メアリ・ロビネット・コワル『ミス・エルズワースと不機嫌な隣人 幻想の英国年代記』

早川のFTレーベルなので、ロマンスではなくファンタジーものとして刊行された作品。
でも作者がオースティンに謝辞を捧げているので、世界観はまんまあの雰囲気。
そこに淑女のたしなみとして、水彩画や楽器演奏、刺繍などと同じ並びって感じで「魔術」が奨励されているという設定。

ヒロインは美人の妹に引け目を感じ、自分は一生独身だわって思って生きてる、紳士階級のお嬢さん。
ヒーローになりそうな登場人物が数人登場するけど、最後に決まるお相手にはちょっとビックリかな。
ホットなシーンは皆無、でも人間のバカな行為はちゃんと描かれてて、終盤はちゃんとドラマチックになります。
すぐにベッドインしちゃういまどきのロマ本をすっ飛ばしながら読んでしまう人にはおススメです。

ヒロイン父の描かれ方が良かったです。
容色に引け目を感じている長女に、ストレートに愛情を示している様子がとてもいい感じです。
健全な父親キャラを久々に読んだような。