★こうなったら読書マラソンしません? ★第八戦目
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【 公式レース規則 】
書き込みは名前の欄にハンドルと総読破ページ数を記入して下さい。
例) 名前:マラソン次朗(5963)[sage] 投稿日:92/13/32 24:28
本文に読んだ本と読んだページ総数を書きましょう。
★漫画はカウントしないでください。
★一冊読み終えた後の書き込みが基本ですが、
読破に時間がかかる本であれば、途中で書き込んで構いません。
★読んだページ数は、大体で構いません。
とりあえずゴールは10000nということでスタート。
10000nのゴールテープを切ったら、総読破ページ数欄に☆を一つ加えて、
ぜひ、もう一度、1nからゴールの10000nをめざして参加して下さい。
☆の使用例) 名前:パンダパン(☆864)[sage] 投稿日:02/10/20 00:27
<推奨>
200前後に下がったら、レース参戦を歓迎する意味を込めて、
マラソンの書き込み時に(『空あげ』はしないで)アゲ書き込みでお願いします。
>>2 読んだ本の『寸評用・評価基準 ABCDEF 』の例。
>>3 過去スレなど。
前スレ
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/books/1248144783/ 『インド旅行記1 北インド編』中谷美紀 幻冬社 359p 【B】
よそで書評を読むと、「女優さんというお金持ちだからできた旅」などという
感想もたくさんあるが、そうは思わない。
ベジタリアンとして過ごし、deepなヨガ体験をする
お互いともが母国語以外でコミュニケートする
よほど好きでないとできませんわ。
情熱と探求心と行動力、大らかで朗らか
思慮深く文章も良い 大変おもしろかった。 『日本語は天才である』 柳瀬尚紀 新潮文庫 249p 【D】
ジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」を翻訳した人のエッセイ。翻訳時における日本語の表記の多様性(ルビとか)を中心に書かれている。
「フィネガンズ・ウェイク」を訳したからこんな性格になったのか、こんな性格だから「フィネガンズ・ウェイク」を訳せたのか。
語呂合わせなどの駄洒落が多く、せっかくの問題提起が余談に余談を重ね消化不良で終わってしまう。が、誰も文句は言えない。およしなさい鉄郎。彼のことをそんな風に言うもんじゃないわ。
学歴等のコンプレックスが濾過され切っておらず、文面ににじみ出ているのが感じられてうっとうしい。 『蹴りたい背中』 綿矢りさ 河出文庫 183p 【A】
言わずと知れた芥川賞受賞作。こっちが真打ちか。
序盤は「インストール」と同じような感じ。けれど今度はいくら進んでも、救いの芽が現れない。ずーっと息が続いていく。
高校生の世界は狭い。だから同調圧力が半端ない。くだらないお付き合いから超然として暮らせるならば、夢のような高校生活だけれど、実際には酸欠状態で生きているようなもので、何も頭に残らない。
もしかしたら「恋空」と同じクラスだったりして。 『ヨーロッパ退屈日記』伊丹十三 新潮文庫 304p
エッセイ。50年前のヨーロッパ、50年前に日本。【C】 『「時間」を哲学する』 中島義道 講談社現代新書 214p 【C】
戦う哲学者中島義道。何と戦っているのかはしらないが。
導入部分はとても面白く読めたのだけど、本題に入ると「過去」とは何か?ってことに延々とかかずらってるだけだった。各章題は「人生の短さについて」とか、興味深いものが並んでいるのだけども。
印象だけど論の大元の土台として筆者の好き嫌いがあって、それをどうにかして正当化しようと論を積み重ねている感じ。
虚心坦懐に読まなければ理解できない本。 『廃墟に咲く花』パトリック・モディアノ キノブックス 173p
パリの地名が山のように出てくるので、地図が添えられているが、
この地図が役に立っていない。【D】 『ローマ人の物語33 迷走する帝国〔中〕』 塩野七生 新潮文庫 166p 【C】
マクシミヌス・トラクスからゴルディアヌスV、フィリップス・アラブス、デキウス、トレボニアヌス・ガルスときてヴァレリアヌス帝がササン朝の虜囚となるところまで。
ローマ皇帝たちが北部メソポタミア地方の領有にこだわったのは領土拡張欲からではなく、地政学的見地によるという考察が面白かった。
しかしそんな北部メソポタミアも回復しては放棄しての繰り返し。そして放棄した皇帝は弱腰として暗殺される。皇帝は終身職であるために、不信任は暗殺という形をとって現れる。
