「おはようはん、真美」

「おはようさん。なんやおとん、ひょっこりはんみたいに言うて。っておとん! おまえ、その顔どうした!」

「虫歯になってしもうたんや。顔、腫れとるやろ?」

「ヒデブみたいになってんで。早よ、歯医者行きいな」

「いやや。絶対行かへん」

「はあ? アホな。おまえ破裂して死ぬ寸前みたいになってんで。早よ行きなや」

「いやや。行かれへん」

「何でや? 痛ないんか?」

「痛いっちゃー痛い」

「タモさんかいな」

「あいつら怒るから嫌なんや」

「あいつらって歯医者がか?」

「そうや。何でもっと早よ来んのかとか、ちゃんと歯磨いとんのかとか言うやろ? わしもいい大人やから、そんなんで怒られたないんや」

「いや、いい大人はそんな駄々こねへんで」

「今はまだ薬で押さえてるけどもな。でも大丈夫や。歯医者行かんでもいい方法を昨晩寝ずに考えたんや」

「おとん、おまえホンマにズレてんで」