高橋弘希が「指の骨」で芥川賞の候補になった時は、戦地を知らない世代が一人称で戦地を描いたことが注目された
被災地を知らない震災作品「美しい顔」はどう評価されるか
http://prizesworld.com/akutagawa/kogun/kogun152TH.htm
■小川洋子
「思い浮かぶイメージのどこに焦点を絞るか、高橋さんは的確に判断し、簡潔な言葉でそれをすくい上げている。
ただ、既にある圧倒的な現実を題材に選ぶ以上、小説の形でしか表せない何かが必要になってくると思う。その何かが見え辛かったのが残念でならない。」

■奥泉光
「力作であり、作者の力量は十分に感じられた。しかし、であるがゆえに、この作品を推すことは躊躇われた。」
「あの戦争の体験が十分に経験化されていない現在、正しい手続き(が確定されているわけではないが)に則った歴史叙述が強く望まれるところだが、
もちろん虚構として小説を編むこともできる。だが、その場合には、作家の「いま」への問いがなければならないだろう。」

■高樹のぶ子
「若い世代の作者が、資料や伝聞を素に戦争を追体験している。そしてそのこと自体、十分に胸を打つ。ただ、世間一般に浸透している戦争の悲劇を、
個の内面が破壊してこそ文学ではないのか。客観的な悲惨さと個の内面がほぼ一致している本作では、フィクションの特権が十分に生かされていない気がした。」

■山田詠美
「戦争をこれっぽっちも讃美することなく、そこに広がる情景を言葉の力だけで哀しく美しく描いた。うかつな箇所や欠点も多々あれど、
久々に才能というものを感じて、この作品を推した。水木しげる氏へのオマージュめいた部分は気になったが。」