西方のライン・ドナウ川の対岸ではゴート族が台頭し、東方ではいつの間にかパルティア王国が大ペルシア再興を唱えるササン朝に取って代わられている。そういえば昔、ペルシアの捕虜になったリディアの王がいたなぁ。 『脱走と追跡のサンバ』 筒井康隆 角川文庫(kindle版) 336p 【D】
各方面で「筒井康隆の最高傑作!」との声が聞かれた作品。しかし私には1oも面白さがわからなかった。
多元宇宙や時間のなんとか性をスラップスティックなシュールレアリズムで語り倒した若書きの実験作、らしい。当時は先駆的だったものが時代に追いつかれて、その凄さが見えにくくなっているのだろうか。
さまざまな約束事を解体している(ようだ)が、イドとかエスとか超自我とかフロイト派の用語には全面的な信頼を寄せて援用し、そこに解体のメスが入らなかったことに不満が残る。
しかし、これでもうこの作者の作品を読むことはないかといえば、そうでもない。 『負けない力』 橋本治 大和書房 254p 【C】
橋本治の書籍の中では一番抽象的なカテゴリーに分けられる。『いま私たちが考えるべきこと』とか。
負けない力とは知性のことで、しかしこの本は読んでも負けない力が身に付くような実用的な内容ではありません。と冒頭で作者が断っていて、
だいたいその通りなのだが、こちらとしては読んだら身に付くハウツー物の方がよかった。というのがこの本で否定されている教養主義的な考え方なのだけども。
知性というのはまず、「自分の頭がいいかどうかは分からないが、あの人は頭がいい」というジャッジをする能力、らしい。 『柳田国男と折口信夫』池田彌三郎 谷川健一 岩波書店同時代ライブラリー 263p
対談。【C】 『ローマ人の物語34 迷走する帝国〔下〕』 塩野七生 新潮文庫 216p 【B】
ガリエヌスからクラウディウス・ゴティクス、アウレリアヌス、タキトゥス、プロブス、カルスまで。
皇帝ヴァレリアヌス捕囚は帝国を震撼させ、ガリア帝国(笑)とパルミラ王国の分裂を許してしまう。
しかし、この危機の世紀の皇帝として文字通り東奔西走して蛮族の侵入から帝国を守ったのも、ヴァレリアヌスによって抜擢された軍団長達であった。
皇帝乱立で世界史的には地味な世紀だが、SLG化したらいい感じのゲームバランスになりそうな時代。皇帝の天幕に雷が落ちて死亡とか、絶対リセットするけど。 『深夜特急1』 沢木耕太郎 新潮文庫(kindle版) 238p 【C】
1970年代、26歳の著者がインドのデリーからロンドンまで、乗り合いバスだけで旅行するバックパッカーものの嚆矢。
1巻はまだインドに着く手前、トランジットで降りた香港やマカオでの日々。
ギャンブルに興味のなかった著者がマカオでカジノに嵌まり、からくも抜け出すくだりは出来過ぎな気もするが、ここで脱落して東京直行便に乗った無名の若者たちが何人もいるのだろう。
アメリカ横断ウルトラクイズの優勝者のように、最後までたどり着いた者だけがその栄光を総取りするのだ。 『小説の読み方』 平野啓一郎 PHP新書 243p 【E】
酷い出来。
大学生が規定枚数に達するように無理矢理水増しして書いたレポートを読まされている感じがした。
とにかく主語がでかい。「私たちは、〜である」「人間は〜」「〜は誰もが知るところだが」本当に大学生が書いた文章なら、まだほほえましいのだが。
下手な作文のあちこちから、ぶよぶよした自意識が染み出しているようで気持ち悪い。 『女ごころ』 サマセット・モーム 訳・尾崎寔 ちくま文庫 185p 【C】
古き良きウェルメイドな映画を観ているようなストーリー。
ただ、映画だと俳優の姿形や肉声が枝葉となって世界を膨らませるのだけど、この小説はシノプシス通りに展開するだけで心にひっかかるものがない。
最初の人物配置から予想される展開を乗り越えようとする力が登場人物に無く、起承転結にきれいに絡め取られてしまっている。
イギリス人って普通に石造りの宮殿に住みたがるよね。いまいち生活観がつかめない。 『文様の幾何学』川ア徹郎 牧野書店 201p
【C】 『深夜特急2』 沢木耕太郎 新潮文庫(kindle版) 223p 【C】
バンコクからマレー半島を陸路で下りクアラルンプール、シンガポールまで。行く先々で現地の人に声をかけられるのはまだ日本人が珍しかったからか、作者の人徳か。
東南アジア貧乏旅行といったって、現地で暮らす人から見れば持てる者の道楽に過ぎない、とか、
最初に嵌まった香港の幻影を求めて、そのあと訪れた都市に物足りなさを感じてしまい、目の前にあるものを見ていなかった、とか、
この後に続くあまたの貧乏旅行記ものが抱える屈折したテーマがすでに提示されている。 『逆説の日本史18 幕末年代史編T』 井沢元彦 小学館文庫(kindle版) 365p 【B】
