いいよん


その時突然暖かくなった
私は小説を書いている手を止め、窓から外の景色を覗いた

「冬も、もう…終わりか」

所々に桜が咲き始めていた

そして、空を見上げると、そこには底が突き抜けていて、どこか頼りないあの青い空が広がっていた

この時期になると、私は何年も前の学生時代の記憶が蘇る

私の人生の中で
何よりも楽しくて
何よりも自由で、
何よりも辛くて、そして何よりも大切な、あの時の記憶が


ふと淋しさや、孤独が、私の心の奥底でつぶやいた
「雨…降らないかな…」

〜20年前〜
「いってきます」
親にそう挨拶し、私は家を出た

そして私は自分の行く高校へ悠々と歩いていた
今日は入学式

校舎に着くと、
門の近くには多くの学生がいた

待ち受ける新しい学校生活、高校生活に思いを馳せている学生がほとんどのように思えた
私もその内の1人だった

門に溢れる学生の背景に
快晴の空と、咲き乱れる桜が添えられていた
入学式にはもってこいの日だな

私は校舎へ入り、受け付けを終え、自分の教室へ向かった