、人間離れした動きしやがる!」
レイチェルの動きに戸惑っている隙を狙って、ライアンは男の腹に目掛けて思いきりパンチを食らわせる。
ライアンの重みのあるパンチに、男は気を失ってそのままバタンと倒れてしまった。
「ライアン、ナイスパンチ!」
「レイチェル、ナイスアシスト!」
その男の体は本当の筋肉ではなく、ただ肉襦袢を身につけていただけの見せかけで痩せ細った体をしていた。
パンチ一発であっさりダウンしても全然不思議ではなかった。その後、駆けつけた警察によって男はあっけなく逮捕された。
そのライオンは遥か遠くのサバンナから密輸して奪ったもので、自分に絶対服従するよう調教されていた。
生まれ育ったサバンナに必ず戻すと約束され、レイチェルとライアンは安心した。
その騒動は瞬く間に地元の新聞の一面を飾り、レイチェルだけでなくライアンまでもが彼女同様にレジェンド扱いされることとなった。
「まさか今年のハロウィンも大騒動になるなんて思いもよらなかったわ」
「あのライオン、人懐っこいようで本当に可愛かったね」
「そうねライオン…じゃなくて、ライアン!」
「今噛んだね?」
「だ、だってライアンとライオンで一字違いで紛らわしいんだもん。もうライアンの意地悪!」
さて来年のハロウィンでは一体どんな騒動が起こるのか?
それはライアンとレイチェルにしか分からないのである。 >>849
安定の速筆ですね
楽しいお祭りを恐怖で染め上げようとは、ひどい犯人です
このレイチェルシリーズを読むと、何故かキャ○テンパワーのopが頭の中を流れますw >>849
お久しぶりのレイチェルさん、しかも黒猫w
ライアン氏の『クッキー』、『マンティコア』登場、犯人の『肉襦袢』
黒猫衣装の効果もあったとは言え、温厚なライオンで運が良かったですねw >>852
>>853
感想ありがとうございます!
およそ1ヶ月ぶりのレイチェルにして季節外れのハロウィンのお話でしたw
急に黒猫のレイチェルのお話が書きたくなったんですよね、来年のハロウィンもまた大騒動が起こりそうな予感です
あとレイチェルってどことなく80年代後半〜90年代のドラマによく出てきそうなヒロイン像だなあ、と書いてて思いましたねw
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! ちょっとツイッターで流れてきたのでここのお題バリエーションに使えるんじゃないかってのがあったんで共有しとく
https://twitter.com/kakuniha/status/1238348335175495680?s=19
2つのワード確定、残り3つを選択式にする感じて再現できると思うんだけどどうだろ
https://twitter.com/5chan_nel (5ch newer account) いいね! 次の次くらいにやっても良さそう
ただし2つは無難で関連性のあるもの、3つは変わったものとか、出題側での配慮は必要そうです お題→『クッキー』『庶民サンプル』『肉襦袢』『信楽焼』『マンティコア』締切
【参加作品一覧】
>>849【伝説の怪物、現る!?】 では、、今回はリレー企画をやりますが、お題は普通に5つです
お題安価>>859-863 エラーを繰り返してたら、間に合いませんでしたorz ☆お題→『蜂蜜』『メール』『銭湯』『広告』『中の人』から1つ以上選択
☆文字数→3レス+予備1レス以内に収めれば何字でも可。
1レス約2000字、60行が上限。
☆締め切り→3/22の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。
【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】 【リレー企画の参加者を募集します】
・定員は3名で、早い者勝ちです
・1人1レスのみ、今回お題から各自1つ以上選択します
・3レス目の締め切りは、企画の成否にかかわらず、2週間後とします
参加希望の方は、ポジション【1/2/3】のいずれかを明記の上、このレスに安価してください
・ポジションが取れ次第【1】の方は書き始めて頂いて結構です
・作品のタイトルは【1】の方が決めてください
・投稿の際【リレー企画:作品のタイトル(1)】のように、企画作品であることを明記してください
・【1】【2】の方は、次の方のために、自分の担当レスの提出予定日を宣言してください 『エラー』で採用しようかと思いましたが、集まったのでw
供養はちょっとお待ちを
リレー企画、誤解のないように申し添えておきますが、話の内容や文体に制限はありません
