らんたが新作投下してた


小説1,251文字
既に人生が破滅している老人がV−Tuberやってみたら……?
今や性別も年齢も偽れる時代に登場したある男の物語

妻とは離婚してしまった。息子は居ない。息子も出て行ってしまった。

あげくに故郷徳島に支店長という肩書で移動。そこで定年となった。

最後は友人いない地で人生の晩年を過ごしていた。

ヒキニート

ヒキニートは若年や中年の問題と言われていたが本当の中核層は60歳以上の老人にあった。定年を迎えた60歳から年金がもらえる65歳までは極貧とも呼べる生活をした。仕事……?この年齢で仕事とか言われても……?もうなにもかもが嫌になっていた。パワハラで心も壊れていた。安定剤だけが友達であった。

そんな時ついにあこがれの年金生活を開始した65歳の時。今や唯一の楽しみがV-Tuberのナナちゃんをみることだった。いつも通りナナちゃんを見てふっと思ったのであった。

(いいなあ。自分もナナちゃんのようにみんなから愛されたい)

(ん!?これはバーチャルキャラクター。だとしたら年齢も性別も関係ないのでは?)

(美少女キャラクターを自分で演じてしまえばいいのでは!?)

こうして老人は女言葉事典を買い、美少女で巨乳という典型的なキャラクター「ナノカ」と言うキャラを作った。

ときおりパンチらするのはお約束。乳をたゆんたゆんさせるのもお約束だった。

もう老人は下半身が立ちっぱなしであった。みんなから初めて愛されたのだった。いつのまにかピストン運動をはじめ、欲を出していた。というよりも性欲が復活したのだ。まさか自分に性欲が残っていたなんて。

調子に乗った老人は徳島港から和歌山市までフェリーで行きさらに南海電車でかつての自分の仕事場に近い「なんば」までやってきた。毎回途中駅でたわいもないグルメや土地のお話で〆である。

ネットでは様々なうわさが飛び交った。

「こいつ、男じゃね?」

あまりにも寒いジョークがあまりにもジジイすぎたのである。

それから「ナノカ」ちゃんは突然消えた。そして数年後男は孤独死として家で見つかる。

遺族はあまりの光景にびっくりした。ネカマ放送局をやっていたという事を。

「だから、あんな変態と一緒になりたくなかったのよ!!」

「一族の恥!!」

そんな怒号が飛び交う中、突然訪問客がやってきた。芸能事務所であった。内容は著作権の譲渡であった。

「こんなもん、ただでどうぞ!!」

こうして老人V−Tuber伝説は書籍化された。



【最後に】

このお話は『小説家になろう』で「老人を差別するな」という厳しいお言葉を頂き一旦削除したお話です。ですがやはりこの2次元天国の日本でどっからどう見てもあり得るお話として破滅派にて再公開させたものです。すべての独居老人が変態ではないことは分かっています。でもこういう事をする老人がいる可能性があるということを表現するというのが「文学」が持つ可能性じゃないでしょうか。