>>866
お題:『蜂蜜』『メール』『銭湯』『広告』『中の人』

【タイミング】(1/2)


 羽田で飛行機を降りた僕は、京急線の改札に降りる広場で炭酸水を買う。
 視線を上げると『空飛ぶバナナ、ふんわり蜂蜜味』と言う広告を目にし、首を傾げた。

「東京銘菓って、鳩とかヒヨコじゃなかったけ?」

 視線を動かせば同系列のお菓子なのだろう『バナナカステラ』だとか『コーヒー牛乳味』だとかラインナップも充実しているらしい。

「……気には成るけど……まぁ、お土産は後回しかなぁ」

 どの道、帰りも空港を使うのだ、その時に確かめれば良いだろう。
 たまりにたまった有休を消化して来いと言うホワイトな我が会社の命令で、僕は東京観光に来ていた。
 時期的にどっかで祭りがあると言う訳でも無く、だからと言って野山を歩き回る趣味も無い。
 『まぁ、東京なら何かあるだろう』と言う消極的発想でここまで来たわけだ。

「あ、到着したってメール入れんと」

 「有給で東京まで行く」と言った時、一番に反応したのが某友人だった。気分が乗らない何て理由で会社をサボる度に有休を使っていた為、年度末のこの時期に有給はまったく残っていないらしい。
 「俺も有給残しておけばよかったぜ」とは言っても、使い切ったのは自業自得だ。
 『ご利用は計画的に』ってやつだな。

 どうせならと、変な形の自販機前で自撮りをしてメールを送る。
 『どこだよw』という返信が即座に来た。

「今、営業の時間じゃねぇのかよ」

 そのメールを読みながら思わず苦笑した。