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使用お題→『銀河で、検察官が、人捜しをする話』『ケチャップ』『オールスター』

【コンテンポラリー・ユニヴァースィズの私たち】(1/3)

「いらっしゃい」
 落ち着いた雰囲気の店内。初老の店主の穏やかな声が私を迎える。私はカウンター席に座る。店主と私の他に人影はない。
「ご注文は?」
「コーヒーで。あの、マスター」
 私が話し掛けるのを手で制して、店主はゆったりと告げる。
「慌てない、慌てない」
 言われた私は、店主の仕事を黙って眺めることにする。
 やがて私の前にコーヒーの入ったカップが差し出される。
「それで、ご用件は?」
「あの、私」
「ああ、ごめん。まずはコーヒーを飲んでからね」
 私はコーヒーを一口含んで、それを飲み込んでから、改めて話を始める。
「人を捜しているんです。その人は――――」

 * * *

「いらっしゃい」
 その店の中は薄暗く感じられたが、それは砂漠の日差しが特別に強かったからだ。
 私は数瞬立ち尽くし、目が慣れてくると、カウンターの中に店主の姿を認めた。落ち着いて歩み寄る。
「ご注文は?」
 私が席に着くと、店主が愛想良く話し掛けてきた。
「コーヒーで」
「コーヒー? うちにはそんなものありませんよ。あるのはコーラと、よく冷えたビールだけでございます!」
 私は店主の返答に面食らったものの、大人しくコーラを注文する。
「それでマスター、お聞きしたいことがあるのですが」
 私はコーラを一口飲んでから、そう切り出した。店内に他の客の姿はない。
「なんでしょう」
「私、人を捜しているんです。その人は――――」

 * * *

「いらっしゃいませですにゃー」
 林の中に隠れるようにして、その店は存在していた。店主の声は決して大きくはなかったが、よく通る声で聞き取りやすかった。
「ご注文はなんですかにゃー」
 カウンター席しかない小さな店だ。店主の頭には猫耳が生えている。
「コーヒーで」
「コーヒーですかにゃー。それはなんでしたかにゃー」
 私は答えに窮した。ここはコーヒーを出す店ではないのか。その後ろにあるのは?
「……ああ、コーヒーですにゃー。失礼しましたにゃー。これのことですにゃー」
 私は少なからず不安に駆られたが、余計なことは言わず、静かに待つことにした。
 やがて私の前に、間違いなくコーヒーの入った、なんの変哲もないカップが差し出される。
「どうぞですにゃー」
「ありがとう。あの、マスター。お聞きしたいことがあるのですが」
「なんでしょうかにゃー」
 私は、この優しそうな店主に事情を話すことにする。
「私、人を捜しています」
「そうなのですかにゃー。その人は脱獄囚ですかにゃー?」
 脱獄囚……? その発想はどこから出てくるんだろう。
「いえ、その人は――――」