繰り返しが多くてくどく感じることもあるが、すらすら読めて面白い。幕末編に入ると知った名前、いや顔がぞろぞろ出てくる。
阿部正弘、江川太郎左衛門、ジョン万次郎、吉田松陰、堀田正睦、水戸斉昭、島津斉彬、ペリー、ハリス、プチャーチン…。
全員顔付きで頭に浮かぶのは『風雲児たち幕末編(みなもと太郎)』を読んでるから。ずっこけてるだけの漫画だと思ってたけど、読んでると読んでないとではぜんぜん違った。
『大奥(よしながふみ)』も次巻から阿部正弘(註・女)が主役だし、読み比べてみると楽しそう。 『コンチキ号漂流記』ハイエルダール 偕成社文庫 280p
児童向け抄訳。【C】 『日露戦争、資金調達の戦い』 板谷敏彦 新潮選書 460p 【B】
まず文章がすばらしい。これから書こうとしている事を知悉しているとき、人はここまで明晰に書けるものなのか。
戦争の要素を乱暴に分けると陸軍、海軍、大蔵の三つの要素になるとして、その中であまり省みられなかった大蔵(財務)での戦いを、高橋是清が欧州で資金調達に奔走する姿を軸に書いていく。
勝てばチャートが上がるというわけでもない。鴨緑江、遼陽、奉天と勝ち進むたびに戦線は広がり補給路は伸びる。
金融用語に不慣れなので十全には理解できなかったが、それでも面白く読めた。 toukaさん、二度目の完走おめでとうございます。
『謎の独立国家ソマリランド』高野秀行 本の雑誌社 509p
ノンフィクション。【C】 『あたらしい書斎』 いしたにまさき インプレスジャパン 207p 【C】
近々引越しをするので、ネットで目についた本を購入。
メインは書斎の話、のはずだが、半分は著者の使っているデジタルガジェットとアプリの話。
肝心の著者の書斎は、イケアに取材したらご好意でひと部屋まるごと改装してくれたんですって。
参考になる点は特になかった。
>テタさん、ありがとうございます。
しばらくペースが落ちます。 『64』横山光秀
【A】
世界観にどっぷりのめり込ませてもらいました 『超ひも理論をパパに習ってみた』橋本幸士 講談社 159p
物理学者が高校生の娘に超ひも理論を語る、というストーリー。【C】 『樹影譚』 丸谷才一 文春文庫 190p 【C】
表題作他、短編三作。
特に表題作は上手いのかなあ。何重かの入れ子構造になっていて、それぞれがどの階層の話かわからなくなるけど、それでも普通に読める。
エピソードの端々が、さりげなく別のエピソードに繋がって半睡半醒の世界を作り出している。
丁寧にマッピングしながら読み込めばもっと楽しいのだろう。 『ラマヌジャン ζの衝撃』黒川信重 現代数学社 214p
マジカルなイメージのあるラマヌジャンを正当に評価する試み。【B】 『わかりあえないことから』 平田オリザ 講談社現代新書 230p 【C】
「世間で言うコミュニケーション能力の大半は、たかだか慣れのレベルの問題だ。でもね、二〇歳過ぎたら、慣れも実力のうちなんだよ」
会話と対話の違いをはっきりと示していたのが面白かった。そして、対話の方が冗長率が高くなるんだそうだ。なるほど。
「このような話を教育関係の講演会ですると決まって、「あ、金子みすゞですね。「みんなちがって、みんないい」ですね」という先生方がいる。私はそうは思わない。そうではないのだ。」
蒙を啓こうと急ぐあまりに、時事問題の扱い方がステレオタイプになっている。 『ヴォルテール、ただいま参上!』ハンス=ヨアヒム・シェートリヒ 新潮社 154p
史伝なのか。【C】 『砂の女』 安部公房 新潮文庫 276p 【C】
初安部。「砂の(ような)女」ではなく、「砂の(中に住む)女」だった。
女の持つ特異な魔性によって取り込まれるというわけではなく、ただその舞台設定が異常で物理的に逃げ出せそうもないだけだ。
昔の漫画のナンセンスギャグに近い。それも「伝染るんです」以降のではなく、漫画道場の富永一郎とか「ギャートルズ」とかの。
書かれてまだ50年しか経っていないが、すでに考古学的作品である。 『新版 誰も知らないインド料理』渡辺玲 光文社知恵の森文庫 286p
北インド料理と南インド料理に分けてあって、頭の整理になる。【C】 『ゴダールの肖像』浅田彰 松浦寿輝 とっても便利出版部 69p
対談。小冊子。【C】
『その女アレックス』ピエール・ルメートル 文春文庫 457p
ミステリー。事件の重心が、二度三度と思わぬ方向にずれていく。
【B】 『地震・憲兵・火事・巡査』山崎今朝弥 岩波文庫 306p
奇文集。【D】 『ある家族の会話』ナタリア・ギンズブルグ 白水uブックス 286p