3作でそれなりに話が成立すればオッケーです リレー企画は集まらなさそうね・・・
募集は続けますが、供養や今回作品の投稿があればどうぞ・・・ では、供養させていただきますorz
お題:『クッキー』『庶民サンプル』『肉襦袢』『信楽焼』『マンティコア』
【異世界召喚物語】(1/2)
気が付けば見知らぬ人達に囲まれていて、と言うのは、加藤 直也にとっては、実はそれほど珍しい事ではない。
それほどアルコールに強い訳でも無いにもかかわらず酒好きな為、記憶を失うことが度々あるからだ。
ただ、どう言うわけか――直也自身には自覚が無いのだが――信楽焼のタヌキにひどい執着があるらしく、気が付いた時には、タヌキの置物を抱いている事が多く、彼のアパートには大小様々な信楽焼のタヌキが集まっていた。
その為、この時も……
「離せ!! 離さんか小僧!! よりにもよって姫の御前で、この様な!!」
「あ? ん、んあ?」
目の前に“居る”のは、まるで生きているかの様なリアリティーを持った信楽焼のタヌキ。
そのタヌキが、直也の手から逃れようと四苦八苦している。
そして周囲には、人間とは思えないシルエットをした物モノの群れ。
「……うっわー、何だこれ? 夢?」
「夢ではない!! 起きたのなら儂を離さんか!! 小僧!!!!」
怒りの為か顔を真っ赤にする信楽焼をまるで不思議な……いや、事実不思議なのだが……物を見た様な惚けた表情で眺めていた直也だったが、しかし「やっぱり夢か」と呟くと、再び目を閉じる。
「寝るな小僧!! ね〜〜る〜〜なぁ〜〜〜〜!!!!」
******
直也は頭に出来たタンコブをさすりながら、胡坐をかいていた。
彼の隣には先程の信楽焼のタヌキ……ではなく、リオンラクーンと言う種族のシャガラーキが片膝をついていた。
リオンラクーンと言う種族は幻術を得意とする種族であり、このシャガラーキはその中でも高位の使い手だと言う。
その幻術は、空間ですら騙す事が出来るらしい。
つまり直也は、世界を“騙して”この異世界に召喚されたのだ。
「クックック。中々楽しい見世物だったぞ? シャガラーキ」
「お戯れを姫様。このシャガラーキ、御前での醜態、汗顔の至りでござりまする」
直也とシャガラーキの居る床から数段上にある、やけに豪奢な椅子に座るのは、まるで冠の様に見える角に、刻褐色の肌、漆黒の長い黒髪を持った、深紅のドレスを着た少女。
シャガラーキが言う通りであるなら何処ぞかの姫であり、日本生まれの日本育ちである直也にはなじみの薄い“王族”と言うやつなのだろう。
ならば、ここは謁見の間であり、周囲を囲ってるのは貴族……なのだと思われる。
ただし、それに確証が持てないのは、その周囲にいる者達が、いわゆる“人”の形をしていなかったからだ。
百鬼夜行。
そんな言葉がぴったり来る様な異形の者達。誰一人として同じ形の者など居ない空間に、直也は……特に気圧されても居なかった。
(SAN値直送ってやつだな)
ふわぁ……と欠伸を一つすると、腕をボリボリを掻き毟る。酒を飲んだ後特有の気怠さが彼の体を包んでいたと言うのも理由の一つだろう。
「ふむ、これが“向こうの世界の”庶民と言うヤツか? 何ぞ、間抜けな顔をしておるな」
「御意に、向こうの世界の“あらゆるモノ”の中で“最も平均的”なサンプルを選びましたのでするが……成程、平均がこの程度であれば、異世界侵略も容易かと」
「はい?」
「小僧!! 勝手な口は慎め!!」
あまりに物騒な話に思わず直也が声を上げると、シャガラーキが彼を制する様に怒声をあげた。
「いやいや、出しますよ、ものっそ出しますって、だってオレ等の世界、侵略するとか言ってるんでしょ? そりゃ出しますって」
「えぇい!! 黙れ!! 黙らんか庶民の分際で!! 本来なら、その首、掻っ切ってるところぞ!!」
「だ〜まり〜ませ〜ん!! オタク等も、あんま舐めた事言ってると、痛い目みせちゃるぜぇ!!」 【異世界召喚物語】(2/3)
まるでおちょくるかの様に直也は両手を顔の横でワキワキさせながら舌を出す。その表情に、シャガラーキの目が更に吊り上がった。
そしてそれは、周囲の者達も同じであった。
当たり前だろう。
ただの人間。それも、何の力も感じさせない“庶民”が、この大勢を前に、まるで全員を相手にして勝てるかの様な、啖呵と言うのもおこがましい軽口を叩いているのである。
「クックック。言いおるではないか庶民。本来なら耐久力を調べる為の実験動物にしようと思っておったが、やめじゃ! 今直ぐ後悔の中で死んでゆけ!!」
そう、姫が宣言すると同時に、直也の周囲にいたモンスター達が、怒声をあげながら襲い掛かって行った。
瞬く間に化け物共の群れに飲み込まれる直也。
「フンッ! 口ほどもな……」
ビユン!! ドゴン!!
