僕はパンを噛じりながら、ちよつと腕時計を覗いて見ました。時刻はもう一時二十分過ぎです。
が、それよりも驚いたのは何か気味の悪い顔が一つ、円い腕時計の硝子の上へちらりと影を落したことです。
僕は驚いてふり返りました。すると、――僕がヱルフと云ふものを見たのは実にこの時が始めてだつたのです。

僕の後ろにある岩の上には画にある通りのヱルフが一匹、片手は白樺の幹を抱へ、
片手は目の上にかざしたなり、珍らしさうに僕を見おろしてゐました。



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