「肉のない日」が思い浮かぶ。【C】 『謝々!チャイニーズ』 星野博美 文春文庫 442p 【C】
1993年頃に広西チワン族自治区から寧波まで、中国南部を海岸沿いに旅した旅行記。
行く先々で人のいい中国人と仲良くなり歓待を受けているのは、作者の人徳か経験かそれとも取捨選択が働いたのか。
この手の旅で旅行者が、相手にとっては一日分の稼ぎになるであろう小銭を値切り倒して悦に入るってのがどうもね。そんくらいボラれてやりなさいよ。
親切にされすぎて、軸足が中国人の方に移っている。 『数学の大統一に挑む』エドワード・フレンケル 文藝春秋 484p
【C】 『ローマ人の物語35 最後の努力〔上〕』 塩野七生 新潮文庫 213p 【C】
皇帝はローマの第一市民とする元首政から、皇帝とは特別な存在である絶対君主政へと舵を切ったディオクレティアヌスは、キリスト教も弾圧したため、非情な暴君、悪帝のイメージがあるが(名前も怖いし)、
少なくとも有能さで比べるなら、アウグストゥスはともかく、ハドリアヌスくらいには匹敵していたのではないかと思った。
とにかく、皇帝を神格化したことで、これまでの軍人皇帝時代のように些細なことで配下の兵士に殺されることもなく、20年に渡って統治を継続できたわけだし。しかも最後は禅譲した。
けれど、他の皇帝たちは(四頭政だった)軍団指揮官としては有能でも、彼のようなフィクサーとしての能力はなかった。っていうかそういう人材を育成してなかったのが片手落ちだったか。 『鷹』石川淳 講談社文芸文庫 235p
つまらぬ。【D】 『ローマ人の物語36 最後の努力〔中〕』 塩野七生 新潮文庫 157p 【C】
さいさんいわれてミラノ勅令。肝心の勅令の中身までは憶えてなかった。
四頭制は帝国の辺境の守りを固めはしたものの、ディオクレティアヌスという政治家がいてはじめて成り立つ、属人的な統治機構でしかなかった。
なので、ディオクレティアヌスが引退してしまうと、残った皇帝たちはタケノコの背比べになってしまう。繰り上げ当選した同僚に、なかなか忠義を尽くせるものではない。
結局皇帝乱立状態に戻り、最も戦略に秀でていたコンスタンティヌスが各地を回って統一する。抜きん出ていたぶん、泥沼に陥らなかったのが幸いか。 ヨコ入りすまん。
まあ、読んでやってくれ。
知り合いが出版社を立ち上げたんだわ。
一応ジャンルは政治やら文学やら色々やるみたい。
個人的に議員に知り合いが多くて、政治関係が得意。
悩み相談や自己啓発、雑学なんかのジャンルの本も出したいって。
自費出版もするようなことを言ってたわ。
出来たばかりだからみんなで応援してやらないか?
あたま出版
http://atama-pub.net/
社長がハゲあたまだからこの名前だってww 『蛍川・泥の河』宮本輝 新潮文庫 199p
【C】 『ペリリュー・沖縄戦記』ユージン・B・スレッジ 講談社学術文庫 476p
アメリカ兵から見た沖縄戦。【B】 『ビビを見た! 』(fukkan.com) - 大海 赫 131p 【A-】
ファンタジー・冒険物
この本は過去にこの本に触れた方たちの熱烈な再版要求を受け、2004年に復刊している
図書館にこの本を置いたのは誰の計らいなのだろう?
本のほとんどが使い捨てな中、作者が亡くなった後も残る本はどれだけあるか
図書館で児童書のコーナーを見ていたら、思っていたよりたくさんのちびっこが
熱心に本を選んでいた
偶然手にしたちびっこたちの何人かの記憶に大海赫は必ず強烈に残る
新しい童話作家としていつまでも語り継がれるだろう人がこの大海赫だ 『いつまでも若いと思うなよ』 橋本治 新潮新書 212p 【C】
橋本治は冒頭のツカミが抜群にうまい。以下抜粋―
「ただでさえ年寄りはきたないものだから」と言ったのは、戦前の有名な女方で、「田圃の太夫」と呼ばれた歌舞伎役者の四世沢村源之助です。
晩年の彼の浅草の独り暮らしの住居を訪ねた人物が、家の中がきれいに片付いているのを見て、「ずいぶんきれいにしてらっしゃるんですね」と言った――その答が
「ただでさえ年寄りはきたないものだから、身の周りくらいはきれいにしておかなければ」というものでした。 『黄金虫・アッシャー家の崩壊』ポオ 岩波文庫 410p
短篇集。【C】 『ローマ人の物語37 最後の努力〔下〕』 塩野七生 新潮文庫 137p 【C】
コンスタンティヌス大帝とキリスト教。
コンスタンティヌスによってローマのローマ的なものは失われ、代わりにキリスト教国が立ち現れる。同時にそれは中世の始まりでもあった。
なので、キリスト教圏にとってはコンスタンティヌスは非常に重要な人物で、「大帝」なのだが、微に入り細を穿つような研究でもなかなかその本心はつかめないらしい。
