やっと迎えたこの良き日。私は無慈悲な女帝と化す。鉄鋼でできたような素材感が美しい金のロングブーツと、男を惑わす露出のお多い甲冑。そして何よりこの巨大な戦斧。今日は血を見ずにはすまなそうだ。

 やっと迎えたこの良き日。俺は破壊の雷帝と化す。エッジに白いラインの入ったスーツは巨大なカフスが折り返され、大きく開いた尖った襟が、首の後ろを覆うように回っている。そしてなんの変哲もない白い手袋。防御力は低いが攻撃が当たらねば同じ事。
 腰に挿したこの二本の差し料が電光石火で敵を無力化する。

 ん? あれに見ゆる男に覚えあり。キャツもこちらに気付いて一度顔を作ると、トンと車止めに飛び乗った。そして腕を組み、斜に構えた。腰に挿した剣の細工がキラリと光った。「現れたな、エンプレス・ロゼ」
私は余裕で返す。「ほーほっほっほ、また性懲りも無くこの戦斧、オーディーンの餌食になりに来たのかしらカイザー・ブラド」
「あのー、倉田真弓さんですよね? 忙しい所すいません、一緒に写真撮ってもらえませんか」
「あっ、はい、喜んで」私はカイザー・ブラドこと田宮陣をちらりと見ると余裕で微笑んで、男達と順番に記念撮影した後、サインに応じる。ここはオクラホマかと突っ込みたくなるようなフランネルシャツ率に目を瞑りながら田宮の羨望の眼差しを確認しようとして顔を上げた。なーー!!。
 なんだなんだ。女子高生風の女の子が田宮の前で一列に並んで握手を求めている。田宮がこちらを流し見てニヤリとする。

 俺は女の子と握手をしながら倉田の視線に気付いた。焦っているな。この前のイベントでは見た目の地味さで人気はイマイチだったさ。しかし、アニメ本編で謎のザコ敵から準主役に昇格した今では違う。先見の明の違いだ。俺は握手を終えると余裕の表情で倉田真弓に近づく。
「倉田さんもそれなりに人気があるようだね、それなりに」
「あらそれはこっちの台詞よ」
 悔しいが、この女ははっきりいって可愛い。切れ長の大きな目と少しふっくらとした頬と小さい唇。これで妹要素さえあれば完璧かもしれない。

 悔しいけれど、この男ははっきり言ってカッコイイ。キザな態度がデフォルトの某芸能人にも似ている。女装させてもイケそうだ。強いて言えば撫で肩でなよっとしているのが欠点だ。
 男っぽい振る舞いを身につければ完璧かもしれない。突然田宮がビシっと指さしてきた。
「この後予定はあるかい、エンプレス・ロゼ」
「な、なななな、なんだなんだ、予定が無ければなんだと言うのだ」
 いいいいうてもた、意味深な事いうてもた。案の定顔を真っ赤にして怒っている。どうする。
「い、いやね、今後の物語の展開を予想してみたんでね、君の見解はどうかなと思って、それを話し合ってみないか」
 そういう事か、うっかり顔から火が出てしまった、恥ずかしい
誤魔化せるかどうか。
「あら、そういう事ならよくてよ、この近くに私がよく行く図書か……、カフェがございますのよ、そこでいかが」
 図書館て言いかけたぞこいつ、そこはよく俺も行く、そこでいいじゃないか、カフェだと? 行った事ねーよどうしよう。
 いやカフェという言い回しに惑わされるな。メイドカフェからメイドを抜いただけだ。
「いいだろう」

 私見栄はったー! メイドカフェならバイトした事あるけどメイドのいないカフェはしらねー!