ワイが書いた「菜の花、少女、突風」を晒す!(`・ω・´)

 一面に黄色い花が咲き誇る。野良着姿の少女は笑顔で踏み出した。
 体に触れた花弁がはらはらと散る。山間から朝陽が差し込み、菜の花は一斉に黄色く燃え上がる。
 少女は足を速めた。深く入り込んでくるりと回る。鮮やかな一色に囲まれて、それに相応しい黄色い声を上げた。
「これって――」
 急に口を閉ざす。頬に手を当てた形で俯いた。
「……思い出した!」
 その声に合わせるように菜の花が激しく揺れる。突風によって黄色い波が起こり、花弁が飛沫となって舞い飛んだ。
 少女は両手を広げた。全てを受け止めるような姿でゆっくりと歩き出す。厳かな顔を作り、自然体で口ずさむ。
「ラン、ランララ、ランランラン……」
 同じ調子で繰り返す。少女は異国の姫となって金色の野をゆく。
 そこに野太いエンジン音が聞こえてきた。少女の眉根に薄っすらと皺が寄る。次第に大きくなる音に歌声で対抗した。
 間もなく限界が訪れた。
「作業の邪魔になるだろ!」
 トラクターに乗った父親が声を張り上げた。少女は不機嫌な顔で振り返ると、いいじゃん! と怒鳴り返す。
「何がいいんだ!」
「見てよ! とってもキレイでしょ! 映画のワンシーンと同じなんだよ!」
「ふざけるな! 暖冬のせいで水菜がこんなに売れ残ったんだぞ!」
「もう、いいよ!」
 少女は大股で花を蹴散らした。畦に上がると口を尖らせて腕を組む。未だに鼻息は荒い。
 父親が乗ったトラクターは畑に突っ込んだ。全てを薙ぎ倒し、掻き混ぜる。
「雰囲気がぶち壊しだよ」
 目の前の現実を拒絶するかのように空を見た。大きな鷹が目に留まる。翼を広げた状態で薄青い空を横切っていく。
「……ユパ様が乗ってたりして」
 その一言で笑顔が戻った。