受験世界史のローマ帝国関連の年号がこれ以降やけに多いのは、そういう歪みが反映されていたからかと思ったり。 『その辺の問題』中島らも いしいしんじ 角川文庫 381p
対談。【C】 『久生十蘭短編選』 久生十蘭 編・川崎賢子 岩波文庫 424p 【B】
終戦から占領期前後にかけて発表された短編を集めたもの。
東京大空襲とはなんだったのか?と言いたくなるくらい、大正ロマンのような高踏的な生活が書かれているけれども、
戦争によって櫛の歯が抜けるように死ぬ人は死んで、残された人たちには生活があるのだ。
ある特定の価値観(たとえば耽美とか)に寄りかからない自立した小品群は、佳品と呼ぶにふさわしい出来になっている。 『赤い橋の殺人』バルバラ 光文社古典新訳文庫 264p
埋もれていた作品。【C】 『チェーホフ・ユモレスカ 傑作短編集T』チェーホフ 新潮文庫 389p
【C】 『どん底の人びと』ジャック・ロンドン 岩波文庫 352p
アメリカ人による1902年ロンドンの貧民街レポート。【C】 『世界の辺境案内』 蔵前仁一・他 洋泉社 143p 【C】
ヴォズロジデニヤ島からgoogleデータセンターまで、世界中のアクセス困難な「辺境」を一冊にまとめたムック。表紙はマンセル要塞。
ひとつひとつはwikipediaに毛がはえたくらいの内容だが、こうやってまとめられているとなんとなく便利な気がする。
書店の棚に並んでいた類書の中から本書を選んだのは、いい感じのプリピャチの写真が多かったから。プリピャチ懐かしいよねプリピャチ。「CoD4 MW」を思い出す。
帯が別製ではなく表紙に印刷されているのが安っぽくも情けない。 『抹香町 路傍』川崎長太郎 講談社文芸文庫 281p
短篇集。【C】 『悪童日記』アゴタ・クリストフ ハヤカワepi文庫 301p
双子の作文集という体裁。【C】 とりあえずエッチな動画見てスッキリしてからにしよっ♪
パイパン娘 若妻 素人娘 オメコ満載
http://www.oriental-movie.tv/ 『桜の園』チェーホフ 岩波文庫 103p
戯曲。【C】
『ラオスの布を楽しむ』チャンタソン・インタヴォン アートダイジェスト 86p
【D】
『布が語るラオス』木村都 ヴィエンカム・ナンサヴォンドァンシィ 進栄堂出版 95p
ラオスの染織文化について。【D】
『アムステルダム』イアン・マキューアン 新潮文庫 211p
途中まではおもしろかったんだが。【C】 『ラマヌジャンの遺した関数』D.フックス S.タバチニコフ 岩波書店 195p
テーマはさまざま。【C】 『エルフの血脈 <魔法剣士ゲラルト>』 アンドレイ・サプコフスキ 訳・川野靖子・天沼春樹 ハヤカワ文庫FT 479p 【D】
知っている人は知っている、知らない人は知らない、ゲーム「ウィッチャー3」の原作。予習のために買った。魔法がなんだかゲームチックで、ゲームのノベライズ版かと思ったほど。
モンスターを倒して生計を稼ぐ、数も少ないウィッチャー(魔法剣士)達が、世間の人々から一様に忌み嫌われているという設定の根拠が薄弱に思えた。
自分勝手に便利な魔法を使いまくっている本職の魔法使いの方は、特に迫害されている風でもないのに。
結局、ゲームは「ドラゴンエイジ:インクイジション」の方を買った。 『性のタブーのない日本』 橋本治 集英社新書 238p 【B】
平安、江戸を中心に、古代から近代までこれまで著者が扱ってきたネタを寄せ集めて、一冊の新書にしたもの。
あれもこれもみな見覚えのあるネタだけれども、過去作とは少しずつ切り口を変えており、著者の入門書であると同時にファンサービスになっている。
あちこちつまみ食いして書き散らしているだけに見えるが、ひとつひとつ原典に当たり、深く考察した故に、自家薬籠中のものとして自由に出し入れできるのだ。
キャリアの最初に書かれた『ロバート本』と対を成す一冊か。 『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ ハヤカワepi文庫 450p
不穏。【C】 『義太夫を聴こう』 橋本治 河出書房新社 201p 【B】
『浄瑠璃を読もう』の次は『義太夫を聴こう』。ここまで来るとさすがに売れんのか、装丁も安いものになっている。
女流義太夫の人から相談を受けて、まずは音楽として観客の身に染み込ませることが必要だと、比較的音楽的な「道行」の部分だけを抜き出して演奏する「道行の会」というものを提案し、その会場でしゃべったことに書き足しをして作った本らしい。
古典をたのしく紹介するのは著者の手馴れたところでさすがに面白いが、読み終わると雲のように「なにが書いてあったっけ?」と記憶が霧散するのも著者の特徴。いずれ本当に必要になった時に読み返せば、するすると身に染み込んでいくはずだ。
