狡猾な北朝鮮…ツケが回ってくる前に日本がなすべきこと 作家・佐藤優


佐藤優氏(大里直也撮影)
 12日、シンガポールで行われた米朝首脳会談で米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は共同声明に署名した。

 共同声明では、「北朝鮮は2018年4月27日の『板門店宣言』を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む」と記されている。
だが、米国がかねて北朝鮮に求めていた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)は、共同声明に盛り込まれなかった。
米国の大幅な譲歩だ。

 さらにトランプ氏が会談前に意欲を示した朝鮮戦争終結については、「米国と北朝鮮は、朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向け、
力を合わせる」という文言で言及された。今後、休戦協定を米朝平和条約に転換する動きが加速する。朝鮮戦争を終結させて
歴史に名を残したいというトランプ氏の心理を金正恩氏が巧みに操縦することに成功したので、このような合意がなされたのだ。

 「完全な非核化」を目指す外交交渉が米朝間で展開されることになるが、北朝鮮が主張する段階的非核化で事態は進んでいくだろう。
金正恩氏が米国に到達可能な大陸間弾道ミサイルの開発計画を完全に中止し、追加的な核兵器の製造は行わないという条件を提示すれば、
トランプ氏が応じる可能性がある。これで米国は北朝鮮の脅威を除去することができるからだ。