プロレス・ライターだった井田真木子さんが書き下ろし作品『プロレス少女伝説』で
第22回「大宅壮一ノンフィクション賞」を受賞したときのことだ。

立花隆(評論家、ジャーナリスト、ノンフィクション作家)が次のように語ったことを知る。

<私は、プロレスというのは、品性と知性と感性が同時に低レベルにある人だけが
熱中できる低劣なゲームだと思っている。もちろんプロレスの世界にもそれなりの
人生模様がさまざまあるだろう。しかし、だからといってどうだというのか。
世の大多数の人にとって、そんなことはどうでもいいことである>

 このコメントを読んだとき、息が止まりそうだった。いきなり冷水をかけられた思い。
びっくりした。しばらく、ゆっくりと、文字を往復して見た。やっぱりそう書いてある。
 なんて酷いことを言うんだろう。顔が紅潮するほどの怒りがこみ上げた。

鹿島「立花隆さんのはなしですけど、プロレスを、品性と知性と感性が同時に
低レベルな人たちだけが楽しむもの、どうでもええものと切り捨てたんです。
あれは、おそろしかった。徹底的な切り捨て方なんです。立花さんは、これは必要、
これは無駄という仕分け方だけをされて生きてきた人だと思うんです。
でも、無駄があったっていいんです、無駄があってもいいじゃん、と思いませんか」