たまたま見ていたNHKの日本の古典という番組に、この女流義太夫の人が出演して忠臣蔵を演奏していたが、実際に聴き続けるのはなかなか厳しいものがある…。 『神と肉』原田信男 平凡社新書 252p
東アジアで動物を贄にするということ。【B】 『高木貞治』高瀬正仁 岩波新書 232p
評伝。【C】 『最貧困女子』 鈴木大介 幻冬舎新書(kindle版) 213p 【C】
転がり落ちて、ではなく、生育環境の劣悪さから、まともな性風俗にも就けないような女性たちのルポルタージュ。
ほとんど不可視であった彼女たちに、スポットライトの光を当てた点に意義がある。光が当たれば、間違えてぶつかるということも無くなるし…。
著者は熱意ある善意の人だが、最終章の改善のための提言が理想論で終わっているので、読者の中で終わったことにされてしまうのではないか。
読者に異物を投げつけるときは、下手に磨いたりせず、異物は異物のまま飲み込ませる方が引っかかりやすいのに。 『55歳からのハローライフ』 村上龍 幻冬舎文庫 358p 【B】
「ハローワーク」ではなく「ハローライフ」。作者の村上龍は、お前は鶴太郎かってほどのマルチタレントぶりだったが、本業の小説家であることにこれほど誠実だったとは。
それぞれの中篇に投入されている、普通の人々のなんでもない、けれども独自に積み上げられた生活のディティールの描写の物量がすごい。イキオイで書き流していると感じられる部分がほとんど無かった。
それなりに普通の人生を歩んできていた人たちが、55歳を過ぎて、個人的な老いや経済的困窮、孤独に追いつかれ、立ちすくんでしまう。
カタルシスあふれる解決に向かうのではなく、取り囲む状況はほとんど変わってはいないけれど、それでももう一度歩き出そうとするところで話は終わる采配に、作者の小説に対するモラルの高さを見た。犬も歩けば棒に当たる。良くも悪くも。 『ある首斬り役人の日記』フランツ・シュミット 白水uブックス 245p
1600年頃のニュルンベルグでの記録。【C】 『日本語の科学が世界を変える』松尾義之 筑摩選書 238p
準結晶の裏話が面白い。【B】 『すべてはモテるためである』 二村ヒトシ 文庫ぎんが堂 237p 【C】
なぜモテないかというと、それはあなたがキモチワルいからでしょう。から始まるモテるための(脱)マニュアル本。
まずは趣味を持ち、それを人に押し付けず、常に謙虚で相手の話をよく聞くこと。そして人工的な釣堀であるキャバクラに行って、女の子と会話の訓練をしよう(釣堀なんだから、あくまでキャッチアンドリリースの精神で)。
相手が自分と同じ趣味を持っていることがわかっても、ソレッとばかりにあなたの研究成果をまくしたててはいけません。趣味はあくまで人格の深みとして。
人と出会った時に、その出会いで自分が変われる余地を持っておけること。イラスト担当の青木光江と解説の上野千鶴子の気色悪さは他山の石として役立てよう。 『紫苑物語』石川淳 講談社文芸文庫 293p
時代物三編。【C】 『宗教と性の民俗学』赤松啓介 明石書店 135p
エッセイみたいなもの。【C】 『蘇我氏 ――古代豪族の興亡』 倉本一宏 中公新書 272p 【C】
大化の改新(乙巳の変)で蝦夷・入鹿が討たれた後も、蘇我の本宗家が断絶したというだけで、蝦夷の弟筋にあたる蘇我倉氏やその他同族の家系は続いていた。
蘇我連子の娘媼子が不比等に嫁いで四兄弟のうち三兄弟を産んでんだよねってことは知っていたが、大化以前唯一の大臣(オオマヘツキミ)を出す氏族であった蘇我氏の血を入れて、
いまだ基盤が脆弱だった藤原氏の家格を底上げすることで、天皇家とスムーズに姻戚関係を結べるようになったという知見は新鮮だった。
奈良時代も半分を過ぎると、あたかも1200年前の市役所課長の人事記録集の様相を呈してくる。没落とはつまりこういうことなのか。 『英国に就て』吉田健一 ちくま文庫 280p
エッセイ。【C】 ちくま文芸文庫の言海
講談社の京極作品
角川のエベレスト
どれも読み応えある厚さだw 『お伽草子』福永武彦 円地文子 永井龍男 谷崎潤一郎訳 ちくま文庫 333p
現代語訳。【C】 『朝永振一郎著作集3 物理学の周辺』みすず書房 363p
鼎談、講演など。【C】 『ドキュメント 戦争広告代理店』 高木徹 講談社文庫 405p 【B】
ボスニア紛争に関する世論を裏で操作したアメリカのPR会社の話。
世界の世論とはアメリカの世論でもある。アメリカ人の琴線に触れる単語を織り交ぜてあることないこと情報を発信し続けていれば、