「は?」
姫が呆気に取られる。えらい勢いで飛ばされ、壁に張り付いたのはリオンラクーンのシャガラーキ。そしてその後、次々に姫の配下のモンスターが投げ飛ばされ、壁に張り付いて行く。
「ってか、面倒だぁ!!」
直也はそう叫ぶと、手近に居たマンティコアのサソリの様な尻尾を鷲摑みにして、それを振り回し始めた。
ドゴンドゴンと重量物がぶつかる音が響き、モンスター達が弾き飛ばされる。
「な、何じゃ!! その体は!! さ、さっきと体形が変わっておるではないか!!」
「え? 疑問に思う所、そこ?」
姫の叫びも尤もだろう。今の直也の身体は、先程の8倍近くに膨れ上がっていたのだから。
「え? 肉襦袢だよ肉襦袢」
「そんそんな訳有るかぁ!!」
「おっと、これ以上振り回したら死んじまうか」
そう言って、マンティコアを放り投げると、次に直也はサイクロプスに狙いを付けた。
「さ〜あぁ、悪い子は居ねがぁ〜」
「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ぶぎゃう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「あんぎょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「ぎょらぱあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ひぃぃぃぃ……」
阿鼻叫喚である。 【異世界召喚物語】(3/3)
******
最後の仕上げとばかりに、姫の尻を百叩きにした直也は、「もうしません、ごめんなさい」とすすり泣くモンスターの姫を見ながら溜息を吐いた。
「っと、確かこの辺りに……」
どうやら、巻き込まれ召喚されたらしい自分の鞄をガサゴソと漁っていた直也は、目当てのものを見つけると、姫の前にしゃがみ込んだ。
「う、うえ、ごめんなさい、もうしません」
「おい、こっち見れ」
「うえ? んう!」
姫の口に突っ込まれたのは、茶色で丸く薄い物体。
思わず吐き出そうとしたそれを直也は無遠慮に押さえ込み、「食え」と一言だけ言った。
おそるおそる、それをかみ砕く姫。
「!!」
「旨いだろ?」
その言葉に姫は思わす盾に首を振った。
「侵略とか、物騒なこと言わんで、遊びに来るってだけなら、御馳走してらるからよ、まぁ、お行儀よくな?」
「うん……」
******
こうして地球侵略の危機は去って行った。もっとも、侵略されたとしても返り討ちにしていた可能性もある訳だが。
確かに、シャガラーキの呼んだ直也は平均だった。しかし“ありとあらゆるモノ”の中での話だ。
そう、神話で語られる神々や伝説の存在も含めてでの話である。
もし、シャガラーキが、“人間の中だけで”の平均を召喚していたのなら、話は又違っていただろう。
ともあれ地球は今日も平和だった。
「直也殿〜!! 遊びに来たのじゃ!!」
「ん? おう、ゆっくりしてけ」
時折、異世界から、遊びに来るモノができた様だったが。 今回のお題一般小説で使えそうなやつばっかやん
≫866
リレーは前回一番もらってキラーパス呼ばわりされたんで、今回はあんまりやることない2番行ってみるよ >>866
>>873 だけどすまねえ安価ミスった
ご確認をー では、僭越ながら一番をやらせていただきます
おおよそ三日後の水曜にはアップさせていただきますので、よろしくお願いします いやあれはまごうことなきキラーパスでしたが^^;
1番を取る人は、、、現れましたねありがとうありがとう><
>>869
結果的には無駄にお待たせを、、普通に3レス分の長さ、、なんで2レス分だと思ったんでしょう?
『信楽焼』のアイツ、『庶民サンプル』の主人公、『肉襦袢』だよw、『マンティコア』を投げ、姫に『クッキー』
平均、、どこの世界でも平均はとんでもなかった・・・
タヌキ=盾のヒロインのイメージなので、普通におっさんで安心しましたw >>877
感想有り難うございます
自分のイメージだと、タヌキといえば八百八狸なので、どちらかと言えば水木○げる風ですw
そして、『縦に首を振る』を『盾に首を振る』と誤変換したのは、きっと盾の呪いですw >>865
使用するお題→『蜂蜜』『メール』『広告』
【また会いたいな】(1/2)
※レイチェルシリーズ無印編(スレ5>>843【気分はいつでも西部劇】〜スレ6>>605【再会、そして新たな道へ】)を一通り読んでおくことをオススメします
ある日の朝、一人の少女がイグアナを連れて公園の中を散歩していた。
その少女の名はアニー、そしてイグアナはトニーで彼女の愛するペットだ。
ベンチに座ると手に持っている紙袋から何かを取り出す。それは近くのパン屋で買った蜂蜜トーストだった。
「あそこのパン屋の蜂蜜トーストはすっごく美味しい。ほらトニーもどうぞ」
トーストを少しちぎってトニーに与える。トニーもそれが大好物のようで美味しそうにムシャムシャ食べる。
「レイチェルさんがいなくなってから、やっぱり寂しいなあ…」
レイチェルは半年ほど前、大学生の時のボーイフレンドであるライアンと再会し結婚、そしてシチリアへ旅立ったため、彼女はもうこの街にはいない。
レイチェルがライアンと結婚して、彼とシチリアで楽しく生活していることを考えるとすごく嬉しいけど、やはり恋しくなってくる。
「レイチェルさんと遊んだりした日々、すごく楽しかったなあ」
トニーもアニーの言うことを理解しているようで、彼女がレイチェルのことを話す度にコクリと頷く。
