>>37

使用するお題→『ジャム』『いいね』『夜空』『ダウンジャケット』

【バカップル漫画家と独り身編集者】(1/2)

「え? なんて?」

突然のことで自分でも間抜けな声だとわかる声が出た、いつもの癖で訪れたファミレス、いつもの時間、いつもの混雑具合に絶妙な居心地悪さを感じながら、手に取ったジャムサンドを再び更に戻した。

「別れよう…………って言ったの」

寝不足だからか、彼女から出るはずのない言葉が発せられたような気がしてくる、しっかりしろよネガティブなんてらしくねえぞ俺。

「デートに誘っても仕事ばっかり、スランプで書けなくなったときの気分転換の為にキープされてるみたいでいい加減いやなの」

不機嫌なようで今にも泣き出しそうでもある彼女、そんな彼女は見たことなくて、悪夢にしてはリアル過ぎて……………………

いや悪夢を見てる時はそうと気付けないもんだよ、どんなにリアルに感じて危機感を抱いても、起きてみりゃデキの悪い偽物だったなんて良くあることだろ俺。

「この前だって、アタシと一緒に初詣に行ったときより帰ってから漫画書いてる時の方がずっと楽しそうだった!!」

「そんなこと!!」

思わず怒鳴った、流石自分の夢だ突かれたら痛い所を確実につついてくる、いや……………………夢な訳ないか、自分にとことん甘い俺が、彼女を怒らせたままの夢を見るなんて有り得ない。

「………………ない、いや有る、確かに楽しいよ、楽しくなきゃやってらんないよ、でも………………いつも楽しい訳じゃない、君が何よりも必要な時だってある!」

「そういうの………………都合のいい女扱いって言うんじゃないの!?」

彼女の言うことは全部事実だ、言い返しようのない程のド正論だ、だから俺は取り繕わない、彼女がクズ丸出しの俺を嫌いになるなら、確かに俺達は彼女の言うとおりに別れるべきなんだろう。

「………………都合のいい、君が好きだ」

そうして、俺達はバカップルを辞めた。


痛む左頬を抑えて窓の外を見る、真っ暗に曇った夜空を明るい街の光が照らす、いつの間にか降り出した雨は異様に静かで、繁盛するファミレスの喧騒が意識と共に遠くなる。