関係者以外本質的にはどうでもいいと思っている事柄については、裏取りもろくにせず、勝手に正義感に燃え上がってスピーカーになってくれるというノウハウ。慰安婦南京調査捕鯨、どれもおなじ仕組みか。
取材前に一筆書かされたのかと思うほど、肝心のPR会社の描写だけがヒロイックで平板なものになっている。最初は面白く読めるが、読み進めていく内にだんだんうんざりしてくる。 『最暗黒の東京』松原岩五郎 岩波文庫 200p
1892年頃の東京の貧民窟潜入記。【C】 『周期と実数の0-認識問題』吉永正彦 数学書房 203p
新感覚の本だと思う。【B】 『朝鮮・琉球航海記』ベイジル・ホール 岩波文庫 385p
1816年、イギリス使節団を中国に送り届けた軍艦による朝鮮西海岸、琉球の探検航海の記録。
美しい誤解に基づく物語。【B】 『メビウスの作った曲面』D.フックス S.タバチニコフ 岩波書店 224p
引出しが多い。【B】 『沼地の記憶』 トマス・H・クック 訳・村松潔 文春文庫 446p 【D】
昔起こった事件を老年になった主人公が回想して書き残す、といった体裁のミステリー。
この手のパターンにはなにか構造的欠陥があるのだろうかと思わざるをえない(『新世界より(貴志祐介)』を思い出した)。思わせぶりで運命論的な言い回しのヒキが延々と続けられる。
それがどれほどしょうもないオチであっても、事件が起こるまでは(なんと実際に起こった事件が語られるのは400ページを過ぎてから)語り手だけが真実を知っているのだからやりたい放題だ。
えんえんと下手なカラオケを聴かされるような羽目になる。 『赤と青のガウン』彬子女王 PHP研究所 374p
オックスフォード留学記。【C】 『すごいジャズには理由がある』岡田暁生 フィリップ・ストレンジ アルテスパブリッシング 243p
対話形式のレッスン。【B】
『鏡映の数学』A.V.ボロビック A.ボロビック 丸善出版 236p
【C】 『プルーストの黙示録』 坂本浩也 慶應義塾大学出版会 271p 【C】
オラが村一番の秀才は、東大の大学院を出てフランスに留学し大学の准教授になっておりました。
しかしなぜにフランス文学、そしてプルースト。あたら貴重な千点頭脳をそんな分野で費消しなくとも。読んでいると日本語の言い回しってホント不自由でめんどくさいんだなって感じます。
――周知のとおり「異化」とは、ロシア・フォルマリズムの理論家ヴィクトル・シクロフスキーの提唱した概念であり、日常の習慣によって麻痺し自動化した知覚を再活性化させる芸術の手法を指すが――
知らんわ。 『逆説の日本史19 幕末年代史編II』 井沢元彦 小学館文庫(kindle版) 349p 【C】
井伊直弼の登場から桜田門外の変、和宮降嫁前夜まで。
舵は開国、けれどなにより祖法大事で一橋派を粛清しまくっていたら、吉田松陰の首まで刎ねてしまったのが井伊直弼の運の尽き。
しかしついうっかり首を刎ねてみたくもなるよなぁ。なんなんだあの生きた毒まんじゅうは。
孝明天皇は個人的に外人嫌いな訳ではなくて、日本教の法皇として宗教的な意味合いから攘夷を求めていたという説明が慧眼だった。 『愚者が出てくる、城塞が見える』マンシェット 光文社古典新訳文庫 253p
ネオ・ポラール。【C】 『新常識主義のすすめ』 渡部昇一 文春文庫(kindle版) 292p 【C】
ヒューム、小林秀雄、進化論と百科事典、大学教育のあり方、義務教育のあり方などについて書かれた文章をまとめたもの。
興味のない分野に関してもそれなりに面白く読ませてくれるってのはひとつの能力だ。今回読んでいてアシモフの科学エッセイを思い出した。
1618年の三十年戦争が1648年のウェストファリア条約で終わって、その後フランス革命までの150年間のヨーロッパは「理性の時代」であり、バッハからモーツァルトまでの音楽はその時代を反映していたという指摘に感心した。
40年前に書かれた本なのに全然文体が変わってないなぁと思ったが、よく考えたら著者の最近作は読んでなかった。 「カエルの楽園」
同書の主な舞台は「ナパージュ」というカエルたちの国。
そこには「三戒」という教えが存在していて、国民(カエル)たちは皆、それを信じている。
「三戒」とは、「カエルを信じろ」「カエルと争うな」「争うための力を持つな」というもの。
ナパージュのカエルの多くは、「自分たちが平和に暮らせているのは、『三戒』のおかげだ」と信じている。
しかし、外の世界から来たカエルには、到底信じられない話なので、あれこれ聞いてみるのだが、ナパージュのカエルたちの「信念」は揺るがない。
その問答の一部を、同書から引用してみよう。
「もし(他の国から)襲われたら、どうするの?」
「襲われたって争いにはなりません」
