客観性の罠。
自らの欲望に照明を当て続けたら、本能や欲望そのものがつまらないものとなる。
私が彼が好きなのは私の性欲がそうさせているからだ。
客観的にはそれが事実なのだが、その欲望を否定することなく肯定してこそ生物とし
てのヒトは生きて行ける。

彼女が勉強した理論はあまりにも理想的であり、人間の本来の現実からかけはなれて
しまった。人間の本来生を何か神様か天使のような存在だと勘違いしようとした。
絶対的自由など言葉の遊びにすぎない。

現実によってその妄想理論が破壊されるのは時間の問題だった。
キャベツを切る中村の姿を見て幻想が消えていく。
「労働者」とか「労働者階級」ってそこいらの普通の人じゃん、なんか偉いモンだ
と思ってた。中村だってそこいらの普通の男じゃん。