やはり一番思い出に残っているのが、ナタリーに捕まって絶体絶命のレイチェルを救い出したことだ。
「トニーは大ピンチのレイチェルを救って本当に偉い子ね。それに無くした拍車も見つけ出したんだし」
アニーはトニーの頭を優しく撫でる。トニーもハァハァと舌を出して嬉しそうだ。
「あっアニーじゃない!」
「バーバラ?久しぶりね!」
アニーの目の前に現れたのはバーバラだった。かつて仕事で忙しい両親の代わりに、
ベビーシッターとして来てくれたレイチェルにお世話してもらったことのある少女だ。
アニーとバーバラはお互いレイチェルを通じて仲良くなった関係だ。
「レイチェルさん、もういないんだよね。レイチェルさんの結婚式に参加したかったけど、都合が悪くて行けなくて残念…」
「うん、でもライアンさんと結婚した時のレイチェルさん、すっごく幸せそうで本当良かったよ」
「レイチェルさん、明るくて優しくて楽しい人だったよね」
「初めてレイチェルさんを見た時は変な人だなあ、とは思ったけど同時に面白そうって印象も強かったわ」
「やっぱりあのガンマン衣装が素敵よね」
「うんうん!」
それからレイチェルのことについて、ひたすら楽しくおしゃべりをする。
「あのレイチェルさんの帽子を奪った男の子、今頃どうしてるんだろうね?」
「さあ、今も少年院でシバかれてるんじゃないの?」
「それからレイチェルさんをしばらく見かけない時期もあったよね」
「そうそう、急にいなくなるからビックリしちゃった。でも、ただどこかに出かけてただけで安心したわ」
「あっ!バーバラちゃんに見せたい物があるんだ」
「見せたい物って?」 【また会いたいな】(2/2)
アニーはどこからともなくノートを取り出す。ノートに貼ってある、地元の新聞から切り抜いた広告をバーバラに見せる。
「これを見て。レイチェルさんがなぜか市長選に立候補された時の広告の一部よ」
「レイチェルさんに清き一票!…ってレイチェルさん、市長になるつもりだったんだ」
「ううん違うの。レイチェルさんは最初から市長になるつもりなんて全然無かったのに、町の誰かさんが無許可で勝手に立候補してこの広告を作ったのよ」
「これ見た時、レイチェルさん本当にビックリしてたわ」
「まあ、あれだけの活躍ぶりを知ったら、市長に立候補したくなっちゃう気持ちも分からなくはないかもね…」
「あとそれからね、私、実はレイチェルさんとメールアドレス交換してあるんだ!」
「あら偶然ねアニー。実は私もなのよ!」
お互いのスマホを見てみると、ちゃんとレイチェルのメールアドレスが登録されていた。
「こう、ちょっと退屈な時はレイチェルさんとメールのやり取りして楽しんでたわ」
「レイチェルさん、結構いろんな話題を提供してくれて面白かったわ」
「なんかナイトバザーの帰りに豪雨に見舞われて、赤信号で止まった時、血で染まった腕に足を掴まれたと思ったらただの赤いロープが絡まってただけだったり…」
「あとアウトドアに出かけた時、クマに追いかけられてブーツを片方持っていかれたりとかね」
もうすっかりレイチェルの話で夢中で、気がつけばお昼を過ぎており、お互いお腹がグゥーッと音を立てた。
「あっ、もうとっくにお昼来てたのね」
「楽しい時間ってあっという間に過ぎるものよね」
「近くのコンビニで何か買って食べようよ」
「いいわね」
「トニーもお腹空いたでしょ?」
トニーはうん!と元気よく相槌を打つ。
ベンチから立ち上がるとアニーとバーバラは近くのコンビニへと向かう。
「また、レイチェルさんと会えたらいいな」
「うん、メールで色々お話しとかしたいけど、ライアンさんとの生活を邪魔しちゃ悪いしね」
「確かレストランを開くみたいだから忙しくなりそうだしね」
「でもレイチェルさんと一緒に撮った写真があるから、寂しくなった時はそれを見てるんだ」
「私もよアニー。レイチェルさんはいつでも私達を元気づけてくれた。それを絶対に忘れちゃダメ」
「そうよね!今は心からライアンさんとの生活を応援しなくちゃ!」
レイチェルさん大好き by アニー&バーバラ >>882の最後の一部に誤りがあったので訂正
×レイチェルさん大好き by アニー&バーバラ
○レイチェルさん大好き by アニー&バーバラ(そしてトニーも) >>880
カースシリーズw
>>881
今回も早速w
『蜂蜜』トースト、市長選の『広告』w、レイチェルと『メール』
アニートニーの話かと思ったら、意外な人物がw
ずっとシリーズを追ってると、色々あったなぁ、って思い出しますね >>884
感想ありがとうございます!
レイチェルがライアンと結婚してシチリアに旅立ったおよそ半年後の番外編です
シリーズで比較的出番の多かったアニーとトニーのスピンオフを書けて楽しかったです
でも彼女達だけじゃ寂しいかなと思って、ベビーシッター回のバーバラも共演させちゃいましたw
あと読み返してみるとアニー、ボクっ娘なのに一人称が何故か私になっているミスもあって「あちゃあ」となりました
ま、まあ子供は一人称が安定せずにコロコロ変わりやすい、ということで(笑)
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! >>881
閑話と言った所でしょうか?
懐かしい人を思い出して話し込むと言うのも良くある話ですね
レイチェルさんがSNSをやっていれば、きっと二人の話題も尽きないでしょうね >>886
感想ありがとうございます!