「どうして?」
「ぼくらが争わなければ、争いにはならないからです」
「たしかに争わなければ争いにはならないだろうけど、襲われたら、どうやって身を守るんだい?」
「襲われないんですから、そんな話をしてもしかたがないでしょう。
この国は三戒が誕生してから、一度だって他のカエルに襲われていないんですから」
「それって、たまたまじゃないのか」
「あなたはたまたまで平和が長く続くと思いますか? いいですか、この平和はぼくらの三戒の教えのおかげなんです。それ以外にはないんです」
徹底して、ある種の「カエル」たちを戯画化した同作は、これまでの百田作品以上に賛否両論を巻き起こしている。
福岡県在住の共産党の町議会議員は「立ち読み」をしたうえで、「ひどいの一言」という感想をツイッターで述べたほどである(それに対し、そもそも丸ごと「立ち読み」というのはいかがなものか、という批判も出た)。ナパージュが迎える衝撃の結末が、癇に障ったのだろうか。
一方で「これからの日本を考えさせるために、子どもに読ませておきたい」といった感想も多く寄せられており、同作は寓話ながらも、これから憲法を考える上で、一つの入り口となっていくのかもしれない。
http://www.dailyshincho.jp/article/2016/05131515/?all=1
、 『日本文学全集08 日本霊異記 今昔物語 宇治拾遺物語 発心集』 口語訳・伊藤比呂美 福永武彦 町田康 編・池澤夏樹 河出書房新社 502p 【B】
特に目を引くのが町田康による超訳『宇治拾遺物語』。
ちゃらちゃらと語られる文体に、最近のスラングから原文の古語まで混ぜ込んで、ふざけてんのかって感じだけど、繊細な心の動きが抜け落ちることなく伝わってくる。
が、わりとすぐに慣れる。そのインパクトにショックを受けて本屋で訳者の書いた小説を開いてみたら、まったくおんなじ文体だったってのがあるかもだけど。
説話だからか、わりと因果が応報して納まるべきところに納まってしまう話が多め。 『数学する身体』森田真生 新潮社 205p
数学プロパーの人とはまたちがった感覚だと思う。【B】 『幸いは降る星のごとく』 橋本治 集英社文庫 243p 【C】
「女芸人ブーム」前夜にデビューして、キャリアも20年を数えた女お笑いコンビの話。
話…は一向に始まらず、どうしてこのようなことになってしまったのかって来し方がえんえんと、えんえんと230ページほど語られる。終盤に入るとあらたにもう二人分の女芸人の生い立ちが語られる。続く二巻はない。
この人は市井の人々百人分の生い立ちを縷々書き上げるって願掛けをしてたんだっけ?(してない)。作者が平気で顔を出すリラックスした文体は、町田康の後に読むと微妙に洗練されてない感がある。
最後の最後で村上龍の『55歳からのハローライフ』と同じ場所に着地をし、小説に対するモラルの高さだけは証明した。 危ない人達だな
車にハネられるよ
トラックなら安全だけど 『「ない仕事」の作り方』 みうらじゅん 文藝春秋 175p 【C】
ミウボールのみうらじゅんがこれまで手掛けてきた仕事とそのノウハウを一冊にまとめたもの。
栴檀は双葉より芳しといいますが、みうらじゅんは幼い頃からみうらじゅんなので、そのノウハウを読んだくらいではなかなか第二のみうらじゅんは生まれないだろう。
自分の中で違和感を感じたものを、好きでなくても大量に収集し、それによって自分自身を洗脳するのが第一歩だとか。あと、飽きないふりをすること。
事務所においてあるオリエント工業製の秘書がナイスバディのタイプだったり、本当の越えてはいけない線は決して越えない安心感が業界で長続きした秘訣だったのかなあ。 『モンゴル帝国と長いその後』杉山正明 講談社学術文庫 365p
モンゴル帝国が後の世に遺した統治システムや威信についての概説。【B】 『迷路の旅人』 倉橋由美子 講談社文庫(kindle版) 261p再読 【C】
エッセイ集。昔買った古本を読み返そうと本棚から取り出して開いてみたら、なんか体中がかゆい。のでkindleで買いなおして読んだ。
全体のほぼ半分を占める「反小説論」とそのほか文学に関わる文章では、当時の文学的青年、文壇、純文学、私小説、進歩的文化人を徹底的に排撃し、その不毛を虚仮にし倒す。
当時はそれらが猖獗を極めていたからか作者の舌鋒はすさまじく、ほとんど賽の目切りに相手を切り刻んでいるが、その不毛さは排撃する純文学の不毛さの合わせ鏡になってしまっている。
それ以外の事柄について書かれたエッセイは読みやすい。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています