0083この名無しがすごい!
2020/10/29(木) 19:28:27.94ID:TwgB0v5j使用するお題→ジャンル『コメディー』+『ラップ』『アサルト』『液晶』
【大画面からこっそりと】(1/2)
「よし!最強の必殺技、喰らえッ!!」
午前1時。既に深夜であるにも関わらず、一人の少年がテレビゲームに夢中になっていた。
彼の名はツトム。とにかくゲームが大好きで、彼が今プレイしているのは最近新しく発売された「レッツ!アサルト」というタイトルの乱闘ゲームだ。
30とたくさんいるキャラの中でも、彼の一番のお気に入りはエミリアという薄いピンク色のロングヘアーに、光沢のある黒い鎧が美しい女騎士だ。
液晶の大画面で繰り広げられる、彼女の華麗な剣技は大迫力で圧巻の一言。
ストーリーモードをプレイしていて、ちょうど6つめのボスを倒したところだ。
「エミリア、マジ最強!俺にはエミリアしかいないぜ!」
もう4時間以上もぶっ通しでプレイしていた為、睡魔が襲ってきたのか、セーブもせず電源も落とさないまま、ツトムはムニャムニャと眠りに落ちてしまった。
プレイヤーであるツトムが寝てしまったせいで、エミリアはそのまま動けずに待機モーションに入ってしまった。
「ちょ、ちょっと寝ないで私を操作して!やめるならちゃんとセーブして切って!」
ゲームの世界からエミリアが叫ぶも、もちろん声が届くはずがなくツトムは起きない。
「もう、困ったわね・・・」
すると白いまん丸の可愛らしいネコの姿をしたザコ敵の一体、モチマルがエミリアに体当たりしてきた。
「こ、こら!やめて!私が動けないからって攻撃しないで!」
モチマルはニヤニヤしながらニャーン!と鳴くと、そのままゲームの画面から現実世界に飛び出してしまった。
「何勝手に飛び出してるの!戻ってきなさい!」
エミリアは急いで動き出し、逃げ出したモチマルを追って大画面から飛び出した。
実は深夜0時から朝の6時までは、ゲームの世界から現実世界に移動することが可能なのである。
しかし6時が来るまでにゲームの世界に戻らないと、姿や形、そうデータそのものが完全に消えてしまうので注意しないといけない。
その上、あくまでゲームの世界に存在する空想のキャラなので、現実世界にいるところを人に見られてしまっても同様だ。
「早くモチマルを見つけて戻らなきゃ!」
長時間によるプレイでツトムが今、深い眠りに落ちているのが幸いだ。他の家族もスヤスヤと寝静まったこの時がチャンスだ。
エミリアは開いたままのドアからこっそりと出ると、小さな声でモチマルの名前を呼ぶが返事はない。
仕方なく1階に下りた時、何やらガタガタと物音が聞こえてきた。どうやらキッチンの方からだ。
急いでキッチンに向かってみると、モチマルが冷蔵庫の中を物色しているのが見えた。
モチマルはラップで覆ったツトムの母手作りのガトーショコラの皿を取り出し、ラップを外すや否やムシャムシャと美味しそうにかぶりつく。
「そこにいたのね、もう・・・」
モチマルの姿を見て、エミリアはホッと安堵する。