バーバラはレイチェルのおかげで両親が以前よりも一緒に遊んでくれる時間が増えましたから、レイチェルにはすごく感謝しているんですよね
そうですね、もしシチリアでのハロウィンやVS謎の忍者騒動を聞いたら一日ずっと大盛り上がりしてそうですw
もし黒猫衣装のレイチェルを見たらどんな反応をするのか、想像しただけで面白いですウフフ
楽しんでいただけて本当に嬉しいです、ありがとうございます! >>865
使用するお題→『蜂蜜』『メール』『銭湯』『広告』『中の人』
【魔法少女、最後の闘い】(1/3)
※魔法少女ナツミシリーズ完結編です
ナツミは魔法少女に変身し、そのパワーで凶暴で凶悪なモンスターの脅威から町の人々を守り続けていた。
ある朝、ナツミは制服に着替え、食卓でこんがり焼けたトーストを美味しく頬張っていると、新聞を読んでいた父が言った。
「なあナツミ、この一面を見ろよ」
「ん?何か面白いニュースでもあったの?」
父が見せたのは新聞の一面に大きく飾られた魔法少女の写真だ。まさにナツミ自身のことであった。
「(えっ、いつの間に誰が写真とか撮ったのよ…)」
「この魔法少女、本当に大活躍で凄いな。それにしても、どことなくナツミに似ているような感じだが気のせいかな?」
「き、気のせいよお父さんアハハ…(まずい、バレたらどうしよう)」
「それに今日ね、こんな広告も入ってたのよ」
今度は母が一枚の広告を見せる。その広告にあったのは「魔法少女さん、我々はあなたを愛している」の言葉と一緒に描かれた、魔法少女姿の自分だった。
「(こ、こんな広告勝手に作って!で、でもなんか嬉しいような…)」
「私達も今度会ったら握手かサインが欲しいわね」
「あ、もうこんな時間!私、行かなくちゃ!」
トーストと牛乳を一気に口に入れると、ナツミはカバンを持って家を飛び出した。
「ここまで話題になってたなんて全然知らなかった。まあスーパーヒーローみたいなものだから仕方がないか…」
一方、非常に深い地下の広い空間の中でモンスター達が集まって、何やら会議をしていた。
「我々モンスターの勢力は、憎き魔法少女ナツミの手によって崩壊の一途を辿っている。それを阻止するには、確実に彼女を抹殺せねばならん!」
「そうだそうだ!生意気な魔法少女なんか容赦なくブッ潰してしまおう!」
「骨も残らないくらいにな!」
「そのためには我々も捨て身の覚悟で挑まなければならん!あいつは強すぎる!」
「何か計画でもあるんですかリーダー?」
「ああ、もちろんだ…」
学校へ向かう中、ナツミのスマホの着信音が鳴る。メールのようだ。
一体誰からなのかとバッグからスマホを取り出して見てみるが、そのメールにはこう書かれていた。
"ナツミよ、我々はお前の正体を知っている。それからお前はあと数日の命だ"
その言葉にナツミは驚き冷や汗を流すが、メールの送信元は一切表示されていなかった。
「い、一体誰よ!イタズラメールにしてはやりすぎよ!まさか私を脅している気?」
その後も奇妙な通知がたくさん届き、ナツミは怖くなってスマホの電源を切ってしまった。
「(ガハハ、確実に動揺している。情けない姿だ、魔法少女よ…)」
物陰から誰かがニヤニヤしながらナツミの姿を眺めている。
今日は期末テストの最終日でしっかり勉強しているはずなのに、ナツミはあのメールのせいで試験に集中できなかった。
テストの最終日ということで今日の授業は午前中に終了した。
「ナツミン、今から一緒に喫茶店に行ってケーキでも食べない?」
「ご、ごめんユカリン!今日ちょっと家族で用事あるから、じゃあねバイバイ!」
親友のユカリの誘いを断り、ナツミは急いで家に帰る。 【魔法少女、最後の闘い】(2/3)
ふと公園に立ち寄ってスマホの電源をつけてみると、不気味なメールは既に100件以上も届いていた。
「悪ふざけにしては度を越しているわ。こうなったら警察に相談するべきかしら」
すると遠くからドゴーン!と凄まじい爆音が響いてきた。
「モンスター襲来!?こうしちゃいられない!」
今はメールのことで悩んでいる場合じゃない。ナツミは急いで赤いペンダントで魔法少女に変身し、爆音のする方へと向かう。
そこでは大きな黒い塊のロボットのような怪物が大暴れしていた。
「モンスター、また自分から無残にやられに来たのかしら?」
「口を慎め、生意気な魔法少女よ。今回の我々は本気だ、ナメてかかると痛い目に遭うぞ」
ロボットの中からであろうか、モンスターの声が響き渡る。
「そのセリフ、もう100回は聞いたわ」
「我々モンスターは元々700体の一大勢力であったのに、お前のせいで僅か10体にまで減少してしまった」
「ほとんど壊滅してるのと同じじゃん」
「今回はまさに我々モンスターの存亡をかけた最後の闘いだ。確実にお前を抹殺する!」
「そんな存亡とかどうのこうのは私にしちゃどうでもいいこと。来るならさっさと来なさい!」
ロボットの中では、生き残りの10体のモンスターが操作していた。
「食らえ!地獄の炎というものを!」
ロボットのアームから勢いよく繰り出される火炎放射、しかしナツミはそれをあっさりと回避する。
「廃虚となった銭湯にあったボイラーを盗んで改造したものだ!ちょっとでも食らうと火傷どころじゃ済まないぞ」
「いくら強力でも当たらなければ意味がないじゃない。知らないの?」
ナツミは次々と繰り出される火炎放射や冷気光線、放電といったバリエーション豊富な攻撃を軽々と回避していく。
どんなに攻撃をしても彼女に当たらない、しかしそれがモンスターの狙いだった。
一瞬、ロボットの攻撃がストップし、ナツミが地上に降りたその時だった。
ベチャッと変な音がし、足下を見てみるとオレンジ色のベタベタした液体のようなもので地面が覆い尽くされていた。
「な、何これ!?なんか良い匂いがする、もしかして蜂蜜?」
「ガハハ!その通りだ!」
ナツミが攻撃を避けるのに夢中になっている隙を狙って、地面を大量の蜂蜜で覆ってベトベト地獄にしたというわけだ。
「う、動けない!」
「いくら強力な魔法少女でも動けなくなったら全然怖くない!」
ロボットのアームから冷気光線が放たれ、ナツミの体がどんどん凍っていく。
「つ、冷たい!や、やめて…!」
ナツミはベトベト地獄で身動きできないまま、容赦なく氷漬けにされていくしかなかった。
とうとう完全にナツミの体は凍りついてしまった。町の人々も成す術なくやられる彼女の姿に絶望を感じるしか他なかった。
「やったぞー!ついにナツミを倒したぞー!」
「我々の完全勝利だ!」
モンスターのリーダーがロボットから降りてナツミの方に歩み寄る。
「あとはハンマーで粉々に砕ければOK、でもその前に…」 【魔法少女、最後の闘い】(3/3)
リーダーはどこからともなくマジックを取り出して、氷漬けになったナツミの体に「バカ」「アホ」「マヌケな女」と落書きして遊ぶ。
ロボットの中からその光景を見て、下っ端の一人がゲラゲラと笑うがその拍子に赤いボタンを押してしまう。
その赤いボタンは火炎放射を発動するもので、その炎が氷漬けになったナツミに直撃する。
強力な火炎放射のおかげで氷が溶けていき、ナツミは完全に自由の身となった。
「やった!自由になれた!さてっと反撃開始といきますか!」
「く、くそぉ!こうなったらヤケクソだー!!」
リーダーは急いでロボットに乗り、再び猛攻を始める。しかし、ちっともナツミの敵ではなかった。
ヤケクソの攻撃を軽々と回避し、ナツミは勢いよくジャンプするとロボットに飛び蹴りをクリーンヒットさせる。
「こ、こんな形で壊滅とか…そんなバキャ…!!!」
ロボットの体にヒビが入り大爆発、その断末魔と共にモンスターは全て消滅してしまった。
「やったー!今回も魔法少女大活躍だー!!」
人々が歓喜に満ち溢れる中、ナツミは急いでその場から飛び去っていった。
「今度こそ中の人が誰か掴めるチャンスだったのになあ…」
陰でナツミの勇姿を撮影していた新聞記者達が悔しそうに呟く。
ナツミが物陰に隠れて変身を解除したその時、ペンダントがパリン!の音と共に割れてしまった。
「割れちゃった!?ど、どうして!?」
「魔法少女としての使命を果たし終えたからです」
その言葉と共に現れたのは、あのナツミに魔法少女に変身できるペンダントを渡した謎の妖精だった。
「ナツミよ、あなたのおかげで凶悪なモンスター勢力は完全に滅亡となりました。もう二度と現れることはないでしょう。心から感謝しております」
その妖精は、モンスター勢力に容赦なく一族を殺された被害者だったのだ。その悪の組織による暴虐から人々や世界を守るため、
必死に魔法少女に相応しい人物を探していたのだ。それがまさにナツミだったというわけだ。
「私の目は間違ってはなかった。ナツミ、あなたは最高の魔法少女でした。今まで本当にありがとう。私とも二度と会うことはないでしょう…」
妖精は既に寿命が来ていたのであろうか、それが最後の言葉となり消滅してしまった。
「そ、そんなあ…こんな別れなんてないよ…」
ナツミの目からポロリと大きな一粒の涙がこぼれる。
・・・・・・・・・・・・
あれから2年が経過し、ナツミは既に高校を卒業して就職していた。
魔法少女になってモンスターと闘っていた日々は、とても良い思い出として残っている。
魔法少女に変身して悪と闘いたくなる時も今もよくあった。でもやっぱり平和が一番だ。
「妖精さん。私、あなたの分まで力強く生きるわ!」
その言葉を胸に毎日を前向きに、そして一生懸命に生きる。それがナツミなのである。 >>888
これまたまさかの完結編で全選択とは
新聞に『広告』に、脅迫『メール』、『銭湯』のボイラー、『蜂蜜』攻撃w、『中の人』は知れず
まだまだ続けられたのではと思いますが、敵が滅亡では仕方ないw
最後はちょっと物悲しい、独特の世界観が楽しいシリーズでした
レイチェルシリーズほどの広がりはないにしても、なんかまだ引っ張れそう^^; >>891
感想ありがとうございます!
