するとそこには僕の知らない穴でもあいてゐたのでせう。
僕は滑かなヱルフの背中にやつと指先がさはつたと思ふと、忽ち深い闇の中へまつ逆さまに転げ落ちました。
が、我々人間の心はかう云ふ危機一髪の際にも途方もないことを考へるものです。僕は「あつ」と思ふ拍子にあの上高地の温泉宿の側に「会留府橋」と云ふ橋があるのを思ひ出しました。
それから、――それから先のことは覚えてゐません。僕は唯目の前に稲妻に似たものを感じたぎり、いつの間にか正気を失つてゐました。


↑異世界に行く描写も入れたこれで日間を倒す