奴隷として買われ地獄を見てきたピピレレは、この逃走劇の成功確率の低さを知っていた。



 ……彼女は、それでも良かった。

 たとえ、その罰で自分が命を落とす結果になっても。

 ほんの一時であれ、マリーに自由を与えられるだけで満足だったのだ。



 こうして追っ手に取り囲まれた絶体絶命の中にあっても、彼女に後悔はない。