はい、突然ですが今回で魔法少女ナツミシリーズは完結です。もっと続けたいとは思ってたのですが、
これ以上強い敵を思いつかなくなったのと、基本一話完結式だけど日常色の強いレイチェルシリーズと違って
悪を倒していくのが目的のストーリー色が強いシリーズですからきっちり締め括ろうという考えが自然と強まってきたんですよね
ナツミの活躍やユニークなモンスター勢を色々と書けて本当に楽しかったです
でも今のところ続編とか番外編を書く予定は一切ないですね(もしかしたら気が向いたら書くかもw)
今まで楽しんでいただき、そして応援していただけて本当に嬉しいです! >>866
【リレー企画:『魔聖妖神奇譚アルカナ』】(1/2)
お題:『広告』『中の人』
『散りぬべき
時知りてこそ
世の中の
花も花なれ
人も人なれ』
不意に耳に届いた聞きなれた声に、天城 洋輔は思わずカードを捌いていた手を止めてしまった。
広告用の店内モニターの中では、随分と現代ナイズされた甲冑姿の姫武者が周囲の男達をバッタバッタと切り倒している。
多くの来店客が足を止め、中にはスマホで写真をとっている者も居た。
そんな人達を横目で見ながら、洋輔は、つまらなさそうに筐体のモニターを睨み付ける。
(最近の中の人は、随分と露出の多い事で)
「へっ」っと鼻で笑いながら頭の中で悪態を吐くと、広告用モニターに映る、中の人こと九条 空音の姿を盗み見る。
モニター越しの彼女は、キリリとした表情で自身の担当するキャラクターの衣装を纏い、まるで本物の姫武者の様に見えた。
洋輔と空音の家は隣同士で、昔から家族ぐるみでの付き合いがある。
その為、洋輔も彼女とは物心付く前からの知り合いであり、空音とは良く一緒に遊んだものだった。
洋輔が前を歩き空音が後ろをくっついて行く……そんな関係に終止符が打たれたのは、彼女が声優に成ったからである。
そもそも空音は「女優さんになりたい」と言う夢を持っており、その為、子供でも所属できる劇団に入っていた。
そして、彼女が12才の頃受けたオーディションで、見事合格したのである。
それこそが、今洋輔のやっているアーケードゲームであり、しかし、その時の空音の役は大勢いるキャラクターの内の一人にすぎなかったのだが。
しかし、このゲームが大ブレイクし、その上、空音の声をあてていたキャラクターが、メインヒロイン達を差し置いて、まさかの大人気キャラクターとなったのである。
そうなれば、中の人である空音に注目が集まらない訳はない。
彼女は、その整ったルックスも相まって、一躍アイドル声優の道をひた走る事と成ったのである。
当然だが、決してそこまでの道のりが平坦だった訳ではない。彼女がどれ程努力を重ねて来ていたか等と言う事は、洋輔だって知っている。
ただそれと、どうにもできない持て余した感情が沸き上がる事を止められないと言う事とは関係は無い。
そればかりは、理屈でどうにか成ると言う話では無いからだ。
しかし現状、洋輔はただの学生でしかなく、洋輔と空音の関係は、ただのご近所さんでしかない。
そんな彼が、彼女にとやかく言える事など何もなく、精々、このゲームで空音が声をあてているキャラクターを使わないと言った程度の抵抗しか出来なかった。 【リレー企画:『魔聖妖神奇譚アルカナ』】(2/2)
ゲームが終わり、筐体からカードが吐き出される。
洋輔は何時もの様にそれに手を伸ばす。今日の戦果はコモン13枚にアンコモン5枚。Sレアとまでは行かなくともレアくらいは引いて置きたい所だった。
「!!」
カードが手に触れた瞬間、静電気が走った様な痛みを感じ、洋輔は思わず手を離す。
自分の手とカードとを交互に見返すが、しかし、その原因が分かる訳も無く、洋輔は恐るおそると言った感じで、カードを引き抜いた。
ホッと息を吐き、クルリとカードを表に向けた洋輔だったが、そこに描かれていたキャラクターを認めると彼は顔を顰める。
『EXR:細川ガラシャ』
ホロ印刷されたそのカードは、まごう事なきレアカードであり、それを手に出来る者はほとんどいないだろう。
だが……
「こんなデザイン、ゲーム雑誌に載ってたっけ?」
ガラシャと中の人がダブって見える様なデザイン等、洋輔が知る限り記憶には無い物だった。その強さも含め、色んな意味でエクストラレアなのだろう。
だが、そのカードは洋輔にとっては確かに鬼門だった。
何せ、このキャラクターこそ、あの空音が声をあてているキャラクターに他ならなかったからだ。
当然だが、このカードを洋輔が使う事は無い。まさに無用の長物である。
洋輔は、そのカードをごみ箱に捨てようとして、しかしなぜか捨てる気が起きず、結局思いとどまった。
「カードやキャラクターに罪がある訳じゃないしな」
そう呟くと、そのカードはデッキケースに仕舞わずに、そのまま制服の胸ポケットに仕舞い込んだのであった。
******
スマホを操作しながら、洋輔は家路を歩く。
色々なネットの情報を見てみたのだが、やはり、あのカードについての情報は皆無だった。
「限定カードって事なのか?」
チラリと、カードをしまっている胸ポケットの方を見る。だからと言って答えるはずも無いのだが。
もうすぐ自宅と言う所で、洋輔は車が止まっている事に気が付いた。車中の男女であろう二人は、外からでも分かる程に近い。
(こんな真昼間からさかってんじゃねぇよ……)
眉根を寄せながらも、視線を逸らし通り過ぎると、その直後、車のドアがガチャリと開き、誰かが小走りで降りて来た。
その人物が彼の脇を通り過ぎる時、洋輔は思わ磁目を瞠った。
「空音?」
その呟きに反応したのか、その人物……空音が驚いた様な表情で振り返る。
「ヨーちゃん?」
「お、おう」
何とも気拙い気分で洋輔が視線を逸らす。空音はどこか安堵したような表情を浮かべるが、しかし次の瞬間、ビクリと身を震わせると「ゴ、ゴメンね? ちょっと急いでるから」と言うが早いか踵を返して走っていっていまった。
「……何やってんだよ、俺は」
手で顔を押さえながら、洋輔は自己嫌悪で思わずため息を吐いたのだった。
だから、気が付かなかったのだろう。そんな洋輔に鋭い視線を送るものの存在を…… >>893
キラーと言うか、、全力で風呂敷を広げちゃった感じですね・・・
なんで誰が書いても2レス使ってしまうのか!
