「おとん、おまえホンマにズレてんで」

「まあ、聞けや。真美よ、そもそも『痛み』とは何ぞや? おまえも高校生や、それなりの考えはあるやろ」

「聞けや言うていきなり質問かいな。まあ、ええわ。うーむ、痛みかぁ。身体の危険を知らせる信号みたいなもんか?」

「せやな、身体に異常が起きたときそれを痛みとして脳に伝達をして、異常の除去を促す、それが痛みの役割や」

「ほう」

「では、聞くで。何でその信号の伝達に痛いという不快な現象が選ばれたんや?」

「知らん」

「それはな、痛みを与えんと人間ってゆうのは、なかなか治そうとせんのや」

「おとん、まさに、おまえやな」

「神が人間に対し、セックスには快感を、死には恐怖を感じさせるようにしたのは、そのどちらもないと人間という種族はすぐに滅んでしまうからなんや。ええ事ないとセックスもせえへん。脅さんと勝手に死による。怠けもんなんや、人間は」

「おまえが言うなや」

「つまりは痛みの目的は危機的状況の伝達、ということになる。ならば、や。その目的を果たしてやれば、痛みはその存在意義を無くすはずやないんか、わしはそう考えたんや」

「早よ、医者行ってこいって」

「存在意義を無くせば痛みも消滅して然り。本来こうならんとあかん。でも、実際そうはならん。何でや?」