『広告』のキャラ、『中の人』はお隣さん
謎のカードと中の人の事情、続きが気になります! ふろしき広げまくってるぶんにはいいと思うな
割とまとめるだけだからアイデア出しはかなり楽だよ
二番手、明後日中には書きます
あと進行さん、これの字数制限だいぶ厳しいものあるから3レスにしたほうがいいと思う まぁー、この続きを1レスってのも書きにくいでしょうから、3レスでも仕方ないですね
もちろん1レスで超手短にまとめてくれてもいいのよ! >>888
魔法少女ファイナルですね
世界を荒らしていたモンスターも、これで居なくなりましたね
世界の平和を守ったナツミ、修造並のポジティブも流石です
>>896
感想有り難うございます
実の事を言えば、これでも半分近くエピソードを削ったのですが……
自己申告の締め切りギリギリになり、あわてて投稿と言う体たらく
1スレに纏めきれず、申し訳ありませんでしたorz >>899
感想、嬉しいお言葉ありがとうございます!
ナツミのモットーはいつまでも悩んでいないでまっすぐ行こう!ですからね
彼女のポジティブで尚且つちょっとやそっとでは絶対に折れない精神の強さに妖精さんは惹かれたのです
レイチェルに対するライアン、カナミに対するハヤトのようにナツミにも恋人的存在を作って
恋愛要素も取り込もうと考えたのですが、余計かなと思い結局ボツになりました
とにかくナツミとモンスターの激しいバトルをメインにして書きたかったのでw
今まで応援していただき本当にありがとうございました! >>899
うーんそれはそれでなんかすまぬです
ただ1レスルール、厳守させようとは思わないですけど、無制限に緩和するわけにもいかねえ >>865
使用お題→『蜂蜜』『メール』『銭湯』『広告』『中の人』
【銭湯のクマさん】
番台に女一人。ロビーにクマ一頭。
「なあ」
「何かな、クマさん」
黒々とした毛皮が、湿り気を帯びてつやつやと光る。
「客、来ねえな」
このクマはほとんど毎日顔を出す。初めて来た時は、男湯のみならず建物全体が獣臭くなり、皆大いに困ったものだが、今ではすっかり清潔なクマである。
「来ないね。もう少ししたら来ると思うけど」
まだ早い時間なので、客が来ないこと自体に不都合はない。だが問題はそこではない。
「なあ」
「何よ」
「バランスシートは大丈夫か」
「……はっ?」
「BSCは作ってるか。KPIは設定してるか?」
「……このクマ何言ってんの」
どこで聞きかじったか、このクマは、難しいことを話すのが好きなのだ。
「とりあえず……広告でも出したらどうだ」
つまりはこの銭湯の経営を心配しているのだった。
「そうだね。広告でも出したらいいかもね」
客の入りが悪いのは事実だ。常連客はそこそこ入っているが、ともすると赤字になりかねない状況だ。
「なあ」
「何?」
「『蜂蜜の湯』ってのはどうだ」
「何それ」
「蜂蜜だ。クマの好きな蜂蜜だ」
そう言いながら、両手で持ったカップを器用に傾ける。風呂上がりに蜂蜜の入った飲み物。このクマの習性だ。
「よく分からないけど……それってクマ得なだけよね。却下よ、却下」
言われてクマは気落ちしたか、少しの間だけ黙っていたが、やがて再び口を開く。
「なあ」
「……今度は何よ」
「インターネットだ」
「はあ」
「メールマガジンなんてどうだ」
「……いいんじゃない」
するとクマは満足そうにうなずいて、カップの中身を飲み干す。
「俺がクマだ」
「……そうだね」
「これを見ろ」
どこからともなくタブレットを取り出すクマ。あるサイトを開く。
「オダイチューブ?」
動画サイトだ。
「これだ。この……ナントカ太郎ってやつだ」
「はあ」
「こいつには中の人がいるようだが……いないかも知れんが……俺には中の人などいない」
「ああそう」
クマはまた一つうなずく。
「もふもふだ」
「もふもふ?」
クマはうなずく。
「もふキャラだ」
「…………どゆこと?」
クマは大仰にうなずく。
「俺がクマ――」
「あっ、お客さんだ。いらっしゃーい」
こうしてクマの話は尻切れとんぼに終わったが、筆者は、お題をすっかり消化した上、話が丁度一レス六十行に収まったので、そこそこ満足した。おしまい。 レス数が900を超えています。1000を超えると表示できなくなるよ。